記事公開:2024.10.30
年齢とともに、「最近、よく眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「早起きになった」と感じる方は多いのではないでしょうか。また、介護をする方の場合は、介護を受ける方が夜にきちんと寝てくれないこと、あるいは夜中に起こされることで、ご自身の睡眠が妨げられているという悩みがあるかもしれません。実際、高齢になるにつれ、何らかの睡眠障害を抱える方が増える傾向があります。
睡眠不足が続くと、日中の生活に影響するだけでなく、体の不調を引き起こすことにもなりかねません。この記事では、高齢者が眠れない原因と、その改善方法を解説します。
高齢になると、眠れないという悩みを抱える方が多くなるもの。60歳を過ぎると、半数以上の方に何らかの不眠症状が表れるとされています。
睡眠に何らかの問題がある状態を「睡眠障害」といい、その中で最も多いのが不眠症です。眠れない体験は誰もがありますが、「夜間の不眠が続く」「日中に心や体の不調を自覚し、生活の質が低下する」という2つの症状が認められた場合は、不眠症と診断されます。
不眠症は、下記の4つのタイプに分けられます。
<不眠症のタイプ>
・入眠障害:寝付くまでに時間がかかる
・熟眠障害:熟睡感を得られない
・中途覚醒:睡眠中に何度も目が覚める
・早期覚醒:自分が望む時間よりも2時間以上早く目が覚める
睡眠時間が短いだけでは、不眠症とは診断されません。睡眠時間の長さには個人差があり、その人にとって十分な睡眠が取れていて体に不調がなければ、何も問題はないからです。健康な人でも、年齢とともに必要な睡眠時間は短くなっていきます。
問題となるのは、上記の4タイプのような状態が続くことで睡眠不足となり、日中に倦怠感や意欲・集中力低下、抑うつ、頭重、めまい、食欲不振といった不調が表れる場合です。眠れずに日中の不調が表れることが週に3日以上あり、その状態が3ヵ月以上続くようであれば、慢性不眠症の可能性があります。
なお、高齢者に多い睡眠障害としては不眠症のほかにも、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス(むずむず脚)症候群、周期性四肢運動障害、レム睡眠行動障害といったものがあります。
高齢者が眠れない原因のひとつに、睡眠の質の低下が挙げられます。睡眠は、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠を交互に繰り返しており、ノンレム睡眠が多いほど睡眠の質が高まります。
睡眠の質は、年齢とともに変わっていくのが一般的です。若いときは、ノンレム睡眠の時間が長く、睡眠中に覚醒することはほとんどありません。しかし、高齢になると、ノンレム睡眠の時間が短くなり、レム睡眠の時間が増えていきます。そのため、ちょっとした物音や尿意でも目覚めやすく、睡眠中に中途覚醒することが多くなってしまうのです。
■若年者と高齢者の睡眠の質の違い
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「高齢者の睡眠」
日中の活動量が少なくなってしまうことも、高齢者が眠れない原因になります。睡眠の役割は、日中に活動した脳や体を休ませ、疲労を回復することです。そのため、日中の活動量と運動の強度は、眠りの必要量と質に影響します。加齢に伴って日中の活動量が少なくなると、あまり疲れが溜まりません。すると、若い頃よりも短い睡眠で回復できるので、結果的に睡眠時間も短くなってしまうのです。
高齢者が眠れない原因には、寝床で過ごす時間(床上時間)が長いこともあります。眠気がないうちから寝床に入ると寝付きが悪くなり、うとうとしている時間が増えて睡眠の満足度が下がってしまうのです。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、高齢者の床上時間が長くなる傾向があることが指摘されています。さらに、床上時間が必要以上に長いと、寿命を縮めるリスクが増えることも示されました。
体調によって寝床を離れられない場合もありますが、床上時間の目安は、1週間の平均睡眠時間に30分程度を加えた時間です。
なお、平均睡眠時間は寝床にいる時間ではなく、実際に眠っている時間で測ります。厚生労働省は、睡眠の質を高め、健康リスクを抑えるためにも、床上時間を8時間以内に制限することを推奨しています。
高齢者が眠れない原因として、心理的なストレスも挙げられるでしょう。睡眠は、自律神経の働きと深い関係があります。自律神経には、緊張しているときに優位になる交感神経と、リラックスしているときに優位になる副交感神経があります。
通常、昼のあいだは交感神経が優位に働いていて、夜に向けて副交感神経が優位になっていくことで、スムーズに睡眠に入ることができるのです。ところが、ストレスがあると交感神経が刺激されてしまい、夜になっても緊張状態を解くことができません。
高齢者の場合、定年退職や死別、孤独などがストレスにつながりやすくなります。また、眠れないことがストレスになり、さらに眠れなくなるという悪循環にはまるケースも少なくありません。
高齢者が眠れない原因には、睡眠ホルモンの分泌量が減少することも関係しています。睡眠をコントロールしているのは、体内時計を調節するメラトニンというホルモンです。人の体は、夜になるとメラトニンの分泌量が増え、自然に眠気を感じるようにできています。
なお、メラトニンの分泌量は、子どもの頃にピークを迎え、その後は減少し続けます。高齢者はメラトニンの分泌量がとても少ないため、体内時計を調節する力が弱くなり、夜になっても「なかなか寝付けない」「眠りが浅い」といった症状につながるのです。
病気の症状や、その治療薬の副作用が、高齢者が眠れない原因となっていることもあります。
睡眠を妨げる病気の症状としては、高血圧による交感神経への刺激、心臓病による胸苦しさ、呼吸器疾患による咳、腎臓病や前立腺肥大症による頻尿などが主なものです。
また、睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス(むずむず脚)症候群といった、不眠症とは別の睡眠障害が眠りを妨げることもあります。さらに、うつ病や認知症によって不眠症状が表れることもあります。
副作用で不眠症状の可能性がある薬としては、血圧を下げる降圧剤や甲状腺製剤、抗がん剤、パーキンソン病の治療薬などが主なものです。そのほか、抗ヒスタミン剤は日中の眠気を誘うため、夜の睡眠に影響を及ぼすことがあります。
高齢者が眠れない原因のひとつに、「細切れ睡眠(夜間頻尿)」があります。細切れ睡眠とは、寝ているあいだに尿意を感じ、夜間に1回以上起きてしまう症状です。加齢に伴って表れることが多く、60歳以上では約8割の人が細切れ睡眠に悩んでいるとされています。トイレのために何度も起きる必要があるため眠りが分断され、睡眠時間の不足と睡眠の質の低下につながります。
通常、睡眠中に尿意を感じなくて済んでいるのは、日中よりも作られる尿量が少なく、膀胱がゆるんで多くの尿を蓄えられるようになっているからです。
しかし、高齢者の場合は元々眠りが浅く、中途覚醒しやすい状態になっています。そのため、脳が膀胱内の尿を感知してしまい、尿意を感じると考えられています。なお、高齢者は膀胱や尿道の筋力も低下していることが多く、目覚めた場合でも尿を抑えられず、トイレに間に合わないといったことも珍しくありません。
高齢者が眠れないときは、その原因を明らかにして取り除くことが大切。さらに、生活習慣を整えるなど、睡眠の質が高くなるような工夫をすることが重要です。ここでは、不眠の具体的な改善方法をご紹介します。
高齢者の不眠を改善する上で取り組みたいのが、日中の活動量を増やすことです。日中の活動で体が適度に疲れていると、寝付きが良くなるだけでなく、回復を促すために眠りも深くなります。
活動量を増やすといっても、激しい運動をする必要はありません。短めの散歩や軽い体操、買い物など、ちょっとした運動をするだけでも効果があります。外出が難しい場合は、人とおしゃべりをしたり、部屋の掃除をしたりするといった、日常の用事でこまめに動いてみましょう。大切なのは、体を動かすことを習慣化して、長く続けることです。
毎日決まった時間に就寝・起床することも、高齢者の不眠を改善する方法のひとつです。睡眠・覚醒は体内時計によってコントロールされているので、生活リズムを整えることで、夜に眠気を感じる時間が安定します。
また、太陽の光には体内時計をリセットする効用があるため、起きたらまず朝日を浴びてみましょう。朝、太陽の光を浴びると、夜に分泌される睡眠ホルモンのメラトニンの量が増え、スムーズな入眠にもつながります。就寝・起床時間を一定に保つほかにも、「1日3食を規則正しい時間に食べる」「適度に体を動かす」「昼寝は30分以内に抑える」「午後3時以降は昼寝をしない」といったことを習慣化して、体内時計を乱さない生活を心掛けてみてください。
高齢者が眠れないときは、就寝時間の2~3時間前に入浴することも効果的です。40℃くらいの熱すぎない湯に浸かると、副交感神経が優位になって体がリラックスし、寝付きが良くなります。体温が0.5℃ほど上がるだけでも寝付きに効果があるとされていますので、長時間の入浴は必要ありません。寝る直前の入浴は深い眠りに効果があるとされていますが、寝付きを優先するのであれば、2~3時間前に入浴するのがポイントです。
人の体温は、日中は高く保たれ、夜は徐々に下がるサイクルになっていて、体温が下がり始めることで眠気が訪れます。入浴には一時的に体温を上げる効果があるため、入浴後は体が熱を放出しようとして体温が下がり、スムーズな入眠を促します。就寝2~3時間前に入浴すれば、就寝時間になる頃には自然に眠くなるでしょう。
高齢者の不眠対策には、寝具や寝室といった睡眠環境を整えることも大切です。寝具は、体に負担がかからないよう適度な硬さの布団を選びましょう。寝る前のカフェイン摂取や喫煙は刺激となって入眠を妨げるので、なるべく控えます。
また、寝室の照明を明るすぎないものに変えてみるのもおすすめです。デジタル機器の画面から発せられるブルーライトには脳を覚醒させる作用があるとされているので、就寝1時間前にはテレビから離れ、スマートフォンやタブレット、パソコンも使わないようにします。
代わりに、音楽鑑賞や読書などを取り入れて、ゆったりとした時間を過ごすのがおすすめです。体が睡眠に向かっていると感じられ、リラックスできる状態を作ることが、心地よい眠りにつながります。
高齢者が眠れないときの改善方法として、寝る前の腹式呼吸やストレッチも効果的です。意識的な腹式呼吸やゆったりとしたストレッチには、副交感神経を優位に導く効果があるため、眠りにつきやすくなります。
腹式呼吸のやり方は、おなかをふくらませながら鼻でゆっくりと息を吸い、息を吐くときは、おなかをへこませながら、口からゆっくりと吐き出します。
ストレッチでは、激しい動きは禁物です。硬くなっている筋肉をゆっくりほぐし、気持ちいいと感じる程度に抑えましょう。おすすめは肩を回す、足首を曲げて伸ばすといったストレッチをゆっくり行うこと。特に、足首のストレッチは足全体の血行を促し、熱を放出して体温を下げることにつながるため、入眠にも良い効果をもたらします。
高齢者が眠れないときの改善方法として、大人用紙おむつなどの吸水ケア用品を使って、夜間のトイレの不安を解消するのもおすすめです。「トイレに行きたくなったらどうしよう」という気持ちが強いと、その不安がストレスになり、睡眠を妨げてしまいます。夜用の大人用紙おむつを使えば、「もしトイレに間に合わなかった場合でも、紙おむつをしているから大丈夫」と考えられるため、安心して眠りにつくことができるでしょう。
また、トイレに対する不安やストレスが減ることで、トイレに行く回数自体が減ることもあります。
監修者のご紹介
伊藤たえ先生
日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。浜松医科大学医学部卒。浜松医科大学脳神経外科のほか、都内の総合病院で脳神経外科医として手術や外来治療を担当。2019年10月から医療法人社団 赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック 東京脳ドック院長就任。頭痛、物忘れ、めまい、頭部外傷、生活習慣病などの治療や、脳ドックによる適切な早期治療・予防を行っている。
菅原クリニック
眠れない原因が、高齢者に多い細切れ睡眠であれば、夜用の大人用紙おむつを使うことで不眠を解決できるかもしれません。夜間に何度もトイレに起きる、夜間の尿モレが不安で眠りが浅いといった場合は、吸収量が多く朝まで安心な「夜1枚安心」シリーズをご活用ください。万が一トイレに間に合わなくても大丈夫という安心感で、心地よい睡眠をサポートします。
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高齢者になると睡眠の質が変わってしまうため、若いときに比べて眠れないのは仕方のないことでもあります。日中の活動量が減ってしまったり、寝床にいる時間が長かったりすると不眠につながるため、生活習慣を見直して改善を図りましょう。不眠の原因となるストレスを抑え、睡眠ホルモンの分泌を促すには、就寝2~3時間前の入浴や寝る前の腹式呼吸、ストレッチなどが有効です。
また、細切れ睡眠(夜間頻尿)や失禁、モレへの不安が不眠の原因となっている場合は、心地よい睡眠をサポートするアテントの「夜1枚安心」シリーズをご活用ください。
高齢者が眠れなくなるのは、加齢に伴って睡眠の質が変わり、浅い眠りが増えるためです。また、日中の活動量が少ないために必要な睡眠時間が減ることも、不眠につながります。
さらに、寝床にいる時間が長いことも、高齢者が眠れない原因のひとつです。眠気がないうちから寝床に入ると寝付きが悪くなり、うとうとしている時間が増えて、睡眠の満足度が下がってしまいます。そのほか、心理的なストレス、睡眠ホルモン・メラトニンの減少のほか、病気や治療薬の副作用、細切れ睡眠(夜間頻尿)なども、眠れなくなる原因とされています。
高齢者がなりやすい睡眠障害として、最も多いのは不眠症です。高齢になると眠れないという悩みを抱える割合が増え、60歳を過ぎると半数以上の方に何らかの不眠症状が表れるといわれています。そのほか、高齢者に多い睡眠障害としては、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス(むずむず脚)症候群、周期性四肢運動障害、レム睡眠行動障害といったものがあります。
高齢者の不眠を解消するには、眠れない原因を明らかにして、その原因を取り除くことが大切です。なお、高齢者の不眠は生活習慣の改善で解消されるケースも多くあります。
例えば、日中の活動量を増す、就寝・起床時間を一定にする、就寝2~3時間前に入浴するなどの方法で生活リズムを規則正しくすると、体内時計が整って、不眠解消に役立ちます。また、寝具や寝室といった睡眠環境を整えたり、寝る前に腹式呼吸やストレッチを取り入れたりして、リラックスした状態を作ることも効果的です。細切れ睡眠がある場合は、大人用紙おむつなどの吸水ケア用品を使用すれば、トイレに間に合わないかもしれないといった不安をやわらげることができます。
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