記事公開:2024.11.27
加齢に伴う尿漏れと尿失禁の原因や治療について、尿漏れのタイプごとに詳しく紹介します。尿漏れの症状に悩む場合、まずは泌尿器科を受診することが推奨されます。
年齢を重ねるごとに増してくる「尿」の悩み。その中でも、尿が自分の意思とは関係なく漏れ出てしまう尿漏れや尿失禁は、日常生活にも重大な影響を及ぼす症状の1つです。
そこで今回は、加齢に伴って生じる尿漏れ・尿失禁の原因と治療について詳しく解説します。
尿漏れとは、自分の意思とは関係なく尿が出てしまう症状のことです。
通常、腎臓で生成された尿は膀胱に蓄えられます。膀胱は伸び縮みしやすい筋肉でできており、尿が溜まると容積が増えます。成人の膀胱であれば300~500㏄の容量があるとされていますが、ある一定量の尿が溜まると末梢神経が敏感に感知して脳に刺激が伝えられ、その結果尿意が生じます。
そして、尿意を感じると私たちは排尿行為に移りますが、その際には膀胱や尿道括約筋などの筋肉が収縮・弛緩することで膀胱内の尿が尿道に押し出されて排出されるのです。
尿漏れは、この過程のどこかに異常が生じることによって引き起こされます。
尿漏れには、症状の現れ方によって大きく4つのタイプがあり、タイプによって原因や治療方法が異なります。それぞれの症状の特徴と原因・治療方法は次の通りです。
くしゃみをしたり、重たい荷物を持ち上げたりしてお腹に力が入ると少量の失禁が生じるタイプの尿漏れです。膀胱内に溜まった尿が腹圧によって押し出されることが原因であり、肥満や便秘、前立腺肥大による膀胱の圧迫、加齢による骨盤底筋のゆるみなどによって起こりやすくなります。
治療においては、尿道括約筋を収縮させる作用を持つβ刺激薬や補中益気湯などの漢方薬が使用されることもありますが、原因となる病気や生活習慣の改善を行う必要があります。治療方法や生活習慣の改善はそれぞれの原因によって異なり、肥満や骨盤底筋のゆるみなどの場合には運動習慣や食事など生活習慣の改善、前立腺肥大症が原因の場合は薬物療法や手術などが行われます。
突然強い尿意が生じ、トイレまで我慢できずに失禁してしまうタイプの尿漏れです。尿意は前触れなく襲ってくることが多く、車や公共交通機関での移動などに重大な支障を及ぼします。
尿意は脳からの指令によって生じますが、この指令がストレスや神経の病気などによってうまくコントロールできず膀胱が過度に収縮することが原因と考えられています。
また、前立腺肥大症や子宮脱(子宮を支えている靱帯や筋肉がゆるむことで、子宮が下がり脱出してしまう病気)などの膀胱周辺臓器の病気が原因となることも少なくありません。
治療では、膀胱の過度な収縮を抑える薬が処方されることもありますが、膀胱トレーニング(尿意を我慢する練習)などの行動療法が有用な場合もあります。
尿意が生じて排尿したいと思うにも関わらず、自分の意思で排尿ができず尿が少量ずつ漏れ出るタイプの尿漏れです。
排尿経路に何らかの異常が生じてスムーズな排尿ができなくなることが原因であり、膀胱内に多量の尿が溜まってしまい、膀胱内に収まりきらなくなった尿がチョロチョロと漏れ出してくるのです。
通常、このタイプの尿失禁には排尿障害が伴っており、最も多い原因は男性のみに見られる前立腺肥大症です。また、排尿運動を促す末梢神経にダメージが加わる糖尿病や脊髄の機能が低下する腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどが原因になることもあります。
治療は、排尿障害の原因となる前立腺肥大症や糖尿病などの治療が優先して行われます。特に前立腺肥大症が原因の場合には、手術の適応となるケースも多く、適切な治療を受けることで尿漏れが劇的に改善することも少なくありません。
一方、神経障害によるものでは一度ダメージを受けた神経を元の状態に戻すことは困難であるため、治療が難しいケースも多々あります。
排尿機能は保たれているものの、歩行障害や認知症などのためにトイレで排尿することができずに不適切な場面で失禁してしまうタイプの尿漏れです。根本的な治療方法がないため、おむつの着用や尿道カテーテル挿入などを行うことになります。
尿漏れが気になる場合、まずは泌尿器科を受診するのがおすすめです。泌尿器科では排尿に関するさまざまな専門的検査を行うことができますので、しっかり原因を調べることが可能です。尿漏れの治療方法は、原因となる病気がある場合にはその病気の治療が必要となりますが、糖尿病や腰部脊柱管狭窄症など泌尿器科以外の領域の病気が原因と考えられる場合には、それぞれの診療科に紹介されることもあります。
また、女性の場合には妊娠中や産後1年以内の場合にはかかりつけの産婦人科で相談するのも1つの方法です。
尿漏れには、思わぬ病気が潜んでいることもありますので、悩んだ場合には早めに病院を受診して検査・治療を受けるようにしましょう。
記事監修医: 伊藤メディカルクリニック院長 伊藤 幹彦 先生
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