記事公開:2024.11.14
病気やケガ、寝て過ごすことが多いなどの理由で入浴やシャワーが難しい方には、「清拭(せいしき)」を行って体の清潔を保ちます。
特に、介護を受ける方は入浴をする機会が減ってしまいがちなので、清拭は皮膚トラブルを避けるための大切な介護ケアのひとつです。
今回は、介護を受ける方にとっての清拭の効果や、正しく安全に清拭を行うための手順とポイントを紹介します。
清拭とは、介護を受ける方が入浴できない場合に、蒸しタオルなどで体を拭くことを指します。介護の場合、毎日続けて入浴介助を行うことも難しいため、入浴を行わない日、訪問入浴サービスがない日には、清拭によって体の清潔を保つことが大切です。
清拭には、全身を拭く「全身清拭」と、体の一部を拭く「部分清拭」があり、清拭を受ける方の体の状態に合わせて適切な方法を選びます。
なお、全身清拭の場合は肌を露出する時間が長くなるため、介護を受ける方にとっては体が冷えたり、ストレスを感じたりと体力の消耗につながることがあります。また、拭く箇所が多いほど、介護をする方の負担も大きくなりがちです。清拭の前に必要な用具を準備しておき、時間をかけずに手際良く行いましょう。
清拭の主な目的は、入浴ができない方の体を清潔に保つことや、皮膚トラブルの予防ですが、清拭の効果はそれだけではありません。清拭には下記のような効果があるとされています。
<清拭の効果>
・皮膚や爪の状態を観察でき、異常の早期発見につながる
・皮膚を清潔に保つことで、細菌感染を予防する
・全身の血行を促進し、関節の動きが悪くなる拘縮(こうしゅく)、床ずれなどを予防する
・腹部を拭くことで腸の動きが促され、便秘を予防する
・体の清潔を保つことで、爽快感やリラックス効果といった心理的な好影響がある
・爽快感やリラックス効果が安眠につながる
清拭は、介護を受ける方にとって体の状態を良くするだけでなく、リフレッシュの機会になります。また、介護をする方にとっても、介護を受ける方の体の状態をくまなくチェックできるチャンスです。
特に床ずれは、背中やおしり、腰、かかとなど普段見えないところにできやすいため、清拭の際に皮膚の色、また内出血や水ぶくれができていないかをしっかり確認しましょう。
清拭を行う際には、体を拭くタオル以外にもいくつか必要なものがあります。清拭をスムーズに行うためにも、使いやすいものをあらかじめ用意しておくといいでしょう。必要なものがそろっているか、下記のリストをチェックしてみてください。
<清拭時に用意するもの>
・バケツ
・洗面器2個(石鹸用、拭き取り用)
・バケツや洗面器の下に敷くビニールシート
・55℃くらいの熱めのお湯(洗面器2杯分と追加用のやかん1杯分程度)
・バスタオル
・タオル数枚(蒸しタオル用と水気拭き取り用)
・ガーゼ
・石鹸または清拭剤(必要に応じて用意)
・着替え
・ゴム手袋、保湿剤、爪切り、温度計、体温計など(必要に応じて用意)
清拭を行うときは、事前に介護を受ける方の体温を測って体調を確認し、体調が優れない場合は部分清拭にとどめるなどの対応が必要です。たとえ体調が良くても、食事の前後1時間やリハビリなどで体力を消耗しているときは避け、時間調整してください。清拭を行う前には、これから清拭を行うことを伝えて、介護を受ける方の了承を得ることも必要です。
また、清拭を中断すると体が冷えてしまうため、清拭を始める前に介護を受ける方の排泄を済ませておきましょう。
それでは、清拭の基本的な手順を紹介します。介護を受ける方の体の状態にもよりますが、全身清拭の場合、概ね下記のような流れで行います。
<全身清拭の手順>
1. 室温を23~25℃に調整し、カーテンや窓、ドアを閉める
2. 介護を受ける方が寒くならないよう、全身をバスタオルで覆い、介護をする方の手を温めておく
3. 蒸しタオルで体を拭く(必要に応じて石鹸や清拭剤を使用)
4. 乾いたタオルで水気を拭き取る(「3」と「4」を繰り返す)
5. 顔→首→手・腕→胸部→腹部→背部→おしり→足→陰部の順番に拭く
蒸しタオルは、皮膚にあたった際にお風呂の温度と同じくらいの40~45℃程度を保てるのが理想です。タオルを約50~55℃のお湯で温めるか、水でぬらして絞ったタオルを500Wの電子レンジで50秒程温めて蒸しタオルを作ってください。なお、蒸しタオルはすぐに冷めてしまうため、使うまでビニール袋に入れて保温しましょう。
また、一度拭いたタオルの面を、再び別の部位で使うことはしません。タオルを折りたたみ、部位ごとにタオルの新たな面で拭いてください。
すべて拭き終えたら、全身の皮膚の状態を確認し、必要に応じて保湿剤を塗布します。最後に、用意した着替えを着てもらい、体調を確認します。
体を拭くときは、部位ごとに体の構造を考慮した拭き方のポイントがあります。主要な部位の拭き方のポイントは、下記のとおりです。
顔を拭く際は、目頭から目尻の方向へ拭きます。目の周りの皮膚はデリケートなので、力の入れすぎに注意してください。乾いた目やには、蒸しタオルで温めてから拭くと取れやすくなります。
続いて、額の中心から外側に向かって拭き、鼻は鼻筋に沿って上から下に、頬は口元付近から頬骨に向けて拭きます。顎から首にかけては、しわを伸ばしながら横向きに拭きます。耳や耳の後ろも忘れずに拭きましょう。
腕と手は、血行を促進するため末端から中心(心臓)に向かって拭いていきます。指先、手の甲、すべての指のあいだを拭き、次に手首から腕の付け根に向かって拭きます。
ひじの内側、脇の下は汗をかきやすく、汚れも溜まりやすいので、しっかり拭き取ってください。ひじは関節を支えながら拭くのがおすすめです。
胸とおなかを拭く際は体を冷やさないよう、拭いていない部位をバスタオルなどで覆っておきましょう。胸部は、鎖骨、胸骨、肋骨に沿って内側から外側方向に拭きます。女性の場合、乳房のまわりに円を描くように拭き、汗をかきやすいアンダーバスト周辺もしっかり拭きます。
おなかは圧迫しないようにして、おへそのまわりに円を描くようにやさしく拭くのがポイントです。
脚と足の指を拭く際は、腕・手と同じように末端から中心に向かって拭きましょう。拭いていないほうの脚は、冷えないようにバスタオルなどで覆っておきます。ひざを立ててもらい、足首からひざに向かって拭いていき、次に、ひざから脚の付け根に向けて拭きます。ひざの裏、足のすべての指のあいだ、足の裏も丁寧に拭いてください。
背中と腰、おしりといった背面を拭く際は、介護を受ける方に横向きで寝てもらいます。姿勢が苦しくないかを確認しながら、まずは腰から肩に向けて拭いていきます。背中は広いので、下から上に向かって大きな動きで拭きましょう。おしりは外側から中心に向かって、片側ずつ円を描くように拭いてください。
陰部と肛門を拭く際は、陰部・肛門用の専用タオルを用意します。デリケートな部位なので、可能であればご本人に拭いてもらいましょう。介助が必要な場合は、声かけをしっかりした上で手際良く清拭を行うなど、介護を受ける方の自尊心を傷付けない配慮が必要です。男性であれば亀頭部→陰茎→陰嚢→肛門の順に拭き、しわのあいだの汚れも拭き取ります。女性は恥骨から肛門に向けて一方向に拭き、大陰唇・小陰唇とその周辺の汚れを丁寧に拭き取ります。男女とも、汚れが多い場合は陰部用の石鹸などを使うのがおすすめです。
清拭を行う上で、介護をする方が心得ておきたいポイントがあります。清拭の効果を高め、より心地良く清拭を受けてもらうためには、介護を受ける方との信頼関係を築くことが大切です。そこで、下記の5点に注意しましょう。
清拭を行うには、介護を受ける方の体を露出させる必要があるため、恥ずかしいと感じさせないようプライバシーに配慮する必要があります。清拭を行う前には窓やカーテンを閉め、ほかの家族からも見えないように部屋のドアを閉めておきます。ドアがない場合は、つい立てなどを用意するといいでしょう。
清拭を行っているあいだは拭いている部位だけを露出し、それ以外の部位はバスタオルなどで覆ってください。
清拭を行うときは肌を露出するため、介護を受ける方の体を冷やさない工夫が必要です。できるだけ日中の暖かい時間帯に行い、室内は22~25℃程度に暖めておきます。介護をする方の手も忘れずに温めておきましょう。服を脱いだ後は、タオルケットやバスタオルで体を覆い、露出する範囲を少なくしておきます。冷えが気になる場合は、上半身と下半身に分けて衣服を脱いでもらうのもおすすめです。
なお、皮膚に残った水分は冷えだけでなく乾燥の原因にもなるため、蒸しタオルで拭いた後はすぐに乾いたタオルで水気を拭き取ってください。
また、清拭には入浴のような保温効果はないので、清拭が終わったらすぐに服を着ることが大切です。
清拭をする際は、蒸しタオルで皮膚を強くこすらないことにも注意が必要です。皮膚を強くこすると必要な皮脂まで落としてしまい、肌が乾燥しやすくなる上、介護を受ける方が痛みを感じることもあります。
また、高齢者や皮膚が弱い方の場合は、こするだけで傷つけてしまう可能性も。介護を受ける方の皮膚の状態や好みの強さを確認しながら、その人に合った強さで拭きましょう。
清拭を行いながら、皮膚のトラブルがないかを確認することも大切なポイントです。皮膚トラブルの確認は、清拭の目的のひとつでもあります。体を冷やさないよう、急ぐ気持ちが出てきてしまうかもしれませんが、肌の乾燥や発赤、むくみ、床ずれがないかなど、皮膚の観察も忘れずに行ってください。
また、疾患が見つかった場合は早めに医師に相談し、悪化の予防や治療につなげることが大切です。
体の汚れやすい部位は、毎日清拭を行うのが理想です。特に、陰部・肛門は汚れやすいため、毎日の部分清拭が必要になります。一方で、汚れにくい部位であれば神経質になりすぎず、数日おきに全身清拭が行えればいいという気楽な気持ちでいることも大切です。
たくさんのお湯やタオルを準備するだけでも大変な負担となるため、拭き取りシートなどのケア用品を活用することも検討してください。
監修者のご紹介
中谷ミホさん
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士、保育士。福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在は介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆。介護・福祉関連書籍の監修も手掛けている。
清拭は、事前準備や後片付けも含めると、たいへんな手間と時間がかかる介助です。すぐに体を拭いてあげたいけれど、準備をする時間がない…。そんなときは「アテント」のウェットタオルシリーズがおすすめです。
「アテント ふきとりぬれタオル」は、使い捨てタイプのぬれタオルです。手のひらより少し大きい200×220mmの手頃なサイズで、からだふき・おしりふき・手の汚れ・足の汚れなど、使う場所を選びません。お肌をいたわるアロエエキスとヒアルロン酸を配合。ノンアルコールでパラベン無配合なので、体のどこに使っても安心です。たっぷり70枚入りで、枚数を気にせずお使いいただけます。
「アテント ふきとりぬれタオル」については、下記のページをご覧ください。
アテント ふきとりぬれタオル
「アテント 流せる おしりふき」は、トイレに流せる大人用おしりふきです。プラスチックの蓋付きで開け閉めも楽々。片手でサッと取り出せます。アロエエキスとヒアルロン酸配合で、おしりの乾燥を防ぎます。また、ノンアルコール・パラベン無配合なので、敏感肌でも安心。手や体にも使えます。ラインナップは、無香料とやさしいせっけんの香りの2種類です。
「アテント 流せる おしりふき」については、下記のページをご覧ください。
アテント 流せる おしりふき 無香料
アテント 流せる おしりふき やさしいせっけんの香り
「アテント からだふき」は、アロエエキスとヒアルロン酸を配合した、お肌にやさしいからだふきです。300×300mmの大判サイズ&やわらかく厚手のシートなので、1枚でしっかり体を拭くことができます。お肌への負担が少なく、無香料・ノンアルコール・パラベン無配合。たっぷり30枚入りで、毎日お使いいただけます。
「アテント からだふき」については、下記のページをご覧ください。
アテント からだふき
清拭は、介護を受ける方の体を清潔に保ったり、皮膚疾患の予防につながったりするだけでなく、心身のリフレッシュ効果も期待できる介助のひとつです。清拭の手順やポイントを覚えて、安全で効果的なケアを行いましょう。
また、介護をする方、介護を受ける方の双方が負担を感じることなく清拭ができるように、使い捨てのからだふきシートなどのアイテムも上手に活用してください。
清拭は、以下の手順で行います。
1. 室温を22~25℃に調整し、カーテンや窓、ドアを閉める
2. 介護を受ける方が寒くならないよう、全身をバスタオルで覆い、介護をする方の手を温めておく
3. 蒸しタオルで体を拭く(必要に応じて石鹸や清拭剤を使用)
4. 乾いたタオルで水気を拭き取る(「3」と「4」を繰り返す)
5. 顔→上半身→下半身→背部→陰部の順番に拭く
清拭を行う際は、体を露出させる必要があるため、受ける方が恥ずかしいと感じないよう、プライバシーに配慮が必要です。また、肌の露出に伴って、体を冷やさないようにすることが大切です。
清拭を受ける方が高齢者の場合、皮膚を強くこすると必要な皮脂まで落としてしまい、肌が乾燥しやすくなる上、痛みを感じる可能性があることに注意しましょう。清拭をしながら、皮膚のトラブルがないかも確認してください。
汚れやすい部位の場合、清拭は毎日行うのが理想です。特に、陰部・肛門は汚れやすいため、毎日の部分清拭が必要になります。
ただし、汚れにくい箇所であれば神経質になりすぎず、数日おきに全身清拭が行えればいいという気楽な気持ちでいることも大切です。たくさんのお湯やタオルを準備するだけでも大変な負担となるため、拭き取りシートなどのケア用品を活用することも検討してみましょう。
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