記事公開: 2024.8.23
介護の現場では、「介助」という言葉が使われています。「介護」と同じような意味だと捉えられがちですが、実はこの2つには大きな違いがあることをご存じでしょうか。
今回は、介助と介護の違いのほか、介助の種類や介助するときに気をつけるべきポイントなどについて解説します。
介助とは、高齢者や障がい者などの身体的に不自由な方に対して、日常生活の中で必要となる行為のサポートを行うことです。具体的には、立ち上がり・歩行などの基本動作や、食事・入浴などの日常生活動作に対する手助け、声かけなどの働きかけが介助に当たります。
介助の大きな目的のひとつは、生活の質の向上を目指すこと。生活全般を支援するのではなく、介助を受ける方が「できないこと」を中心にサポートし、可能な限り自分の意思や力で生活できるように介助することを目的としています。
例えば、一人で食事ができる方には「食事介助」は不要です。一人で調理や食事、後片付けはできるけれど、食材の買い出しは難しいといった場合には「食事の介助」ではなく、「買い物介助」が必要です。
介助をする方は、介助を受ける方ができることに目を向けて、積極的にほめたり前向きな言葉をかけたりしながら、自立を促すことが求められます。
介助と介護では目的が違います。介護の目的は、高齢者や障がい者など、自力で日常生活を送れない方に対して、生活行為や自立支援に関わる身体的、精神的、社会的なサポートを行うことです。
介護には、食事や排泄、入浴など日常生活の行動を手助けする身体的な介護はもちろん、社会生活の向上をサポートする社会的介護も含まれます。
介護現場では、さまざまなシーンで介助が行われています。そのため、介助は介護の中に含まれる行為といえるでしょう。
介助を行う際には、介助を受ける方の介助レベルを理解しておくことが必要です。介助レベルは、身体状況によって4段階に分けられます。介助レベルを把握することで、自分でできることまで手を貸してしまう「過介助」を防ぐことができるでしょう。
■介助レベルと介護を受ける方の体の状態
介助を受ける方の身体状況などにより、日常生活の中で手助けが必要とされるシーンはそれぞれ違います。ここでは、実際の介護の現場で行われている、7つの介助について紹介します。
歩行介助は、介助を受ける方が安全に目的地まで歩行できるようにサポートすることです。筋力低下や麻痺などがある方は歩行中の転倒リスクが高くなるため、介助を受ける方の身体状況に応じて適切なサポートが求められます。
歩行介助の方法には、介助する方が横に立っていっしょに歩く「寄り添い歩行介助」や、介助を受ける方と向かい合って歩く「手引き歩行介助」などがあります。
なお、杖や歩行器、シルバーカーなどの補助具を利用している場合や、階段・段差の上り下りが伴う場合など、歩行する環境によっても介助の方法は変わります。介助を受ける方の歩行動線をしっかりと整備し、無理せず安全に歩行できるよう心掛けましょう。
移乗介助とは、ベッドから車椅子、車椅子からトイレの便座など、介助を受ける方が安全に移乗できるように手助けすることです。移乗介助は、少しでも足に力が入る方であれば、つかまり立ちと簡単な介助で移乗してもらうことができます。介助を受ける方のできること、できないことを見極めて介助を行ってください。
車椅子から移乗介助を行う際には、車椅子が動いた反動で介助を受ける方が転倒することのないよう、車椅子のブレーキをかけておくといった注意が必要です。また、移乗介助を行う際は、しっかりと掛け声をかけながらタイミングを合わせて行いましょう。
片麻痺の方の移乗介助を行う場合は、体の麻痺症状がない側に車椅子を配置するのが基本です。できるだけ角度をつけないことで、移乗動作の負担を軽減できます。また、介助を受ける方と介助する方の体格のバランスが悪い場合は、複数人で介助を行うことをおすすめします。
食事介助とは、加齢や病気などにより咀嚼機能や嚥下機能、消化機能が低下して、うまく食事がとれない方へ行うサポートのこと。誤嚥などのトラブルを起こさないよう、食事姿勢を整える介助も含みます。食事介助の際は、誤嚥や窒息などの事故を防ぎながら、好きなものを自分の力で食べ続けられるようにサポートすることが大切です。
介助をする方は、食べ物を適切な大きさに切ったり、介助を受ける方が口に食べ物を運ぶ手助けをしたりします。そのほか、テーブルや椅子の高さを調整して食事中の姿勢を整えたり、状態に合わせて使いやすい食器を選んだりすることも食事介助の一環です。
食事介助を行う際は誤嚥や窒息を防ぐために、介助を受ける方の状況に応じて、一度に食べる量や食べるペースなどに注意します。スムーズな嚥下(飲み込み)のために、最初に水分をとって口内を湿らせてから食事をとるようにしましょう。
なお、高齢者の場合、喉の渇きを感じにくくなるため、本人が気づかないうちに脱水症状になることもあります。そのため、食事介助の際に水分補給を促すことも重要です。
入浴介助とは、自力で入浴することが困難な方のために、介助を受ける方の身体状況や希望に応じた方法で入浴をサポートすることです。入浴は、介助を受ける方の体を清潔に保つために必要不可欠なほか、体を温めることでリラックス効果も期待できます。
入浴介助には、浴槽に肩まで浸かる「一般浴」、シャワーチェアなどを使用してシャワーのみで入浴する「シャワー浴」、ストレッチャーやリフトなどがついた専用の浴槽を使って入浴する「機械浴」などがあります。
介助を受ける方にとって、入浴は危険を伴う可能性がある行為です。入浴介助を行う場合は、介助を受ける方が転倒しないようにしっかりと支える、一人では洗いにくい部分を本人に代わって洗うなどの対応が必要となります。なお、介助を受ける方によっては、入浴が体力の
消耗や疲労を伴う行為となることも理解しておいてください。
また、入浴介助のタイミングで、介助を受ける方の体に傷や乾燥、発疹などがないか、全身の状態をチェックするようにしましょう。
更衣介助とは、着替えをサポートする介助のことです。一人では着替えが難しい方のために、袖を通したり、襟から頭を出したりするなどの着脱をサポートします。
更衣介助は、なるべく自力で着替えを行えるように、手順を統一して着脱のサポートを行うことが求められます。また、着脱しやすく、体に負担が少ない衣類をそろえることも、更衣介助の一環です。
関節の可動域が狭い方の場合は、伸縮性の高い衣類やゆったりしたサイズのものを選ぶように工夫しましょう。介助を受ける方の希望するファッションや、季節に合わせた衣類を選んだりするなど、介助を受ける方が快適に過ごせるように心掛けてください。
排泄介助とは、排泄のサポートを行う介助のことで、介助を受ける方の状況によって内容が変わります。排泄介助は介助を受ける方の尊厳に関わるデリケートな行為です。自尊心を傷つけることのないよう、細やかに配慮してください。
トイレまで移動できる方であれば、トイレで排泄介助を行います。便座への移乗やズボンの上げ下げ、排泄後に陰部を清潔にする介助などを行いましょう。トイレまでの移動が難しく、ポータブルトイレを使用する方であれば、トイレでの排泄介助の内容と併せて、ポータブルトイレ内の排泄物の処置などを行います。
ベッドから起き上がることが難しく、寝たままで使える尿器や差し込み便器を使用する方であれば、衣類やベッドが汚れないように腰の下にタオルを敷くといいでしょう。おむつを使用している方であれば、肌荒れや感染症を引き起こさないように、適切なタイミングでおむつを交換します。
自力で寝返りをうつことができない方のために、寝返り介助も必要となります。寝返りができないと褥瘡(床ずれ)の原因にもなるため、定期的に体位変換を行ってください。
寝返り介助を行う場合には、突然動かそうとするのではなく、介助を受ける方に声をかけて、これから行う動作についてきちんと説明してから行います。事前に動作説明を行うことで、介助を受ける方も心の準備をすることができますし、寝返りのために体に力を入れることができます。事故を防ぎ、スムーズな寝返りを行うためにも、事前に声がけをしましょう。
介助の方法を間違えると、介助を受ける方にケガをさせてしまったり、症状に悪影響が出てしまったりすることもあります。ここでは、介助の際に失敗しないために、気をつけるべきポイントを紹介します。
介助を行う際は、介助を受ける方の体のつくりに沿って介助すると、失敗しにくくなります。人間の関節や筋肉には、必ず自然に動く方向があります。それに反するような不自然な動きで介助を行うと、介助を受ける方の体に負担をかけたり、ケガの原因につながったりすることになりかねません。
介助する方が自分のやりやすいように介助を受ける方を動かしてしまうと、介助を受ける方の恐怖心や不安感を大きくしてしまう場合もあるので注意が必要です。
また、介助の際に腕だけでサポートしようとすると、介助をする方も介助を受ける方も体勢が不安定になってしまうことがあります。そのため、なるべく体を密着させるように心掛けましょう。
体を密着させると安定感が増すので、介助を受ける方に無理な動きをさせてしまうことが減ります。
立ち上がるときや移乗するとき、歩行するときなど、すべての介助のシーンで、ゆっくりとした動きを意識するようにしましょう。介助をする方の動きが速いと、介助を受ける方は転倒やケガを心配して、不安を抱いてしまいます。
また、素早く体を動かして介助すると、介助を受ける方に負担をかけることもあります。
「怖くなったら言ってくださいね」などと声をかけ、不安を取り除きながら介助することを心掛けてください。
介助を受ける方の体に触れたり、動かしたりする前には、一言声をかけることが重要です。これから行う動作についてきちんと説明してから行うことで、介助を受ける方も体を動かす準備ができます。
また、介助を受ける方が動作に備えて力を入れてくれることで、介助しやすくなります。声をかけずに急に体に触れてしまうと、介助を受ける方は驚いて、転倒したり、体を痛めたりする危険性があるので注意してください。
介助を行う際は、過剰なサポートをしないようにしましょう。よかれと思ってサポートしてしまいがちですが、必要以上に介助してしまうと、今まで自分でできていたことができなくなる可能性があります。すると、介助レベルが上がり、やがて何もできなくなってしまう事態に陥ることもあります。
自分でできることは自分でやってもらう、本人ができないことだけを部分的にサポートすることを心掛けてください。ただし、加齢や体力の衰えなどによって、今までできていたことが突然できなくなることも考えられます。
あくまでも、本人ができない部分を補い、介助を受ける方に寄り添った介助をすることが大切です。
監修者のご紹介
中谷ミホさん
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士、保育士。福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在は介護業界での経験を活かし、介護に関わる記事を多く執筆。介護・福祉関連書籍の監修も手掛けている。
1980年に誕生した「アテント」シリーズは、「もっといいパンツになる。」を合言葉に、体にも心にも寄り添える大人のパンツとして進化を続ける大人用紙おむつブランドです。アテントは、介助する方にとっても介助を受ける方にとっても頼れる紙パンツを目指して、さまざまな商品をラインナップしています。
「アテント うす型さらさらパンツ通気性プラス」は、介助があれば歩ける方に適したパンツタイプのおむつ。<全面通気性プラスシート>で通気性が約20%※アップして、紙パンツとパッドを併用してもムレにくいのが特長です。尿を素早く引き込んであふれモレを防ぐ<引き込みライン>を採用し、表面さらさらが続きます。
※大王製紙従来品比
「アテント うす型さらさらパンツ通気性プラス」については、下記のページをご覧ください。
アテント うす型さらさらパンツ通気性プラス M男女共用
アテント うす型さらさらパンツ通気性プラス L男女共用
「アテント 紙パンツ用すっきりパッド 2回吸収」は、吸水パッドが初めての方も安心して使える紙パンツ用のパッド。アテント史上最高(さいたか)※の<モレブロック立体ギャザー>が脚まわりにしっかりとフィットして、座った状態でもモレをブロックします。
※大王製紙調べ(2023年11月時点)
「アテント 紙パンツ用すっきりパッド 2回吸収」については、下記のページをご覧ください。
アテント 紙パンツ用すっきりパッド 2回吸収
「アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス」は、介助があれば立てる方、座れる方に適したパンツタイプのおむつです。1枚でおしっこ約5回分※を吸収し、朝と夜の交換だけでもモレ安心。<背モレ防止ポケット>が、就寝時・仰向け寝での背中からのモレを軽減します。
※1回の吸収量150mlとして大王製紙測定方法による。
「アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス」については、下記のページをご覧ください。
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Mサイズ 男女共用
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Lサイズ 男女共用
介助をする方は必要以上にサポートするのではなく、介助を受ける方ができることをよく理解して、本人に寄り添った介助を行うことが重要。また、介助する方の負担がなるべく軽くなるように、ケア用品や器具を使うことも大切です。
特に、排泄介助は介助を受ける方の自尊心を損なわないことも求められます。介護おむつを使用する排泄介助の際は、介助を受ける方・介助する方に寄り添った「アテント」シリーズを使ってみてはいかがでしょうか。
介助は、高齢者や障がい者などの身体的に不自由な方に対して、日常生活で「できない行為」のみをサポートすることです。一方、介護は自力で日常生活を送れない方に対して、生活行為や自立支援に関わる身体的、精神的、社会的なサポートを行うことです。介護の一環に介助が含まれます。
「食事介助」「排泄介助」「入浴介助」「歩行介助」「移乗介助」「更衣介助」「寝返り介助」の7つが、介助の主な種類です。なお、介助を受ける方は、身体状況によって「自立」「一部介助」「半介助」「全介助」という、4段階の介助レベルに分けられます。介助をする方は、それぞれの介助レベルに合わせてサポートを行う必要があります。
介助する際は、「体のつくりに合わせて介助すること」「ゆっくりとした動きを意識すること」「介助を始める前に声をかけること」「最小限の範囲で介助すること」を意識しましょう。介助の方法を間違えると、介助を受ける方にケガをさせてしまったり、症状に悪影響が出てしまったりすることもあります。介助を受ける方に寄り添った介助を心掛けてください。
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