男性の尿漏れの原因と対策について、糖尿病や脊椎の病気、肥満、前立腺肥大症など男性特有の原因やそれぞれの対策について詳しく解説します。
中高年以降になると、男性はさまざまな排尿トラブルが生じやすくなります。その中でもよくみられる症状は「尿漏れ」です。男性は女性よりも尿道が長いため、女性に比べて尿漏れしにくいと考えられていますが、年齢を重ねるごとに男性も尿漏れに悩む人が増えていきます。
そこで今回は、男性にみられる尿漏れの原因と対策方法、注意すべき症状などを詳しく解説します。
私たちの体には、腎臓で生成された尿を膀胱に蓄え、一定以上の尿が溜まると尿意を感じて排尿行動を促す仕組みが備わっています。これらを司っているのは神経であり、尿が溜まったことによる膀胱への刺激を感知し、脊髄を通って脳へ信号を送ると尿意が生じます。そして、排尿時には脳から脊髄、末梢神経を通って膀胱や尿道の筋肉の弛緩・収縮を促す指令が伝わるのです。
尿漏れは、これらの仕組みのどこかに支障が出たときに引き起こされる症状です。では、男性の場合には、どのようなトラブルによって尿漏れが起きるのでしょうか。
尿道括約筋は、排尿時にゆるみ、排尿後は膀胱から尿道への尿の流入を防ぐため固く閉じられた状態となります。しかし、加齢に伴って尿道括約筋の筋力が落ちたり、これらの筋肉の運動を司る神経の働きが低下したりすると尿道に尿が流出しやすくなり、尿漏れを引き起こすことがあります。
筋肉や神経の衰えによる尿漏れでは、排尿後に数滴の尿が漏れる「排尿後尿滴下」を生じるのが特徴です。
末梢神経にダメージを与える糖尿病や、脊髄を圧迫する腰椎脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなどによって、正常な排尿コントロールの経路に障害が生じます。その結果、自分の意思とは関係なく、思わぬ場面で尿が漏れてしまうことや、尿意が感じられずに膀胱内に多量の尿が溜まり、ちょっとした腹圧がかかった際に尿が漏れてしまう「溢流性尿失禁」を引き起こすことがあります。
男性は中高年以降になると内臓脂肪型肥満の発症者が増加傾向になります。過剰な内臓脂肪によって膀胱が圧迫されると、くしゃみや重い荷物を持ち上げたときなど、腹圧がかかったときに瞬時的な少量の尿漏れが生じる「腹圧性尿失禁」を引き起こすことがあります。
男性は、膀胱の真下に尿道を取り囲むようにして前立腺と呼ばれる器官が存在しています。前立腺は組織が増殖して肥大化することがあり、その結果膀胱や尿道を物理的に圧迫して、尿漏れや頻尿、尿閉などを引き起こすことがあります。このような病気を前立腺肥大症と呼び、年齢の上昇に伴って罹患率も上昇します。中高年男性の排尿トラブルの原因となる重大な病気といえます。
男性の尿漏れは、食生活や運動習慣などの生活習慣を改善して肥満を予防する、利尿作用のあるカフェインやお酒を控えめにする、骨盤底筋体操をして排尿コントロールを強化する、などの対策である程度は症状を軽減することが可能です。
しかし、男性の尿漏れは、加齢による筋肉・神経の衰え、病気などが原因になることも多く、完全に尿漏れを防ぐことは難しいこともあります。
尿漏れは下着や衣類を汚すこともあるため、外出が億劫になって引きこもりがちになってしまうなど、日常生活や行動にも制限が生じてしまうことも少なくありません。このため、尿漏れに悩んだ場合には吸水パッドやうす型の紙パンツなどの尿漏れ対策商品を利用するのも一つの方法です。
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尿漏れに悩んだ場合には、泌尿器科を受診して適切な検査や治療を受けるようにしましょう。尿漏れには上記のような原因のほかにも、膀胱がんや前立腺がん、膀胱炎など早急に治療が必要な病気が隠されていることも少なくありません。
まずはどのような原因で尿漏れが生じているかを調べ、それぞれの原因に合った治療を行うことが大切です。
加齢による尿漏れが原因の場合には、治療が難しいこともありますが、前立腺肥大症や糖尿病などの病気では、薬物療法や手術などを行うことで尿漏れが劇的に改善することも多々あります。
尿漏れは思わぬ病気が原因で引き起こされていることがあります。尿漏れを引き起こす病気には、前立腺が硬く増大する前立腺がん、膀胱の容積が減少する膀胱がん、膀胱や尿道の収縮が促される膀胱炎や尿道結石などが挙げられます。いずれも早急な治療が必要な場合が多く、通常の尿漏れと区別がつきにくいことも少なくありません。
尿漏れに悩んだ場合は、自己判断で市販の薬やサプリメント等に頼らず、泌尿器科の受診をおすすめします。
記事監修医: 伊藤メディカルクリニック院長 伊藤 幹彦 先生
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