記事公開: 2024.8.21
認知症とは、さまざまな原因により脳の神経細胞の働きが徐々に鈍っていき、記憶や判断力などの認知機能が低下して、社会生活に支障をきたした状態のことをいいます。
厚生労働省の研究班が発表した「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」によると、日本の認知症患者は2022年の時点で約443万人おり、2040年には約584万人まで増えると推計されています。これは、高齢者の6~7人に一人が認知症ということになる計算です。もし、親族が認知症になった場合、介護する側は精神的に負担を感じてしまうことも多いでしょう。さらに、認知症の人への接し方によっては、症状が悪化してしまうリスクもあります。
この記事では、認知症の人にしてはいけないことや、親族が認知症になった場合の対応、接し方のコツを解説します。
認知症の人と接する際には、「驚かせない」「急かさない」「自尊心を傷つけない」という、3つのポイントを意識することが大切。
認知症の状態は環境や周囲の人の接し方に大きく影響されやすく、不適切な接し方は症状を悪化させる可能性があります。認知症の人にやってはいけない、8つのことをご紹介しましょう。
認知症の人が誤った行動をしてしまっても、声を荒らげて叱責することはやめましょう。認知症の人に強く叱責してはいけない理由は、「不快な感情が残るため」です。
認知症の人は、何が起きたのかは覚えていませんが、怒られたときの不快な感情はしっかりと残ります。この不快な感情が、症状を悪化させることにつながります。認知症の人に怒っても何も解決せず、かえって認知症の症状を悪化させるだけです。やみくもに怒らずに、共感したり、心配している気持ちや感謝の言葉を伝えたりするなど、介護をする方が接し方を変えることが大切です。
認知症の人は、物忘れなどが多いため、介護をする方はもどかしい思いを感じて、ついつい命令口調になってしまう場合もあるでしょう。ですが、命令や強制などの高圧的な態度は、認知症の人にとって大きなストレスになります。強いストレスは、症状の進行を促す原因にもなるため注意が必要です。
介護をする方は、一度気分を変えてから「こうしたらどう?」などと声をかけてみると、本人が受け入れることもあるため、工夫しながら接するように心掛けてください。
無理に記憶を呼び起こそうとする行為も、認知症の人にはやってはいけません。親族としては記憶力が回復してほしいという思いから、認知症の人に認知機能をテストするような質問をしたり、脳トレをさせたり、無理に記憶を呼び起こそうとするケースがみられます。
ですが、間違ったり思い出せなかったりすることは、むしろ認知症の人の自尊心を傷つけ、自信を失わせてしまう原因にもなりかねません。さらに、自分が答えられないことで相手をがっかりさせてしまうと思うことが、本人にとって大きなストレスになるので、注意が必要です
認知症の症状が進行すると、失敗してしまうことが増えていきますが、失敗を責めるような発言や行動はやめましょう。例えば、排泄の失敗は強く非難してしまいがちですが、叱ることで萎縮やうつ症状、怒りに結びつくことがあります。
失敗を非難しても、本人は正しいと思って行動しているため、自尊心が傷ついたり、何が正しいのかわからず混乱したりしてしまいます。失敗をしても非難や指摘をせず、やさしく見守ることが大切です。
認知症が進行してくると、家事や身の回りのことなど以前できていたことができなくなっていきます。だからといって、これまでの役割を無理に取り上げるのはやめましょう。
これまでできていたことを取り上げられると、自己肯定感が低下し、自信を喪失して抑うつ状態になってしまうこともあります。認知症の進行を遅らせるために、本人ができることをできる限り続けてもらうことが大切です。
認知症の人を子ども扱いするのはやめましょう。たとえ、認知症の進行で排泄や食事が自立してできなくなったとしても、自分よりも年長の方への敬意を損なってはいけません。
自分がそのような扱いを受けたら、どのように感じるか考えた上で行動するように心掛けてください。
認知症になると、理解力や判断力が低下します。そのため、物事の段取りや手順がわからなくなり、途中でやり方がわからなくなることも。これが、「行動が遅い」と誤解される原因です。
行動が遅いからといって、イライラして急かすことはやめましょう。行動を急かすと、かえって混乱を招くことになります。時間はかかっても、急かさずに見守ることが大切です。
家や部屋に閉じ込められることは、認知症の人にとっても非常に苦痛です。「認知症の人が一人で外出して迷子になってしまったら」と心配するのは当然です。しかし、認知症の方を部屋に閉じ込めることは、何の解決策にもなりません。外に出たい人の行動を制限すると、欲求不満から認知症の症状が悪化することもあります。
認知症の人が外出しようとする場合には、家族やヘルパーが付き添いましょう。また、どうしても一人で外出したがる場合は、徘徊感知機器や位置情報端末を利用する、近所の人・警察と連携するなどの対策を取ることも有効です。
認知症と診断されると、人によってはその後の生活に大きな不安を感じることもあります。本人が症状を自覚していない場合や、自分が認知症とは信じたくないという思いが強い場合もあるため、本人に認知症であると告知するかは、担当医と相談の上、慎重に判断しましょう。
ここでは、認知症であることを本人に伝える場合のメリット・デメリットについて解説します。
認知症であることを本人に伝えるメリットとして挙げられるのは、早期に伝えることで、本人が今後の生活について考えるきっかけづくりができることです。
どのような治療方法を希望するのかを確認できるため、自身の納得がいく治療を選択できます。また、財産管理などについても早めに対策を行えるというメリットもあります。
認知症であることを伝えるデメリットとしては、現時点で認知症には根本的な治療法はないため、告知することで精神的に傷ついてしまう可能性があることが挙げられます。
認知症であることを伝える場合は、周囲がしっかりと認知症の人のサポートをできるよう、家族であらかじめ心の準備をした上で伝えるようにしましょう。
親族が認知症になった場合、家族など周囲の人には何ができて、どんな行動をとればよいのでしょうか。ここでは、家族がするべき4つの具体的な対策を紹介します。
親族が認知症になったときは、まず認知症がどんな症状なのかを理解しましょう。認知症にはさまざまな種類があり、その症状や進行度によって治療法が異なります。
最初に症状の種類や、生活上の注意点などを理解しておくと、認知症の人に寄り添った対応ができるので、本人も周囲の人も不安を軽減することができます。医師や福祉士の方の話をきちんと聞くほか、書籍やインターネットなどで認知症への理解を深めることも有効です。
認知症の人は、慣れ親しんだものに囲まれていることで症状が安定します。そのため、認知症の人が安心して生活できるように、今まで使っていたなじみ深いものや家族写真などを、視界に入る場所に用意しましょう。一方で、認知症が進行すると、目の前のものが食べものかどうかわからなくなる「異食」の症状が現れる人もいます。そのため、電池や洗剤、薬類など、誤って口に入れると危険なものは手の届かない場所に保管してください。
認知症が進行すると、トイレの場所がわからなくなって排泄を失敗する可能性もあるため、貼り紙などで、廊下やドアにわかりやすい目印をつけるのもおすすめです。
認知症の人を自宅で介護する場合、長続きする無理のない介護体制をつくることが重要になります。まず、家族や親族と話し合いの場を設け、本人の状況を共有し、介護の役割分担を決めておきましょう。
また、介護保険の利用も欠かせません。介護保険を利用すると、介護の必要度に応じてさまざまな介護サービスを受けられます。介護保険は、介護を受ける方の自立生活を支援するだけでなく、介護を担う家族や親族の生活を維持するための役割もあります。
なお、介護保険を利用するには、市区町村への申請が必要です。お住まいの地域にある「地域包括支援センター」で申請を手伝ってもらえるので、相談してみてください。
親族が認知症になった場合、資産管理や相続の対策を行うことも大切です。認知症の初期段階なら、とれる対策の選択肢も多いため、早めに本人と話し合うといいでしょう。
また、認知症が進行して判断能力が低下している場合には「成年後見制度(法定後見制度)」を利用することができます。成年後見制度は家庭裁判所が選任した成年後見人が、財産管理や契約行為を代行する制度です。
ご家族や周囲の人が認知症になった場合、今までできていたことができなくなる場面が多く、もどかしいと感じる人もいるでしょう。しかし、認知症の人と接する際に、心掛けるべきポイントを押さえておけば、もどかしさを軽減できるかもしれません。ここでは、認知症の人と接するときのコツを、4つご紹介します。
認知症の人は視野が狭くなります。そのため、横から話しかけると認識できなかったり、後ろから話しかけると驚かせてしまったりする場合があるのです。そのため、認知症の人とコミュニケーションを取るときは、正面からしっかり視線を捉えることが、不安感の軽減につながります。笑顔で接すると、より安心感を与えることができます。
命令形やとがめるような言葉など、高圧的な口調ではなく、認知症の人が安心できるような言葉選びをすることが重要です。「ほめる・感謝する・共感する」という3つのポイントを押さえておきましょう。
また、高齢者の場合、高音域が聞こえづらいことも多いため、低い声でゆっくりと話しかけるように意識してみてください。
認知症になると、物事の段取りや手順がわからなくなり、時間がかかる人もいます。しかし、急かしてしまうとさらに焦って、ますます時間がかかってしまうので逆効果です。
家族は本人が困っていると手を貸して助けたくなりますが、なんでもやってあげるのではなく、本人が自分のペースでできるようにサポートすることが大切です。
介護する人が精神的な余裕を持つことも重要です。親族が認知症になった場合、介護をする方はすべてを自分でやろうとがんばりすぎてしまったり、精神的な余裕がなくなって、ちょっとしたことでイライラしてしまったりすることも多くなります。
ゆとりを持って認知症の人の介護にあたれるよう、周囲の人の力を借りたり、介護サービスに頼ったりすることも必要です。介護する人の心にゆとりがあると、認知症の人も安心し、症状の安定にもつながります。
監修者のご紹介
中谷ミホさん
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士、保育士。福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在は介護業界での経験を活かし、介護に関わる記事を多く執筆。介護・福祉関連書籍の監修も手掛けている。
「アテント」シリーズは、介護をする方・介護を受ける方の双方に寄り添う紙おむつ。やさしいつけ心地とモレのない安心感、さらに装着のしやすさにも考慮した、さまざまな商品をラインナップしています。なお、認知症の人は、おむつの中に手を入れて便を触ったり、服や壁などに便をこすり付けたりする「弄便(ろうべん)」という行為をしてしまうことがあります。介護を受ける方の排泄リズムを把握し、適切なタイミングでおむつを交換するようにしてください。また、認知症の人はおむついじりをして、尿とりパッドを取ってしまうこともあります。そのような症状がある場合は、吸水量の多いパンツタイプの紙おむつを使用するのもおすすめです。
「アテント 夜1枚安心パンツ パッドなしでずっと快適」は、アテント紙パンツ史上最高※1の吸水力を誇るパンツタイプのおむつです。1枚でおしっこ約8回分※2の吸収量で、朝まで安心して眠れるのが特長。また、背中からのモレを軽減する<背モレ防止ポケット>の採用により、仰向けで寝られるのもうれしいポイントです。
※1 国内大人用紙パンツ2023年9月時点。大王製紙調べ。
※2 1回の吸収量150mlとして。数値は大王製紙測定法によるもの。
「アテント 夜1枚安心パンツ パッドなしでずっと快適」については、下記のページをご覧ください。
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認知症の人には「してはいけないこと」や「接し方のポイント」があり、間違った対応をしてしまうと、認知症の症状が悪化してしまうリスクがあります。さらに、認知症が進むと、排泄の失敗が増えることもあります。
介護は自分一人で抱え込むのではなく、周囲の人に相談したり、介護サービスを利用したりしながら、無理なく行うことが重要です。心にゆとりを持って認知症の人に接することができるように、介護をする方、介護を受ける方のどちらにも配慮した「アテント」シリーズをご活用ください。
認知症の人と接する際、「声を荒らげて叱責する」「命令する」「無理に記憶を呼び起こそうとする」「失敗を非難する」「役割を取り上げる」「子ども扱いする」「行動を急かす、制限を加える」「外出を禁止する」といったことをしてはいけません。こうした行動は、認知症の人の自尊心を傷つけ、ストレスを与えてしまうことが、認知症の症状を悪化させてしまう可能性があります。
認知症であることを本人で伝えることには、一長一短があります。認知症であることを早期に伝えることで、自身で今後の生活について考えることができます。一方で、本人に認知症の自覚がない場合は、傷つけてしまう可能性も。本人に認知症だと伝えるかどうかは、担当医と相談して判断しましょう。
認知症の人と接するときに何よりも大切なのは、介護する人が心に余裕を持つことです。介護する人の不安な気持ちは認知症の人にも伝わり、相手も不安になってしまいます。なお、認知症の人の目線に合わせて話をしたり、相手が安心する言葉遣いを心掛けたりすると、認知症の人も心穏やかに過ごすことができます。
画像提供/PIXTA
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