記事公開:2024.12.20
歳を重ねるとともに、前立腺がだんだんと肥大化する前立腺肥大症は、50歳前後から発症率が高くなるといわれています。自覚症状がないケースもありますが、排尿や射精に障害を引き起こすこともあり、男性にとっては身近な病気ともいえるでしょう。
今回は、前立腺肥大症と尿モレの関係を解説します。前立腺肥大症の検査方法や治療法、予防法も紹介します。ぜひ参考にしてください。
前立腺は男性に特有の臓器で、膀胱の下に位置し、尿道を取り囲むような形をしています。通常はクルミくらいの大きさの臓器です。
前立腺の役割については明確になっていない点も多いのですが、精子を保護する前立腺液を分泌する働きや、射精時に精液を尿道内から押し出す働き、精液が膀胱にいかないよう尿道を締める役割を担っていると考えられています。
前立腺肥大症とは、前立腺が肥大化する病気のことです。大きくなった前立腺が尿道を圧迫して、排尿にまつわるさまざまな問題を引き起こします。
排尿の回数が1日8回以上となる頻尿や、尿が出にくくなる排尿困難、排尿後も膀胱内に尿が残る残尿などは、前立腺の肥大化によってもたらされる症状の一例です。
前立腺肥大症になる原因は明確ではない部分が多いものの、加齢により発症する傾向があり、男性ホルモンの影響が大きいと考えられています。男性ホルモンであるテストステロンが、5α-リダクターゼという酵素の作用でジヒドロテストステロンに変換されることで前立腺の細胞が増殖して、前立腺肥大症を引き起こすとされているのです。
ただし、加齢とともに前立腺肥大症を発症しやすくなる傾向があるものの、30代で発症するケースもあることから、若い世代であっても無縁な病気ではありません。
排尿にまつわるさまざまな問題を引き起こす前立腺肥大症は、主に4つの症状に分けられます。
ここでは、前立腺肥大症によって起こる「排尿症状」「蓄尿症状」「排尿後症状」「合併症」について解説します。
前立腺肥大症で最も問題を感じやすい症状が、排尿症状です。通常、腎臓で生成された尿は、尿管を通って膀胱に蓄えられ、膀胱の容量がある程度いっぱいになると尿意が生じて、尿道から排出されます。
ところが、肥大化した前立腺によって膀胱と尿道が圧迫されると、尿をうまく排出できなくなってしまいます。これが、排尿症状です。
また、膀胱内に多量の尿が溜まることにより、膀胱が尿でいっぱいになってあふれるようにモレる「溢流性尿失禁」を引き起こすこともあります。
前立腺が肥大化して膀胱が圧迫されることにより、尿が膀胱内に溜まっていないのにもかかわらず尿意をもよおす、蓄尿症状が現れる場合もあります。日中にトイレに行く回数が増えたり、就寝後トイレに起きたりするようになるのは、蓄尿症状が原因であることも珍しくありません。
また、膀胱に尿が十分に溜まっていない状態でも、本人の意思と反して膀胱が収縮してしまう、過活動膀胱の症状が見られることもあります。
ただし、頻尿の症状は、必ずしも前立腺肥大症によってのみ引き起こされるとは限りません。膀胱炎や前立腺炎のほか、高血圧、脳卒中、パーキンソン病など、そのほかの原因が頻尿に関与している可能性もあるので、注意が必要です。
排尿後症状とは、排尿が終わった後に起こる症状を指します。代表的な症状は、排尿後も尿が残っているように感じてすっきりしないという残尿感です。
また、膀胱ではなく尿道に残った尿がモレる、「排尿後尿滴下」なども排尿後症状のひとつです。排尿後尿滴下では、尿を出し終えて下着をつけた後に、少量の尿がモレ、下着を汚してしまうといった現象が起こります。
前立腺肥大症そのものは、がん化や転移のおそれがないことから、必ず治療しなければならない病気ではありません。
ただし、前立腺の肥大化が進行するにつれ、膀胱や尿道がさらに圧迫されて、下記のような症状を引き起こすことがあります。
<前立腺肥大症の合併症の例>
・血尿
・尿失禁
・尿路感染症
・膀胱結石、尿管結石
・腎機能障害
・水腎症
前立腺肥大症は、重症化するまで目立った自覚症状が出ない場合もあります。下記の項目にあてはまるものが多いようなら、医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。
<前立腺肥大症のチェック項目>
・残尿感があり、排尿後に尿を出し切った感じがしない
・排尿に時間がかかる
・尿が細く、勢いがなくなった
・夜間を中心に尿意が生じやすい
・飲酒や冷気などの刺激で、一時的に尿が出にくくなる、もしくはまったく出なくなる
前立腺肥大症と思われる症状がある場合は、泌尿器科にて検査・診断を受けましょう。前立腺肥大症の検査にはいくつか種類がありますが、主な検査方法は下記の4点です。
超音波検査は、超音波で前立腺の大きさや形を計測する検査です。排尿直後に超音波を発信する器具(プローブ)を下腹部にあてるか、もしくは肛門から挿入して計測します。
この検査により、前立腺の正確な体積や残尿を測定できるため、前立腺肥大が生じているかどうか、残尿があるかどうかを判別可能です。
尿検査は、前立腺肥大症以外の病気の疑いがないかを判断するために行う検査です。尿検査により、尿路感染症や尿路結石、膀胱がんといった病気が判明することがあります。
尿流量(ウロフロメトリー)検査とは、尿の勢いや量、排尿にかかる時間などを測定する検査です。検査機器を内蔵した専用トイレで排尿することで、1秒間にどれだけの尿が排出されているかを計測でき、排尿障害の有無や程度がわかります。
PSA(前立腺特異抗原)検査とは、血液検査により、前立腺から血中にモレ出るPSAの値を計測する検査です。前立腺がんの可能性を調べるスクリーニング検査として用いられます。ただし、前立腺肥大症や前立腺炎によってもPSAの基準値を超えることがあります。一般的なPSAの基準値は4.0ng/mLで、この値を超えている場合は、前立腺癌かどうかを調べる検査がさらに必要です。
前立腺肥大症は、放置しておくと肥大が徐々に進行し、症状が悪化してしまう場合があります。症状の悪化を抑えるためにも、適切な治療を行いましょう。
前立腺肥大症の主な治療法は「薬物療法」「手術療法」「保存療法」の3つです。ここでは、それぞれの具体的な治療内容について解説します。
前立腺肥大症の治療には、基本的に薬物療法が用いられます。交感神経の働きをブロックし、前立腺の緊張をほぐす作用を持つ「α1受容体遮断薬」、テストステロンを分解する酵素の働きを抑え、前立腺を縮小させる効果のある「5α還元酵素阻害薬」、一酸化窒素(NO)の作用を増強し、前立腺や尿道の平滑筋弛緩を促す「ホスホジエステラーゼ5阻害薬」などを投与する治療が一般的です。
一定期間、薬物療法を続けても症状が改善しない場合、または尿路感染や腎機能障害などの重篤な合併症が生じている場合には、手術療法が用いられることもあります。
手術方法は肥大化した前立腺のサイズなどによって異なります。従来は、尿道から内視鏡を挿入して前立腺を切除する「経尿道的前立腺切除術」が行われることが多かったのですが、現在ではレーザーを用いた手術(HoLEP,PVP)やマイクロ波を用いた手術などが行われることもあります。前立腺のサイズが大きすぎる場合(概ね100g以上)は、稀ではありますが、開腹手術が行われることがあります。
薬物療法で十分な効果が見られず、年齢や健康状態などから手術療法が行えない場合には、生活指導を行ったり、前立腺に圧迫されて狭くなった尿道を拡張したりする保存療法という処置が行われることもあります。
具体的には、尿道にカテーテルを挿入し、持続的な排尿を促す尿道留置カテーテルなどがこれにあたります。
前述のとおり、前立腺肥大症のはっきりとした原因はわかっていません。一方で、予防に役立つとされる方法がいくつかあります。
下記に挙げる前立腺肥大症の予防法は、確実に前立腺肥大症を予防できるわけではありませんが、一定の効果が見込めるといわれています。
尿意を感じた際には、我慢せずトイレに行きましょう。膀胱に尿を溜めすぎると、排尿する力が弱まってしまうおそれがあります。無理をせず排尿するよう、習慣化することが大切です。
便通を整え、便秘にならないようにすることも、前立腺肥大症の予防法のひとつです。直腸に溜まった便は、尿道を圧迫する原因となり、結果的に尿が出にくくなる可能性があります。
消化の良い食品や繊維質の多い食品をとるなどして、便通を整えましょう。
適度な運動を行うことも、前立腺肥大症の予防に役立つとされています。長時間、姿勢を変えずにいると、下腹部に血液が溜まって前立腺に負担がかかってしまうもの。デスクワークや車の運転業務など、長時間座ったままになりやすい人は注意が必要です。
持病などで医師から運動を制限されている場合を除き、無理のない範囲で運動することをおすすめします。
健康的な食生活を心掛けることは、前立腺肥大症の予防にも役立ちます。栄養バランスの良い食事をとることで、自然な排尿や便通が促されるからです。コレステロールの多い食べ物は、男性ホルモンを活性化させ、前立腺肥大症を引き起こす原因になる場合があります。高コレステロールな食材の摂取を控え、食物繊維を多く含む野菜中心の食生活を心掛けましょう。
また、アルコールは血行を促進させる効果があることから、前立腺がむくんで尿道を圧迫する原因にもなりかねません。過度な飲酒は避け、適量を心掛けることが大切です。
適度に水分をとることも、前立腺肥大症の予防にとって大切なポイントです。コーヒーやお茶などカフェインを含む飲料は、腎臓の血流を促進して体内の水分を排出する利尿作用があるため、飲みすぎは控えましょう。また、水分を多くとれば良いというものではなく、適度な量を心掛ける必要があります。水分のとりすぎは夜中に尿意をもよおす原因にもなるので、ご注意ください。
体が冷えると血行が悪くなり、前立腺を含むさまざまな臓器に悪影響を及ぼすおそれがあります。夏場はエアコンの設定温度を下げすぎないようにしましょう。
また、寒い季節には特に下半身を冷やさないよう、ひざ掛けなどを使用することをおすすめします。
監修者のご紹介
井上 雅先生
日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本女性骨盤底医学会専門医、漢方専門医、日本性機能学会専門医。高知医科大学医学部医学科卒業、岡山大学大学院医歯学総合研究科卒業。岡山大学附属病院泌尿器科や岡山中央病院泌尿器科、岡山労災病院婦人科勤務を経て、2013年にみやびウロギネクリニックを開院。泌尿器科と婦人科の両面からの診療を行っている。
みやびウロギネクリニック
前立腺肥大症は、腹圧性尿失禁や溢流性尿失禁、排尿後尿滴下などの尿モレを引き起こすことも少なくありません。突然の尿モレには、下着のように身につけられる「アテント」シリーズがおすすめです。
「アテント ふだんの下着にも使えるパッド」は、<全面通気性シート>でさらっと快適な着け心地を実現した尿とりパッドです。<5点ズレ止めテープ>で、ふだんの下着※にしっかりと固定できます。45cmのロングサイズでモレの不安を軽減できることに加え、消臭機能付きなので尿モレ後のにおいも安心。前立腺肥大症に伴う、突然の尿モレに備えたい方におすすめです。
※体に密着する下着(パンツ)との使用をおすすめします。
「アテント ふだんの下着に使えるパッド」については、下記のページをご覧ください。
アテント ふだんの下着に使えるパッド
「アテント 超うすパンツ 下着爽快 シンプルホワイト」は、脚まわりにしっかりとフィットするパンツタイプの大人用紙おむつです。<ウエストすっきりカット>採用で、しゃがんだときに洋服の上からはみ出しにくいのが特長。しっかりと吸水でき、下着感覚で装着できる紙パンツを探している方におすすめです。
「アテント 超うすパンツ 下着爽快 シンプルホワイト」については、下記のページをご覧ください。
アテント 超うすパンツ 下着爽快 シンプルホワイト M
アテント 超うすパンツ 下着爽快 シンプルホワイト L
前立腺肥大症は早期に治療を開始すれば、薬物療法のみでも改善が見込めます。放置して肥大化が進むと手術が必要になることもあるため、なるべく早い段階で発見することが大切です。
また、尿モレが気になって日常生活に支障をきたすような場合には、治療と並行して尿とりパッドやうす型の紙パンツといった吸水ケア用品を使用するのもひとつの方法です。
排尿にまつわるさまざまな問題を引き起こす前立腺肥大症は、主に4つの症状に分けられます。尿を出しづらくなる「排尿症状」や、尿を溜められなくなる「蓄尿症状」、排尿後に残尿感などがある「排尿後症状」、尿路感染症、膀胱結石、尿管結石などの「合併症」が現れた場合には、早めに医療機関の受診をおすすめします。
前立腺肥大の原因は明らかになっていない部分も多いものの、男性ホルモンが前立腺の細胞を増殖させる要因になっていると考えられています。加齢とともにホルモンの分泌量などが変化して、前立腺肥大症を発症しやすくなると考えられていますが、若い世代でも発症することがあるため注意が必要です。
前立腺肥大症の原因は明らかになっていない点も多く、明確な予防法も確立されていないのが実情です。一方で、血行を良くすることや、自然な排尿・排便を促すことが予防に役立つとされています。
例えば、尿を我慢しないことや便通を整えること、適度な運動を行うこと、健康的な食生活を心掛けること、適度に水分をとること、体を冷やさないように注意することなどは、前立腺肥大を予防する上で大切なポイントです。
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