記事公開:2024.11.14
在宅介護を行う家族は、介護を受ける方に少しでも快適に過ごしてほしいと願っています。特に、介護を受ける方の部屋の環境を整えることは、1日の多くの時間を室内で過ごす、介護を受ける方の心の安定にもつながるでしょう。
在宅介護のために部屋の環境を整える際は、介護を受ける方が心からくつろげる場所であることはもちろん、介護をする方の負担をできるだけ減らす工夫をすることも重要です。
今回は、自宅で介護を行う際の介護しやすい部屋の特徴や部屋づくりのポイントのほか、部屋のリフォームなどに適用できる介護保険について解説します。
介護しやすい部屋とは、介護を受ける方が快適に過ごせる部屋(環境)であることはもちろん、介護をする方にとっても最適なレイアウトの部屋のことをいいます。
在宅介護を行う場合、介護する部屋の選び方やレイアウトが重要です。介護を受ける方は一日中部屋で過ごすこともあるでしょう。そのため、「窓から外の景色が見える」「風通しが良い」「家族の存在を感じられる」など、介護を受ける方が心身ともに健康的に過ごせる部屋を選ぶ必要があります。さらに、介護のレベルに合わせて、安全性に配慮したレイアウトを考えることも大切です。
例えば、介護を受ける方が自分でトイレまで行きたいという意思があるのであれば、トイレまでの動線を整える必要があります。また、移動の際に歩行器や車椅子が必要な場合は、室内にそれらを置くスペースなどを確保しなければなりません。あくまで、介護を受ける方の意思を尊重した上で、部屋のレイアウトを考えることが重要です。
さらに、介護のしやすさを考慮してレイアウトすることも大切になります。介護をする方の動線が確保され、スムーズに介護を行えることで、結果的に介護を受ける方の負担を減らすことができ、快適な暮らしにつながります。
在宅介護を行う際は、介護を受ける方の心身の健康や安全に考慮して、部屋づくりを行う必要があります。
では、具体的に介護しやすい部屋には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、介護しやすい部屋の4つの特徴をご紹介します。
介護する部屋には、介護用ベッドやポータブルトイレ、歩行器などを置くスペースが必要になる場合があるため、それらの福祉用具を設置できる十分な広さの部屋を選ぶ必要があります。
また、介護する方が部屋の中をスムーズに動けるように、ベッドまわりなどのよく使用するエリアには、スペースの余裕を持たせることも重要です。
なお、特別養護老人ホームにおいては、1人あたりの居室の床面積は10.65平方メートル以上が基準となっています。そのため、自宅の介護部屋の広さも、それと同等の6~8畳を目安にするといいでしょう。
介護を受ける方が車椅子を使用する場合もあるため、介護部屋には不自由なく移動できる動線を確保する必要があります。
ただし、部屋は広ければ広いほど良いというわけではありません。例えば、部屋が広すぎると、介護を受ける方が自身で歩いて移動する際に疲れてしまったり、転倒のリスクが高まったりする可能性もあります。介護を受ける方の状況に合わせて、部屋の広さを選ぶことが大切です。
介護部屋から、トイレや浴室、リビングといった生活に必要な場所へ行きやすいことも重要なポイントです。介護部屋の位置を決める際は、生活に必要な場所に近く、途中に段差などがない部屋を選びましょう。
特にトイレは1日に何度も使用する上、寝起きなど完全に目が覚めていない状況で使用する場合もあります。移動距離が長いと転倒のリスクが高まる上、トイレに間に合わなくなってしまうケースもあるので、トイレに近い部屋を検討することをおすすめします。
介護を受ける方は、多くの時間を自分の部屋で過ごします。日当たりが良い部屋は昼夜の区別がつきやすいため、介護を受ける方の健康や気分の向上につながります。窓から外の景色が見渡せると、気分転換にもなるでしょう。
また、風通しが良い部屋を選ぶことも大切です。閉鎖的な空間だと空気が滞り、介護を受ける方の気分が沈んだり、感染症のリスクが高まったりする可能性があります。空気清浄機を導入する方法もありますが、できる限り定期的に換気を行い、室内に新鮮な空気を取り入れることを意識してください。
介護を受ける方の心身の健康に考慮した、介護しやすい部屋を造るには、どのようなポイントに注意すればいいのでしょうか。
ここでは、寝室、トイレ、浴室、階段・廊下を、介護しやすい環境に整えるためのポイントを解説します。
介護を受ける方の状況にもよりますが、寝室は介護を受ける方が長い時間を過ごすことの多い場所です。そのため、介護を受ける方が、心身ともにリラックスできる環境づくりを心掛けてください。
リビングやトイレなどに移動する際に、寝室の床が滑りやすかったり、段差があったりすると転倒のリスクが高まります。そのため、床はバリアフリーで滑りにくいフローリングが望ましいでしょう。
寝具については、介護を受ける方の状況によって、ベッドかふとんかを検討する必要がありますが、起き上がり、立ち上がりといった動作がしやすいよう、ベッドを使用することが多いです。ベッドは、介護を受ける方が気持ち良く過ごせるよう、外の景色やテレビが見やすい位置に配置することをおすすめします。
また、介護を受ける方の状況によっては、介護をする方がベッドまわりを移動して、オムツ交換や体位変換などを行うこともあります。そのため、ベッドと壁のあいだに人が1人通れるスペースを設けてください。介護を受ける方に急な不調があった場合も、ベッドまわりに十分なスペースがあると、必要な医療機器を迅速に運び込めるので、スムーズな対応が可能となります。
介護を受ける方の使いやすさを考えると、トイレは洋式便器がおすすめです。転倒などのリスクを減らすために、便器から手の届く位置に手すりをつけるといいでしょう。手すりはできれば両側に、介護を受ける方の身長に合わせて設置します。
トイレのドアは、引き戸にすることをおすすめします。引き戸は車椅子の方でも開閉しやすく、ドアの開閉時にスペースが必要ないため、スムーズに出入り可能です。また、万が一トイレ内で介助を受ける方が転倒した際にも、外から容易に開けることができます。
さらに、転倒した際などに駆け付けられるよう、トイレ内の手が届きやすい場所に緊急ブザーを取り付けると、より安全な空間となります。
トイレと同様の理由で、浴室の出入口も引き戸がおすすめです。
また、浴室の床は特に滑りやすいので、転倒防止用の手すりやバスボード、滑り止めマット、シャワー用椅子などをそろえるといいでしょう。
介護を受ける方の部屋は、移動時にできるだけ階段を使用しないで済む場所を選ぶのが大前提ですが、介護を受ける方の状況や、家の造りによっては階段を使うことも想定されます。
階段や廊下には、手すりや足元照明などをつけましょう。往路・復路で使用できるよう、階段や廊下の手すりは両側につけることをおすすめします。
また、介護を受ける方が転倒や転落をしないよう、階段には滑り止めや、段差をわかりやすくするための目印などを設置します。廊下はできる限り段差をなくし、電気製品のコード、ガスのホースなどのコード類は、壁や床の隅に固定してください。
なお、玄関マットは滑りやすいためおすすめしませんが、敷く際は両面テープなどで床に固定して動かないように工夫します。
在宅介護を始める際、介護のためにリフォームをしたい場合や、介護ベッド・車椅子といった福祉用具を導入したい場合には、介護保険サービスを利用できるケースがあります。
ここでは、在宅介護に適用できる介護保険で受けられるサービスについて見ていきましょう。
なお、介護保険のサービスの適用内容は、変更となる可能性があります。リフォームや福祉用具の導入を検討する場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するほか、厚生労働省の「福祉用具・住宅改修」のページをご確認ください。
※2024年11月時点の情報
在宅介護のために自宅をリフォームする場合、下記の条件を満たせば居宅介護住宅改修費を受給できます。住宅改修費支給限度額は要介護度に関係なく、一人当たり20万円までです。そのうち、費用の1割~3割は所得に応じた自己負担となるため、最大18万円(1割負担者)、16万円(2割負担者)または14万円(3割負担者)が介護保険から支給されます。
ただし、工事費用が20万円を超えた場合、超えた部分の工事費用は全額自己負担となります。
なお、別の住宅に引っ越した時や要介護度が3段階以上上がったときは、改めて20万円を上限として利用することが可能です。
・要介護認定を受けている
・自治体によって支給が適当だと判断された
・手すりの取り付け
・段差の解消
・床や通路面の材質変更(滑りの防止や移動円滑化の目的)
・引き戸等への扉の取り替え
・洋式便器等への便器の取り替え
・その他、上記の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
1. ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談
2. 施工事業者の選択・見積もり依頼
3. 工事前に自治体へ申請
4. 自治体の審査通過後、工事の施工
5. 工事後に自治体へ改修費を支給申請
6. 住宅改修費の支給
福祉用具貸与は、介護認定を受けている方を対象に、全13品目の福祉用具をレンタルできる介護保険サービスです。介護度によって、レンタルできる福祉用具が一部に限定されるため、事前の確認が必要です。まずは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しましょう。
なお、レンタル可能な13種類の福祉用具は、下記のとおりです。
・特殊寝台
・特殊寝台付属品(マットレス、サイドレールなど)
・車椅子
・車椅子付属品(クッション、電動補助装置など)
・床ずれ防止用具
・体位変換器
・手すり
・スロープ
・歩行器
・歩行補助杖
・移動用リフト(つり具の部分を除く)
・認知症老人徘徊感知機器
・自動排泄処理装置
なお、レンタルで使用するには抵抗のある、排泄や入浴に関わる福祉用具は、介護保険を利用して購入することが可能です(特定福祉用具販売)。購入希望の場合は、担当のケアマネジャーや販売事業者の福祉用具専門相談員に相談してください。また、指定を受けていない事業者から購入した場合は、介護保険が適用されないため注意が必要です。
購入時に介護保険が適用される福祉用具は、下記のとおりです。
・腰掛便座
・自動排泄処理装置の交換可能部品
・排泄予測支援機器
・入浴補助用具
・簡易浴槽
・移動用リフトのつり具の部分
・スロープ
・歩行器
・歩行補助杖
なお、2024年4月1日より、「スロープ」「歩行器」「歩行補助杖」については、貸与と購入の選択制が導入されています。
監修者のご紹介
中谷ミホさん
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士、保育士。福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在は介護業界での経験を活かし、介護に関わる記事を多く執筆。介護・福祉関連書籍の監修も手掛けている。
介護する方も介護を受ける方も、毎日を快適に過ごすためには、一人ひとりの状況や環境に合わせて、介護保険サービスや介護用品・福祉用具を上手に利用することが大切です。
介護にやさしく寄り添う「アテント」シリーズは、介護を受ける方にとっても介護をする方にとっても、頼れる紙おむつをラインナップ。さまざまな排泄のお悩みに役立ちます。
「アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス」は、約5回分の※1吸収量を持つパンツタイプの大人用紙おむつ。昼と夜の交換でも、長時間モレずに安心です。<背モレ防止ポケット>で、就寝時や仰向け寝でも背中からのモレを軽減します※2。<すっきりストレッチライン>で前側とおしり部分のゴワつきを解消して、しっかりフィット。脚まわりには<片手で上げ下げらくらくギャザー>を採用しているので、ご本人もはきやすく、介護をする方もはかせやすくなっています。
※1 1回の排尿量150mlとして。大王製紙測定方法によるもの。
※2 大王製紙従来品比。大王製紙測定方法による。
「アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス」については、下記のページをご覧ください。
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Mサイズ 男女共用
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Lサイズ 男女共用
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Mサイズ 女性用
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Lサイズ 女性用
「アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ」は、介助があれば座れる方や寝て過ごす時間が長い方向けのテープタイプの大人用紙おむつです。背中にぴったり沿う<背モレ防止ポケット>で、背中からのモレを防止。さらに<横モレ防止ギャザー>が脚まわりにフィットして、尿モレを軽減します。全面に通気性シートを採用し、さらっと快適に過ごせるのが特徴です。
「アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ」については、下記のページをご覧ください。
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ S
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ M
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ L
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ LL
在宅介護では、介護を受ける方の安全が確保された部屋で、快適に過ごしてもらうことが大切です。同時に、介護のしやすさも考慮したレイアウトにする必要があります。
介護をする方がスムーズに介護できることで、結果的に介護を受ける方の快適な暮らしにもつながります。介護おむつを選ぶ際も、介護する方と介護を受ける方、双方のストレスを軽減できるものを選んでください。
介護しやすい部屋とは、介護を受ける方が快適に過ごせる環境であることはもちろん、介護をする方にとっても最適なレイアウトの部屋のことをいいます。
具体的には、「部屋の広さが十分である」「部屋の中を不自由なく移動できる」「生活に必要な場所との距離が近い」「日当たりや景色、風通しが良い」といった特徴を備えた部屋を指します。
介護しやすい寝室を造る上で、床は転倒防止のためにバリアフリーのフローリングが望ましいでしょう。寝具は、起き上がったり立ち上がったりがしやすい、ベッドの使用をおすすめします。
なお、ベッドをレイアウトする際は、介護を受ける方が気持ち良く過ごせるよう、外の景色やテレビが見やすい位置に配置します。また、介護する方がベッドまわりを移動しやすいよう、ベッドと壁のあいだに人が1人通れるスペースを設けてください。
在宅介護のために自宅をリフォームする際に、介護を受ける方が要介護認定を受けており、自治体によって支給が適当だと判断された場合は、居宅介護住宅改修費を受給できます。
所得に応じて、リフォームにかかった費用の7~9割が支給されますが、対象となる工事費の上限は20万円のため、支給額の上限は18万円です。
画像提供/PIXTA