記事公開:2024.9.26
筋力低下や麻痺などにより自力で排泄行為ができない場合、トイレの介助(排泄介助)が必要となります。排泄は生きるために誰もがしている行為ですが、とてもデリケートな部分があります。
トイレの介助をするときは、介護を受ける方の尊厳やプライバシーにかかわるケアであることを忘れてはいけません。
この記事では、排泄介助の種類や介助に適したトイレ環境、トイレ介助の注意点と手順について解説。また、夜中のトイレ介助による負担を軽減する「夜のアテント」もご紹介します。
トイレの介助(排泄介助)は、介護を受ける方の尊厳とプライバシーに配慮して行うことが重要です。排泄は誰もが行っている一方で、とてもデリケートな部分もある行為。介護を受ける方に恥ずかしさを感じさせたり、自尊心を傷つけたりしないよう、十分に注意してください。また、自力で行うことが難しい部分のみをサポートするようにしましょう。
排泄介助とは、加齢、ケガ、筋力低下、病気による麻痺などが原因で、自力で排泄行為ができない方の介助です。排泄介助は、介護を受ける方の状況や環境に応じて、「トイレ介助」「ポータブルトイレ介助」「差込便器・尿器介助」「おむつ介助」の大きく4つに分けられます。それぞれの違いと介助内容を紹介します。
トイレ介助は、トイレで排泄ができる方の排泄サポートです。トイレまでの歩行介助や、ズボンの上げ下げサポート、車椅子から便器への移乗のお手伝いなど、介護を受ける方の状況に応じて介助内容は変わります。
ポータブルトイレ介助は、介護を受ける方のトイレまでの移動が困難な場合に、ポータブルトイレ(持ち運び可能な簡易トイレ)を利用して行う介助です。ベッドサイドなどに設置して、夜間だけポータブルトイレを使用するケースもあります。
差込便器・尿器介助は、ベッドに寝た姿勢のままで、尿や便を受けることのできる容器を使って行う介助です。尿意や便意があっても、ベッドから起き上がることが困難な方の排泄ケアに適しています。
おむつ介助は、便意や尿意を感じにくい方や、寝て過ごすことが多い方などの排泄ケアに適した介助です。使用する方の状況や使用シーンに合わせて、さまざまな種類のおむつがあります。介護をする方も介護を受ける方も快適に過ごせるような商品を選び、適切なタイミングで交換することが重要です。
トイレ介助が必要になったとき、まずはトイレまでの経路やトイレ内の環境を整備することが大切です。トイレまで安全にスムーズに移動できるようにすることは、介護をする方の負担軽減にもつながり、スムーズな介助が可能となります。
介護を受ける方がいつも過ごしている部屋からトイレまでの経路をたどり、安全に移動できるかどうかをチェックしましょう。トイレ介助の観点から、注意しておきたいポイントは下記のようなものがあります。
トイレまでの廊下に照明があり、十分な明るさがあるかを確認します。夜間のトイレ利用でも安全に移動するためには、適切な数と明るさの照明が必要です。明るさを調整できるものや、人の動きを感知して自動的にライトがつくセンサー付きの照明が便利です。
トイレまで安定して歩行できるように、廊下には手すりを設置してください。手すりは、介護を受ける方に合わせて高さを調整し、しっかりと固定します。
トイレや通路の途中にあるドアは、ドアを開けるスペースが必要な開き戸よりも、引き戸のほうが安全に開閉できます。開き戸の場合、ドアノブは力を入れずに操作できるレバーハンドルがおすすめです。
トイレまでの経路の途中に障害物や段差などがあると、つまずいてしまう危険があります。動かせるものは片付けて、段差には段差解消用のスロープを設置すると効果的です。カーペットや敷物、足拭きマットなどもつまずきやすいため置かないほうがいいでしょう。
トイレまわりの環境も、介助しやすい構造であるかチェックしましょう。介護をする方がいっしょに入ったり、手すりなどを設置したりできる広さがない場合、トイレのリフォームも検討してみてください。ここでは、介助しやすいトイレの条件について紹介します。
洋式便器は立ち座りがしやすく、介護をする方・介護を受ける方のどちらにとっても便利です。和式便器の場合、カバーを被せることで洋式便器にできる、簡易設置式のものもあります。また、トイレ内の保温にも気を配りましょう。暖房便座だと、冬場のトイレも快適です。
便器の左右に手すりを設置するほか、立ち座りを安定して行えるように、壁にも手すりを設置しましょう。手すりの位置や形状、高さは、介護を受ける方の体格やトイレ内での動きに合わせて調整が必要です。設置の際は、ケアマネジャーなどに相談することをおすすめします。
トイレ内のスペースは、介助をするのに十分な広さがあるかを確認してください。介護を受ける方が車椅子を使用している場合は、便器への移乗をサポートするため、車椅子と介護をする方がいっしょに入れるだけのスペースが必要です。
介護を受ける方が要支援・要介護認定を受けている場合、介護保険を適用して、トイレ改修(便器やドアの取り換えなど)や段差の解消、手すりの設置などの住宅改修が可能です。支給額は工事費用の7~9割(被保険者の所得に応じて変動)で、上限20万円までの工事が対象(支給額は最大18万円)となります。 なお、住宅改修費に介護保険を適用するには、改修工事を始める前に市区町村へ事前申請が必要です。住宅改修を検討するときは、ケアマネジャーや各市区町村の窓口などにご相談ください。
トイレ介助を行うときは、介護を受ける方への配慮が重要です。人に排泄を手伝ってもらうことは、誰だって心理的な抵抗があるもの。介護を受ける方は、「恥ずかしい」「情けない」「申し訳ない」といった複雑な気持ちを感じています。ここでは、トイレ介助を行う上で注意すべきポイントについて解説します。
トイレ介助では、介護を受ける方の安全を最優先に考えてください。特に、高齢者や体力が低下している方の場合、転倒のリスクが高まります。介護をする方は、介護を受ける方の動きや周囲の状況に注意を払い、何かあった場合にもすぐにサポートできるよう、準備しておいてください
トイレ介助のときは、介護を受ける方に、自分でできることは自分で行ってもらうことが大切です。過剰に手を貸してしまうと、介護をする方の負担が増大するだけでなく、介護を受ける方の持っている能力を奪ってしまうことにもなります。
そのため、まずは介護を受ける方の「できること」と「できないこと」を細かく見極めることが大切です。排泄行為のどの部分ができないのかを把握し、必要な介助のみを行うようにしましょう。
トイレ介助では、介護を受ける方のプライバシーに配慮し、尊厳を守ることも重要です。排泄中、介護をする方はドアを閉めてトイレの外で待ったり、横で見守る場合でも視線をそらしたりするなど、介護を受ける方の気持ちを尊重してください。
また、介護を受ける方の羞恥心に配慮した声掛けを心がけ、たとえ排泄に失敗しても責めてはいけません。
トイレ介助のとき、排泄を急かしてはいけません。急かされることがプレッシャーとなり、かえって排泄に時間がかかってしまうことがあります。
また、排泄を急かされることでトイレ介助を受けるのが嫌になり、トイレに行く回数を減らそうと、水分摂取を控えてしまうことも。水分不足は、脱水や便秘、脳梗塞などのリスクが高まるため、とても危険です。普段からしっかり水分をとるように促し、トイレ介助中は、介護を受ける方がリラックスして排泄できるような環境を意識してください。
トイレ介助の際、適切に声掛けをすることで、介護を受ける方に安心感を与えることができます。「立ち上がりますので、首に手を回してください」「ズボンを下げますね。手すりにつかまっていてください」「外に出ますね。ゆっくりでいいので、終わったら声をかけてください」など、これから行う動作の説明を行うと、介護を受ける方が心構えできます。声のトーンや言葉選びに注意して、介護を受ける方がリラックスできるような声掛けを行いましょう。
続いては、トイレまで歩くことができる方のトイレ介助の手順をご紹介します。実際に介護を受ける方の状況に合わせて、自分でできることは可能な限り自分でやってもらうことが大切です。
介護を受ける方のペースに合わせて、トイレまで歩いて誘導します。歩行時にふらつきがある場合は、介護をする方の腕につかまってもらうか、手すりや歩行器を利用して安全に移動しましょう。
トイレに到着したら、手すりを持ってお尻を便器の方に向けてもらい、姿勢を安定させてからズボンと下着をおろします。次に、介護をする方が正面から介護を受ける方の脇の下を支え、便座にゆっくりと腰を下ろしてもらいます。便器に座った状態で、両足の裏がしっかり床についているか確認しましょう。
姿勢が安定していることを確認した後、声が聞こえるように少しドアを開けた状態で、トイレの外に出て待機します。便器に腰かけた姿勢が安定していないときは、本人の了解を得てから、バスタオルなどを下腹部にかけて体を支えます。その際、落ち着いて排泄できるように、目線をそらして静かにしていましょう。
排泄が終わったと声があったらトイレに入り、必要に応じてトイレットペーパーで陰部を拭きます。お尻を拭くときは、介護を受ける方に手すりを使って体を浮かせてもらい、介護をする方が後ろから拭きます。女性の場合は、大腸菌などによる感染症を防ぐため、前からお尻に向かって拭きましょう。その後、再び立ち上がってもらい、下着とズボンを着用してもらいます。
トイレまで来たときと同様、介護を受ける方の状況に合わせて付き添いサポートをしながら、自室などへ戻ります。会話をしながら体調の変化がないか、足腰の調子はどうかなども確認しましょう。
車椅子の方のトイレ介助は、介護を受ける方が立ったり座ったりできる場合(部分介助)と、座る姿勢はできても立ち上がれない場合(全介助)で、介助の内容が変わります。状況に合わせて必要なサポートを行ってください。
車椅子をトイレの出入口や便座に、できる限り近づけます。ドアの大きさやトイレ内の広さに合わせて、無理のない位置に車椅子を止めてください。車椅子から立ち上がったときに、90°向きを変えれば便器に座れるように、便器に対して直角の位置に車椅子を止めるのが理想です。
車椅子から便器へ移乗する準備をします。まず、車椅子のブレーキをかけ、フットサポートは上げるか外しておき、介護を受ける方の足を床につけてもらいます。次に、立ち上がりやすくするため車椅子に浅く座り直してもらいましょう。このとき、介護を受ける方のベルトを緩めたり、ファスナーやボタンを外したりしておくと、脱衣がスムーズに行えます。
車椅子から立ち上がり、便器へ移乗してもらいます。このとき、部分介助の場合と全介助の場合でサポート内容が異なります。
3-1. 介護を受ける方に、トイレの手すりを握って立ち上がってもらいます。
3-2. 手すりを握ったまま、便座に背を向けるように少しずつ体の向きを変えます。
3-3. ズボンと下着をおろし、介護を受ける方の腰を支えてゆっくりと便座に座ってもらいます。
3-1. 介護を受ける方の両脇に腕を入れて、介護をする方の首に両手を回してもらいます。
3-2. 介護をする方に寄りかかってもらうようにして、ゆっくりと立ち上がります。
3-3. 少しずつ体重移動しながら、介護を受ける方の体の向きを変え、お尻を便座の方に向けます。
3-4. 介護をする方が、介護を受ける方の背中を支えて立位を安定させ、片方の手でズボンと下着をおろします。
3-5. 体を密着させたまま、介護をする方がゆっくりとひざを曲げていき、介護を受ける方に声掛けをしながら、ゆっくりと便座に座ってもらいます。
姿勢が安定していることを確認し、声が聞こえるように少しドアを開けた状態で、トイレの外に出て待機します。便器に腰かけた姿勢が安定していないときは、本人の了解を得てバスタオルなどを下腹部にかけ、トイレの中で体を支えてあげてください。その際、落ち着いて排泄できるよう、目線をそらして静かにしていましょう。
排泄が終わったと声があったらトイレに入ります。介護を受ける方に手すりを持って前傾姿勢をとってもらい、介護をする方が後ろから拭き取ります。
「2」~「3」の逆の手順で、介護を受ける方に便器から立ち上がってもらい、下着とズボンを上げて車椅子に移乗します。車椅子のフットサポートに足がきちんと乗っていることを確認してから、自室などへ戻ります。
監修者のご紹介
中谷ミホさん
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士、保育士。福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在は介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆。介護・福祉関連書籍の監修も手掛けている。
高齢になると、夜中にトイレに行きたくなって、何度も目が覚めることがあります。夜間のトイレ介助は、介護をする方・介護を受ける方、双方の精神的・肉体的負担となり、生活の質にも影響が出るケースがあります。そうしたときには、大人用紙おむつ「アテント」シリーズの中でも、睡眠中に使うことに着目した夜用の商品がおすすめ。介護をする方、介護を受ける方の心地良い睡眠を「夜のアテント」がサポートします。
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トイレ介助は、介護を受ける方の尊厳とプライバシーに配慮して行うことが重要。と同時に、自分でできることは可能な限り自分でしてもらうことが大切です。介護を受ける方の状況をよく見て、必要最小限のサポートにとどめましょう。
なお、介護をする方の負担を軽減するためにも、夜間にトイレ介助で何度も起きなければならない場合は、「夜のアテント」シリーズを活用することもご検討ください。
排泄介助とは、加齢、ケガ、病気による麻痺や筋力低下などが原因で、自力で排泄行為ができない方をサポートする介助です。排泄介助は介護を受ける方の状況や環境に応じて、「トイレ介助」「ポータブルトイレ介助」「差込便器・尿器介助」「おむつ介助」の大きく4つに分けられます。
トイレ介助を行うときは、下記の5つの点に注意が必要です。
・安全面に配慮する:特に高齢者や体力が低下している方の場合、転倒のリスクが高まるため、介護を受ける方の動きや周囲の状況に注意を払ってください。
・可能な限り自分でしてもらう:過剰に手を貸すと、これまで自分でやっていたことをやらなくなり、体の機能が低下して、さらに介助が必要な状況となってしまいます。
・プライバシー・尊厳を守る:介護を受ける方の気持ちを尊重し、排泄中はトイレの外で待ったり、視線をそらしたりしましょう。
・排泄を急かさない:急かされることがプレッシャーとなり、かえって排泄に時間がかかってしまうことがあります。
・適切に声掛けを行う:これから行う動作の説明を行うことで、介護を受ける方に安心感を与えることができます。
介護を受ける方が要支援・要介護認定を受けている場合、トイレの改修や段差の解消、手すりの設置といった住宅改修費に、介護保険が適用できます。
なお、住宅改修費に介護保険を適用するには、事前申請が必要です。住宅改修を検討するときは、ケアマネジャーや各市区町村の窓口などにご相談ください。
画像提供/PIXTA
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