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排泄ケアのポイント
排泄のトラブルは、人間の尊厳に関わる大変デリケートな問題です。また、排泄ケアの仕方により介護をされる方の生活が変わってしまうほどの大切な問題です。ですから、その人に合った適切な排泄ケアをすることで、より積極的な生活ができるよう、自立を手助けしてあげるようにすることが大切です。適切な排泄ケアをするためには、医学、介護および排泄ケア用品の知識などを知る必要があります。
しかし、なによりも大切なことは、本人の気持ちを気遣ってあげる家族の人たちの温かい心です。
排泄ケアのポイント
- 排泄パターンを知る
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トイレに行く時間帯、尿の量、食事や水分をとった時間や量、モレのある場合は、モレの量やその前後の様子などの排泄記録をつけましょう。排泄パターンを知ることでトイレへ誘導する時間やオムツなどの排泄ケア用品の取替え時間の目安とすることができます。
- 解決方法を知る
- 失禁のタイプにより、治療法や訓練の内容が異なります。排泄記録を持参し、医師や専門の人に解決法などを相談しましょう。
- 環境を整える
- トイレが遠い、廊下が暗い、便器が使いにくいなどの理由により、モレてしまっている事もあります。トイレの近くに部屋を移す、廊下を明るくする、便器の種類を使いやすいものにする、トイレに手すりを付けるなど環境を整える事も大切です。
- 適切な排泄ケア用品・用具の活用
- 排泄ケア用品・用具には、いろいろな種類があります。その人の体型や状態などを考え、その人に適したものを使うことで、安心して外出できたり、夜に何度も起きたりせずにすみます。
- 便通を整える
- 排泄のトラブルを防ぐには、おなかの調子を整える事も大切です。トラブルにより体全体の栄養状態にも影響します。食事の工夫、運動やマッサージ、決まった時間にトイレに誘導するなどを心がけましょう。
快適なトイレ空間の工夫
安全で快適なトイレ空間づくりは、自宅介護の重要なポイント。お世話する方の体の状態に合わせた、使いやすい工夫が必要です。
トイレまで移動できる場合
- 自分で行きたい、という気持ちを大切に
少し時間がかかっても、自分で歩ける場合や介助をしてあげれば行ける場合には、できる限り普通のトイレを使うようにしましょう。
- 通路は歩きやすく、安全に
手すり等、つかまるところを作ります。廊下や入り口には、明るい照明を。また、すべったりつまずいたりしないよう、段差や敷物等にも気をつけましょう。 - 便器は楽なものを。
腰掛けられる洋式トイレがおすすめですが、左右に手すりをつける等、体の状態に合わせた工夫が大切です。 - トイレはいつも温かく
トイレ内の保温に気を配り、暖房便座等も利用しましょう。
トイレまで移動できない場合
- ポータブルトイレを利用する
起き上がれても、トイレまで移動できない場合は、ポータブルトイレを上手に利用しましょう。便器がすべらないように、必ず敷物をしきます。
- しっかりつかまる所を確保する
ポータブルトイレに移動する際に、安心してつかまることができる物(ベッドや家具等)を置いたり、手すり等をつけるようにしましょう。
- プライバシーを大切に
ト周囲から見えないように、カーテンをつけたり、つい立てを利用したりして、プライバシーを守る工夫をしましょう。
お世話の実際
自宅のトイレでは
- トイレの中で、手すりを持ってもらうか壁に寄りかかってもらい、下着をおろします。
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便器の前でお年寄りの両手を介護者の首に回し、介護者の片足はお年寄りの両足の間に入れ、抱えるようにして便座へ。
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排泄が終わったら手すりにつかまって立ってもらう、または便器に浅く腰掛けて腰を浮かせてもらい、お尻を前から後ろに拭きます。
- お年寄りの足は少し後ろに引きぎみに、両手は介護者の首に回します。介護者の片足はお年寄りの両足の間に入れ、抱え上げるようにして立ち上がらせます。
ポータブルトイレでは
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ベッド、ふとんから起こすには、お年寄りの両手を介護者の首に回します。立ち上がらせたらお年寄りの左足を一歩前に出し、この足を軸に(介護者から見て右に)90度体を回し、便器にお尻を向けます。
※立ち上がる時に「1、2、3」と声をかけてタイミングを合わせると安心です。なお、まひのある人の場合、まひのない側の足を軸にして体を回転してください。
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座らせる > 立ち上がる > 拭く、の手順は「自宅のトイレ」と同じ。立ち上がってから下着を上げ、体の方向をもとにもどして、ベッドに腰かけてもらいます。ポータブルトイレには、いろいろな種類(たとえば、高さのちがうもの)があります。その人にあったものを選びましょう。
また、ご自分で使われる場合、ポータブルトイレは、まひのない側に置きます。
陰部洗浄のしかた
用意するもの
体を清潔にするには、入浴が一番よい方法ですが、入浴できない場合でも、洗浄綿や蒸しタオル等を使って、いつも清潔に保ちましょう。ここでは空きボトルを利用した、陰部洗浄の方法をご紹介します。
- まず腰から下に大きめのビニールシートを広げ、その上にバスタオルまたはフラット型の紙おむつを敷きます。差し込み便器を使っても良いでしょう。濡れないように、おなかにはタオルをかけます。
- ボトルを使って陰部にぬるま湯をかけてから、湿らせたガーゼかやわらかい布に、必要に応じて石けんをつけ、前から後ろに向かってていねいに洗います。肛門を洗ったガーゼ等は捨てましょう。
- 最後にボトルのぬるま湯で陰部をきれいに洗い流し、むしタオルで拭いた後水分が残らないよう、乾いたタオルで水分を十分に拭き取ります。
おむつ交換の時の健康チェック
必ず体の状態を観察して、異常は早く発見するようにしましょう。
蒸しタオルの簡単なつくり方
蒸しタオルは、タオルをぬらし軽くしぼった後、電子レンジであたためると簡単につくれます。ただし、あたためすぎないように。