記事公開:2024.11.14
尿モレに悩まれている方や排泄介助が必要な方にとって、大人用紙おむつは欠かせないアイテムです。しかし、長時間の使用により皮膚トラブルが発生することがあります。その代表的な症状が「おむつかぶれ」です。
今回は、大人用紙おむつの着用でおむつかぶれが起こる原因やケア方法について解説します。大人のおむつかぶれが起こってしまった場合の対処法にもふれていますので、ぜひ参考にしてください。
おむつかぶれとは、おむつが密着するおしりや陰部の皮膚に起こる、発赤(ほっせき)や湿疹(しっしん)といった症状の総称です。汗や排泄物によるムレ、アンモニアなど有害成分が皮膚に付着することによる刺激のほか、皮膚の常在菌である真菌(カビ)の一種のカンジダ菌の異常増殖などが、かぶれの原因になることもあります。
排泄コントロールが難しい高齢者や障害がある方などにとって、紙おむつの着用は欠かせません。ですが、紙おむつの長時間の着用は、大人のおむつかぶれを引き起こす可能性があることを知っておいてください。特に夏場はムレやすく、症状が悪化するおそれがあるので注意が必要です。
大人のおむつかぶれの症状はさまざまです。肌の赤みやかゆみが生じることもあれば、皮膚のただれを伴う発疹が現れることもあります。なお、大人のおむつかぶれの主な原因としては、紙おむつによるムレと、カンジダ菌の増殖によるものが挙げられます。ここでは原因ごとの具体的な症状について解説します。
紙おむつ着用によるムレは、大人のおむつかぶれの原因のひとつです。おむつの内部は汗をかきやすく、温度や湿度が上昇してムレやすい環境です。ムレてふやけた皮膚は、刺激に弱くなります。そのため、紙おむつがあたる部分や、尿・便がふれていた部分などがひりひりしたり、かゆみを伴う赤み・発疹などが生じたりするのです。
症状を放置すると、さらに大人のおむつかぶれが悪化することにもなりかねないため、できるだけ早めに対処することが大切です。
カンジダ菌は、人の皮膚や粘膜に常在する真菌(カビ)の一種で、免疫力の低下や抗生物質の使用などで増殖し、感染症を引き起こすことがあります。
カンジダ菌の増殖による皮膚症状(皮膚カンジダ症)は、膿を伴う発疹が現れることもありますが、通常の大人のおむつかぶれと似ているため、視診では正確に判断できません。また、市販の皮膚用薬を使用すると、症状が悪化することもあります。大人のおむつかぶれの症状がなかなか治らない場合は、病院の受診をおすすめします。
紙おむつの長時間の着用は、大人のおむつかぶれを引き起こすおそれがあります。しかし、大人のおむつかぶれがどのようにして発生するのかがわかれば、未然に防ぐ方法も見えてくるでしょう。
大人のおむつかぶれの主な原因として考えられるのは、下記の4つです。
加齢によって肌が敏感な状態になることで、大人のおむつかぶれが起こりやすくなります。
人間の皮膚の表層は角質層で覆われています。角質層は角化した皮膚の細胞が積み重なった構造をしており、肌のうるおいを閉じ込めるとともに、肌の深層への刺激を防ぐことが主な役割です(肌のバリア機能)。しかし、年齢を重ねるにつれて角質層の構造が乱れ、肌のバリア機能が低下しやすくなります。これにより、肌のうるおいが失われやすくなったり、さまざまな外的ダメージを受けやすくなったりするのです。
さらに、肌に広く分布する皮脂腺や汗腺の機能も、年齢を重ねるごとに低下していきます。これにより、肌のうるおいが失われ、角質層の構造がますます乱れやすくなります。
このように、高齢者の皮膚は外的なダメージを受けやすい状態になっているため、大人のおむつかぶれが起こりやすいのです。
紙おむつを長時間着用していると、紙おむつの中が高温多湿となり、陰部の雑菌が繁殖しやすい環境になります。こうして紙おむつの中で増殖した雑菌が、大人のおむつかぶれを引き起こしているケースは少なくありません。
さらに、紙おむつを長時間着用したことによるムレも、肌のバリア機能を低下させて、大人のおむつかぶれを引き起こす原因となります。
排泄物も、肌を刺激して大人のおむつかぶれを引き起こす原因になります。おむつの中で陰部やおしりの部分に溜まった排泄物が、大人のおむつかぶれを誘引してしまうこともあるのです。
高齢者の肌は、バリア機能の低下により肌のうるおいが失われやすい反面、尿や便の成分が細胞のすき間から浸透しやすい状態になっています。そのため、尿や便の成分が肌の深部にまで浸透して、皮膚組織を側から傷つけかぶれを起こしてしまいます。
肌への摩擦も大人のおむつかぶれの原因になります。寝て過ごすことが多い生活が続くと、姿勢をあまり変えずにいる時間が長くなります。高齢者の肌は若い世代と比べて薄く、もろくなっているため、摩擦が加わると表皮が傷ついてしまうのです。こうして傷ついた皮膚が炎症を起こし、大人のおむつかぶれの原因となることも少なくありません。また、長時間のおむつ着用によりムレてふやけた肌は、ちょっとした摩擦で簡単にはがれてしまいます。
このように、高齢者の肌は大人のおむつかぶれを引き起こしやすいくらいデリケートです。大人のおむつかぶれの予防策を講じて、肌のトラブルを未然に防ぐことが大切です。
さまざまな原因で起こりうる大人のおむつかぶれを予防するには、どのような対策を講じる必要があるのでしょうか。ここでは、大人のおむつかぶれを未然に防ぐ方法をご紹介します。
大人のおむつかぶれを予防する方法として、紙おむつ交換の頻度やタイミングを見直すことが挙げられます。 おしりや陰部がムレる原因のひとつは、紙おむつを長時間にわたって着用していること。紙おむつの交換頻度を見直すことで、大人のおむつかぶれを軽減できる可能性があります。交換頻度を変えずとも、ムレが起こりづらい紙おむつも発売されているため、介護する方や介護を受ける方の負担にならない範囲で検討してください。
また、排泄日誌をつけて介護を受ける方の排泄リズムをつかみ、紙おむつ交換のタイミングを変更してみるのも効果的です。排泄後すぐに紙おむつを交換することで、排泄物の汚れによる刺激を軽減することができるでしょう。
大人のおむつかぶれの予防には、紙おむつ自体を見直すことも有効です。肌が弱い方の場合、吸収量の多い紙おむつを長時間装着するよりも、吸収量の少ない紙おむつをこまめに交換するほうが、おむつかぶれしにくいことがあります。ただし、交換頻度が増えることで、介護をする方や受ける方の負担が増える場合もあります。介護を受ける方の排泄頻度と排泄量を把握した上で、介護をする方、介護を受ける方への負担ができるだけ少ない方法を再度検討してみてください。
また、おむつによっては通気性に優れた製品も販売されています。特に、夏場などの高温多湿になりやすい時期は通気性を重視した紙おむつを選ぶなど、ムレについても考慮してください。
おむつ交換の際、肌に負担をかけないよう配慮することも重要です。交換時に古い紙おむつを強く引っ張って取り除こうとすると、肌と紙おむつのあいだで摩擦が起こり、皮膚が傷ついてしまうことがあります。
テープタイプの紙おむつの場合は体を横向きにして片方ずつ丁寧に抜き取り、パンツタイプの紙おむつの場合は横のつなぎ目を破って脱がせるなど、肌に負担をかけないように交換しましょう。
テープタイプの紙おむつ交換手順については、下記のページをご覧ください。
寝て過ごすことが多い方の介護 おむつ交換の事前準備と手順
紙おむつの中に湿気がこもると、肌がふやけて皮膚のバリア機能がさらに低下します。そこに、排泄物や増殖した雑菌による皮膚への刺激が加わると、大人のおむつかぶれを起こしやすくなります。汚れをこまめに拭き取り、肌を清潔に保つようにしましょう。
吸水性に優れた紙おむつや尿とりパッドだからといって、長時間同じものをつけたままにするような使い方は禁物です。適度な交換が大人のおむつかぶれの防止につながります。
おしりや陰部に付着した尿や便を拭き取る際は、できるだけ肌に摩擦を加えないように心掛けてください。介護を受ける方の体を清潔に保とうとするあまり、力を入れて拭き取ってしまうケースは少なくありません。
ですが、おしりや陰部の皮膚・粘膜は非常にデリケートなので、力を入れて拭くとダメージを与えてしまうことがあります。なるべく力を入れずに、やさしく汚れを取り除いてください。
また、アルコール成分が含まれたおしりふきは、体質により肌に強い刺激を与えることがあります。使用後の皮膚に発赤が見られるようなら、アルコール成分を含まないおしりふきを使用するか、ぬるま湯で濡らしたガーゼなどを使用しましょう。
おむつ交換時や入浴後には、おしりをしっかり保湿しましょう。肌が乾燥していると、皮膚のバリア機能が低下してしまい、炎症が起こるおそれがあります。拭き取り後やお風呂上がりにクリームやオイルスプレーなどでおしりを保湿してから、新しいおむつを着用するのがポイントです。
さまざまな対策を講じても、大人のおむつかぶれを完全に防げないこともあります。おむつかぶれが起こってしまったときには、どのようにケアをすればいいのでしょうか。大人のおむつかぶれが起こってしまった場合の対処法を紹介します。
おしりを洗う際には、強くこすらずやさしく洗うのが基本です。特に炎症が起きている部分を清潔に保とうと、高い頻度で洗うと皮脂によるバリア機能が低下してしまうことがあります。1日1回を目安に、石鹸やボディソープを泡立ててやさしく洗いましょう。
症状によっては、炎症やカビの増殖を防ぐ成分を含む洗浄剤を選ぶのもひとつの方法です。お風呂上がりにおしりを拭くときも、肌に負担をかけないようにやさしくタオルを押し当てて、水分を吸い取ることを意識してください。
湯船に浸かって血行を良くすることも、大人のおむつかぶれの対処法のひとつです。長時間寝て過ごすことが多かったり、同じ姿勢が続いたりすると血行が悪くなります。血行不良は皮膚の代謝を下げる原因にもなるため、温かい湯船に浸かって血行を良くすることをおすすめします。
なお、入浴介助は、介助を受ける方の血圧や脈拍、体調に異常がないかを確認した上で、十分に注意をしながら行ってください。
長時間同じ姿勢で横になっていることも、大人のおむつかぶれの原因となる可能性があります。皮膚にかかる負担を分散させるには、定期的に体位を変えることが重要です。
ただし、介護を受ける方の状況によっては、頻繁に体位を変えることがかえって負担になってしまうことがあります。介護を受ける方やかかりつけ医に相談の上、可能な範囲で対応しましょう。
大人のおむつかぶれの症状が軽い場合には、ワセリンや非ステロイド系の市販薬で対応できることもあります。症状が強く出ているようなら、ステロイド軟膏や亜鉛華軟膏を使用して炎症を抑えたほうが良い場合もあるでしょう。
なお、大人のおむつかぶれに市販薬を使用する際は、かかりつけの医師や薬局・薬店の薬剤師などに事前に相談の上、用法・用量を守って使用してください。
おしりのムレが原因でかぶれてしまっているようなら、紙おむつの見直しも検討しましょう。大人のおむつには多くの種類があり、形状やサイズ、吸収量、通気性など機能もさまざまです。介護を受ける方に合ったものに交換することで、症状が改善する場合もあります。
紙おむつのサイズが体格に合っているか、交換頻度や寝ているときの姿勢に適した形状のものを使用しているかなど、さまざまな観点から紙おむつの見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
監修者のご紹介
吉岡容子先生(高梨医院 皮膚科・美容皮膚科院長)
東京医科大学卒業、麻酔科学講座入局。麻酔科退局後、皮膚科・美容皮膚科を経て、2012年より医療法人容紘会 高梨医院皮膚科・ 美容皮膚科を開設。院長として現在も勤務。日本レーザー医学会、日本抗加齢医学会、日本美容皮膚科学会など数多くの学会に所属する。
高梨医院 皮膚科・美容皮膚科
大人のおむつかぶれの対策として紙おむつを見直す際には、紙おむつを使用する方にとっての装着感や快適性も十分に考慮しなくてはなりません。介護を受ける方に寄り添い、大人のおむつかぶれを防ぐためのさまざまな工夫を凝らした「アテント」シリーズをおすすめします。
「アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ」は、<背モレ防止ポケット付き>で背中からのモレや脚まわりからの横モレを防ぐ、テープタイプの大人用紙おむつです。肌にやさしいやわらかい素材のテープを採用しており、介護をする方がつまみやすく、簡単にしっかりと止められます。
また、<全面通気性シート>を採用しているため、さらっと快適な着用感が長続きする点が特長です。消臭効果付きで、アンモニアなどのニオイをしっかり吸収し、気持ちの良い着用感を維持します。介助があれば座れる方や、寝て過ごす時間が長い方におすすめです。
「アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ」については、下記のページをご覧ください。
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ S
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ M
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ L
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ LL
「アテント 夜1枚安心パッド ムレを防いで長時間吸収 4回吸収」は、1枚で一晩着用できるテープタイプ用のパッドです。おしりをしっかり包み込む幅広吸収体が、1枚でおしっこ4回分※をたっぷり吸収します。<全面通気性シート>でさらっとした着け心地が持続するほか、消臭機能付きで排泄物のニオイを抑えられる点が特長です。
体の中心に合わせやすいセンターライン入りで、介護をする方にとってもおむつの交換がしやすくなっています。介助があれば座れる方や、寝て過ごす時間が長い方におすすめです。
※ 1回の排尿量を150mlとして。大王製紙測定方法によるもの。
「アテント 夜1枚安心パッド ムレを防いで長時間吸収 4回吸収」については、下記のページをご覧ください。
アテント 夜1枚安心パッド ムレを防いで長時間吸収 4回吸収
大人のおむつかぶれ対策は、おむつ選びも重要なポイントです。着用する紙おむつを見直す際には、介護を受ける方に合ったものを選ぶことが大切。体の状態や体格、排泄の頻度などによって適した紙おむつは異なるので、介護をする方・介護を受ける方、双方にとってより良い紙おむつを選びましょう。
また、おむつ選びに迷った際には、簡単な質問に答えるだけで適切なおむつを探せる、下記のページもぜひ参考にしてください。
大人用おむつの選び方・使い方 ~簡単な質問に答えるだけ!~ ラクラク大人用おむつ選び
大人のおむつかぶれが起こる主な原因として、加齢による肌のバリア機能が低下していることや、紙おむつの長時間着用でおむつの中で雑菌が増殖すること、排泄に伴う汚れが陰部やおしりに溜まり肌を刺激すること、同じ姿勢で過ごすことによる肌への摩擦などが挙げられます。
大人のおむつかぶれが起きた場合は、おしりをやさしく洗ったり、湯船に浸かって血行を良くしたりしましょう。また、介護を受ける方が寝て過ごすことが多い場合は、定期的に体位を変えて、皮膚にかかる負担を分散してみてください。このほかにも、外用薬を使用したり、おむつを見直したりすることも効果的です。
大人のおむつかぶれを予防するには、下記のような方法が効果的です。
・紙おむつ交換の頻度・タイミングを見直す
・紙おむつ自体を見直す
・おむつ交換時、肌に負担をかけない
・肌を清潔に保つ
・拭き取り時の摩擦に注意する
・しっかりと保湿をする
画像提供/PIXTA