記事公開:2025.2.28
認知症の方の介護での排泄ケアのポイントや「トイレの仕方がわからない」「紙パンツやパッドを嫌がり、トイレに流してしまう」というトラブル対策も解説します。
高齢になると、認知症の有無に関わらず、足腰が弱り、動作が緩慢(かんまん)になることなどから尿失禁が起きる割合が高くなっていきます。さらに、認知症が進むと、「トイレの場所や使い方がわからない」「服の着脱が難しくなる」に始まって、「尿意や便意を感じなくなる」など、排泄行為自体を理解できない場合もあり、排泄のトラブルがますます増えてしまいます。
排泄に関してよくあるトラブルについて、ご本人のプライドを守りながら、介護の負担を軽くする対応策をご紹介します。
・尿意や便意を感じるのが遅くなっている
・日常の生活動作に時間がかかる
・服の着脱が難しくなる
・トイレへの通り道を片付けて障害物をなくし、通路に手すりをつける
・そわそわする、うろうろし始めるなど、トイレに行きたいサインを見つけたら、トイレに誘導する
・数日間、排泄日記をつけ、1日の排泄パターンをつかみ、余裕をもってトイレに誘導する
・トイレでさっと下ろせるように、ウエストがゴム状で上げ下げしやすい下着や服を着てもらう
・日中は、ふだんの下着に尿とりパッドをつける、または下着感覚で脱ぎ着できる紙パンツを使用する
・夜間は吸水量の多い紙パンツや紙おむつを使用する
・トイレの場所がわからない
・玄関や浴室などをトイレと間違える
・排便はトイレで行うものだということがわからない
・便器であることがわからない
・幻視(トイレの前に人が並んでいるなど)
・リビングや寝室、廊下などに「トイレはこちら→」と誘導する貼り紙をし、トイレのドアにも大きく「トイレ」と書いた紙を貼る(「トイレ」という言葉を使わない方には「お手洗い」「便所」などご本人が使っていた言葉で表示する)
・夜中もトイレへの通路は電気をつけて明るくしておく
・トイレのドアを少し開けて便器が見えるようにする
・朝食後など、時間を見計らってトイレに誘導する
・失敗したことを知られたくない
・隠しやすい場所をあらかじめ用意しておく
・叱ったりせずに、そっと持ち出して洗濯する
・自分でうまくつけられない
・違和感があり不快
・何のためにつけるのかわからない
・薄手で尿とりパッド以上に吸収力のある紙パンツを使用する
・上記の際は「おむつ」と言わず、「紙パンツ」「使い捨てできる下着」としてすすめる
・恥ずかしい、情けないなど、おむつを使うことに抵抗がある
・ムレやかぶれが不快
・濡れると気持ちが悪い
・数日間排泄記録をつけてみて、1日の排泄パターンをつかみ、濡れたらできるだけ早く取り替えるようにする
・下着感覚で脱ぎ着できる薄型の紙パンツと尿とりパッドを併用し、パッドをこまめに取り替える
・パッドを嫌がる場合は、薄手で尿とりパッド以上に吸収力のある紙パンツを使用する
・「おむつ」と言わず、「紙パンツ」「使い捨てできる下着」としてすすめる
・濡れたパッドやおむつに不快さを感じている
・トイレに流すと詰まるということが理解できない
・トイレにかごやバケツを用意し、そこに捨ててもらうように貼り紙をして、トイレに誘導するたびに何度も説明し、声かけをする
・日中家族がいない場合は、トイレのタンクの水量を少量に調節して流れないようにする
・パッドやおむつではなく、下着感覚で脱ぎ着できる薄型の紙パンツを使用し、下着として認識してもらう
認知症が進んでも、羞恥心とプライドは失われることがありません。どんな場合も叱ったり、自分で片付けさせたりなどはせず、ご本人ができることを大事にしていくことが大切です。
また、介護をしている方も、がんばり過ぎないことが大切です。
認知症の方の排泄のケアはとても大変ですが、適切なケアを行なうことによって、快適な生活を送ることにつながるでしょう。
執筆者のご紹介
玉井 顯(たまい あきら)先生
医療法人敦賀温泉病院理事長・院長、がんばらない介護生活を考える会賛同人。金沢医科大学病院神経科精神科講師を経て、福井県敦賀市で、敦賀温泉病院を開設、2009年に認知症疾患医療センターの指定を受ける。日本老年精神医学会専門医・指導医認定、日本認知症学会専門医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医認定。
認知症の方がトイレに間に合わない原因としては、尿意や便意を感じるのが遅くなっていたり、足腰が弱って日常の生活動作に時間がかかったりしてしまうことが考えられます。
対策のためには、トイレまでの通り道を片付けて障害物をなくしたり、通路に手すりをつけたりするといいでしょう。また、認知症の方がトイレに行きたそうなサインに気づいたら、トイレへ誘導する方法もあります。そのためには、数日間排泄日記をつけ、1日の排泄パターンを把握するのがおすすめです。
認知症の方がトイレ以外の場所で排泄してしまう場合、リビングや廊下などに「トイレはこちら→」など誘導する貼り紙をし、トイレのドアにも大きく「トイレ」と書いた紙を貼るのがいいでしょう。トイレ以外の場所で排泄してしまう原因としては、トイレの場所がわからなくなっていたり、玄関や浴室などをトイレと間違ったりしてしまうことなどが考えられます。
認知症の方が汚れた衣類や下着をしまいこんでしまうのは、失敗したことを知られたくないからです。そのため、見つけた際には何も言わずにそっと持ち出して洗濯しましょう。認知症の方ご本人のプライドを傷つけないよう、あらかじめ隠しやすい場所を用意しておくのも対策のひとつになります。
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