医療費控除とは、支払った医療費が一定額を超えるときに受けることができる所得控除の一つです。1月1日から12月31日までの間に、自分や、自分と生計をともにする配偶者・親族のために払った医療費が対象となります。
大人用の紙おむつは、医療費控除の対象です。
医療費控除の対象となる医療費は、病院や調剤薬局で支払った医療費、保険のきかない自由診療や先進医療の技術料のほか、通院のための交通費、介護費用の一部など、幅広く認められています。
紙おむつや尿とりパッド類の購入費用
※おむつや尿とりパッドとは、6ヶ月以上寝たきりの人のおむつ・尿とりパッド代で、その人の治療をしている医師が発行したおむつ使用証明書が必要です。
・医師による診療・治療の代金
・通院時の交通費
・薬代
・往診費
・入院費用
・治療のためにマッサージ師に支払った費用
・松葉杖や義歯、義足、義手、補聴器などの購入費用
※上記は代表的なものですので、詳しくは、お住まいの地域の税務署にお問い合わせください。
国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」
※健康診断、病気の予防費用、健康増進費用、見舞い客向けの費用、美容整形費用などは、医療費控除の対象とはなりません。
おむつの購入によって医療費控除を受けるためには、以下の書類が必須です。
「医療費控除の明細書」の添付が必要です。医療費の領収書の添付又は提示は必要ありません。
ただし、明細書の記入内容の確認のため、確定申告期限等から5年間、税務署から領収書(医療費通知に係るものを除きます。)の提示又は提出を求める場合がありますので、領収書はご自宅等で保管してください。
さらに、おむつの医療費控除を受ける場合には、下記のいずれかの添付書類が必要です。
本人や生計をともにしている親族が、病気により半年以上にわたり寝たきりであり常時おむつを使用している場合などに、治療を受けている医師に「おむつ使用証明書」を発行してもらう必要があります。料金は病院によって異なります。
おむつ使用証明書のダウンロードはこちらから
おむつ代について医療費控除を受けるのが2年目以降である場合、「おむつ使用証明書」の替わりに、介護保険法の規定に基づく主治医意見書の内容を市区町村が確認した書類、またはその主治医意見書の写しがあれば問題ありません。
料金は無料のことが多いようですが、市区町村によっては費用がかかる場合もあります。詳細はお住まいの市区町村にお尋ねください。
医療費控除を受ける場合、以下の3つの条件を満たしている必要があります。
たとえば2020年12月に診察を受けており後日支払予定であったが、2020年12月31日時点で未払、翌2021年1月5日に振込をしたという場合、医療費控除を受けることができるのは、実際に支払を行った2021年になります。2020年分の医療費控除の対象にはなりません。
一定の収入がなく、もともと所得税を納める必要がない人は医療費控除を受けることができません。
医療機関に支払った費用でも、美容や健康促進を目的とした医療や、病気の予防を目的とした健康診断や予防接種、医師に発行してもらう文書料などの費用は医療費控除の対象外となるため注意が必要です。
支払った医療費から保険金等で補てんされたものを差し引いた金額が、一定の金額を超えるとき、医療費控除を受けることができます。
控除額の合計は、所得金額が200万円以上か、200万円未満かによって変化します。
合計所得金額が200万円以上の人は10万円を超えたら、200万円未満の人は合計所得金額の5%を超えたら医療費控除の対象となります。
たとえば合計所得金額が100万円の人は、100万円×5%=5万円なので、医療費が5万円を超えた場合の金額が医療費控除の対象金額となります。
保険金などで補てんされるものの金額とは、民間の生命保険会社からおりた保険金のほか、健康保険などで支給される高額療養費支給精度による払戻金、出産一時金などが該当します。
また、年をまたぐときは、医療費控除を受ける対象年で差し引きする必要があります。
たとえば12月に入院した分の高額医療費が翌年3月に支給される場合は、その支給額を考慮して医療費控除額を計算することになるのでご注意ください。
セルフメディケーション税制は、対象となる市販の医薬品を購入し、以下の条件を満たしている場合に控除を受けることができる制度です。
医師の処方箋なしで購入できる特定一般用医薬品(OTC薬品)の年間購入額が1万2000円を超えている。
所得税か住民税を納めている。
健康診断や予防接種を受けるなど、健康の保持増進のための取組を行っている。
ちなみに、紙おむつはセルフメディケーション税制の対象になりません。
また、セルフメディケーション税制の対象はOTC薬品に限定されています。対象となるOTC薬品を購入した場合は、レシートにOTC薬品である旨のマークが記載されます。
この制度は2017年1月1日から2021年12月31日まで、4年間にわたって実施されます。セルフメディケーション税制と通常の医療費控除との併用はできないため、どちらかを選択する必要があります。詳細は国税庁のホームページを確認しましょう。
※セルフメディケーション税制は2022年1月以降、制度が5年延長されています。
国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
医療費控除は、医療費や医薬品だけではなく、大人用紙おむつなどの介護用品も一定の要件を満たすことで対象となります。領収書等は捨てずに保管しておき、還付申告を行いましょう。
記事監修: 添田裕美税理士事務所 添田 裕美 税理士
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