記事公開:2024.12.20
咳やくしゃみなど、おなかに力が入ったタイミングで、尿モレを経験したことがあるという方は決して少なくないでしょう。
これは、「腹圧性尿失禁」というもので、体の仕組み上、男性より女性に多く見られるタイプの尿モレです。
今回は、腹圧性尿失禁の症状と主な原因のほか、予防改善のために有効な対策と、おすすめの対処法を解説します。
咳やくしゃみをした際に尿モレが起きてしまう場合、腹圧性尿失禁というタイプの尿モレである可能性が考えられます。腹圧性尿失禁とは、腹腔内に圧力がかかったときに起こる尿モレのことです。
腹圧性尿失禁の場合、咳やくしゃみに限らず、笑ったり、重い物を持ち上げたり、走ったり、跳んだりするときにも、おなかに力が入って尿モレが起こることがあります。いつ尿モレが起こるかわからない不安で、日常生活に影響が出てしまう人もいるのではないでしょうか。
腹圧性尿失禁は、男性より女性に多く見られます。これは、男性と女性の体の構造の違いに加え、女性は「骨盤底筋」という筋肉群がゆるみやすいことが関係しています。
骨盤底筋は、恥骨や尾骨、仙骨などの骨を支えるとともに、骨盤内の膀胱や直腸、子宮などの内臓を正しい位置に保つ役割を持つ筋肉群です。また、骨盤底筋は、尿道を締めて尿モレを防ぐ役割も担っています。この骨盤底筋がゆるんでしまうと、尿道を締める力が弱まってしまうのです。
女性の場合、妊娠時に多く分泌されるホルモンの作用や、出産時の骨盤底筋の損傷、更年期のホルモンバランスの変化による筋肉の衰えなどにより、骨盤底筋がゆるみやすく、男性より腹圧性尿失禁になりやすい傾向があります。
腹圧性尿失禁の症状が重くなると、立ったり座ったりといった動作で尿モレを起こすことも。咳やくしゃみ以外にも、長時間歩いた際に尿モレが起こる、重い荷物を持った際に尿モレが起きるといった場合は、腹圧性尿失禁が疑われます。
腹圧性尿失禁は、体の構造上、男性より女性のほうが多く発症します。加えて、以下のような特徴がある人は、腹圧性尿失禁になりやすいといえます。
妊娠・出産による骨盤底筋へのダメージが、尿モレの原因になることがあります。妊娠中の子宮の重みは骨盤底筋に負荷を与えますし、分娩時には骨盤底筋が傷ついてしまうことも。
骨盤底筋の損傷は時間とともに自然に修復しますが、完全には元に戻らない場合もあります。そのため、妊娠・出産経験がある人は腹圧性尿失禁を起こしやすいといえるでしょう。
肥満状態だと、常に骨盤底筋にかかる負荷が大きくなり、咳などをした際の腹圧も強くなるので、尿モレが起こりやすくなります。
日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会によって作成された「女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]」では、肥満がある場合の体重減少が、奨励グレードA(行うよう強くすすめられる)の行動療法に挙げられており、減量により尿モレが減ったという論文も多数あります。
便秘になると、大腸に溜まった便に膀胱が圧迫されて、尿意を我慢できなくなったり、尿モレを起こしてしまったりすることがあります。
また、排便のたびに過度にいきむことで、骨盤底筋に大きな負担がかかり、腹圧性尿失禁のリスクが高まるとされています。
「女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]」には、喫煙が腹圧性尿失禁のリスクを増大させる可能性や、実験的にニコチンが膀胱収縮を引き起こすことが報告されているとの記載があります。
腹圧性尿失禁かなと思ったら、まずは医療機関を受診して、医師に相談することが大切です。多くの場合、問診のほか、いくつかの体に負担のない検査だけで診断がつきます。腹圧性尿失禁の診断で行われる主な検査は、以下のとおりです。
検尿は、尿の成分を調べる検査です。尿にたんぱくや糖が出ていないか、尿路感染症の有無などを調べます。
パッドテストは、尿モレの重症度を判定する検査です。60分間体を動かすあいだに、どれぐらい尿モレがあったかを計測します。
腹部エコー検査は、超音波で内臓の様子を調べる検査です。膀胱内の腫瘍や結石・尿管結石の有無などをチェックします。
医療機関での検査の結果、腹圧性尿失禁と診断された場合、治療が始まります。腹圧性尿失禁の治療法は、大きく行動療法、薬物療法、手術療法の3種類です。それぞれの治療法について解説します。
行動療法は、骨盤底筋を鍛えたり、肥満の場合は減量したりする治療法です。骨盤底筋トレーニングは道具も必要なく、空き時間を利用して自分でできるのが特徴。2~3ヵ月続けると、7割ぐらいの人には効果が見られるとされています。症状が改善した後も、引き続き行うことがポイントです。
薬物療法は、尿道や腟、肛門を締める作用を持つ薬を投与することで、腹圧性尿失禁を改善する治療法です。人によっては、動悸や手指の震えなどの副作用が出ることもあります。根本的な治療ではなく、行動療法と併用される補助的な治療法と考えてください。
手術療法は、行動療法や薬物療法では腹圧性尿失禁が改善しなかった場合や、尿モレの症状が重い場合の選択肢です。一般的に、ポリプロピレンメッシュのテープで尿道を支える「TVT手術」や「TOT手術」が行われます。
行動療法のひとつである骨盤底筋トレーニングは、腹圧性尿失禁の治療と改善に欠かせないものです。また、尿モレの予防にも効果があります。
骨盤底筋トレーニングは、おなかに力を入れずに、肛門・腟・尿道を締めたりゆるめたりする簡単な体操で、寝ころんだ姿勢や椅子に座った姿勢など、さまざまな体勢で行うことができます。1回5分程度の運動を1日数回行うだけなので、日常生活に気軽に取り入れられるでしょう。
ここでは、骨盤底筋のトレーニング方法を、姿勢ごとにご紹介します。
仰向けの姿勢で行う骨盤底筋のトレーニングは、朝晩の布団の中で行えるため、習慣化しやすいでしょう。トレーニングの手順は以下のとおりです。
<仰向けの姿勢で骨盤底筋トレーニングを行う手順>
1. 仰向けに寝て両ひざを立て、ひざのあいだはこぶし1つ分くらい開けます。
2. 息を吐きながら、おならを我慢するように肛門を締めます。
3. そのまま女性は腟と尿道を、男性は陰茎の根本を締め、胃のほうへ引き上げるイメージで力を入れます。
4. 5~10秒キープした後、力を抜いてリラックスします。
5. 「2」~「4」を1セットとして、5セット以上行います。
椅子に座った姿勢で行う骨盤底筋のトレーニングは、電車やバスなどの移動時間や、テレビなどを見てくつろいでいる時間に行えるのが特徴。トレーニング手順は以下のとおりです。
<椅子に座った姿勢で骨盤底筋トレーニングを行う手順>
1. 背筋を伸ばして椅子に浅く腰かけます。
2. 足の裏を床につけて、両足は肩幅程度に開き、肩の力を抜きます。
3. 肛門、尿道、腟(男性は陰茎の根本)を締め、全体を引き上げるイメージで力を入れます。
4. 5~10秒キープした後、力を抜いてリラックスします。
5. 「3」~「4」を1セットとして、5セット以上行います。
テーブルを支えにして行うトレーニングは、仕事の休憩中や料理の途中にキッチンで行うこともできます。トレーニングの手順は以下のとおりです。
<テーブルを支えにした姿勢で骨盤底筋トレーニングを行う手順>
1. 腰の高さぐらいのテーブルのそばに立ち、足を肩幅程度に開きます。
2. 両手をテーブルにつき、体重を腕にかけます。
3. 肛門、尿道、腟(男性は陰茎の根本)を締め、全体を引き上げるイメージで力を入れます。
4. 5~10秒キープした後、力を抜いてリラックスします。
5. 「3」~「4」を1セットとして、5セット以上行います。
骨盤底筋トレーニングについては、下記のページをご覧ください。
骨盤底筋トレーニングで不意の尿モレ対策!毎日続けて不安を解消
監修者のご紹介
井上 雅先生
日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本女性骨盤底医学会専門医、漢方専門医、日本性機能学会専門医。高知医科大学医学部医学科卒業、岡山大学大学院医歯学総合研究科卒業。岡山大学附属病院泌尿器科や岡山中央病院泌尿器科、岡山労災病院婦人科勤務を経て、2013年にみやびウロギネクリニックを開院。泌尿器科と婦人科の両面からの診療を行っている。
みやびウロギネクリニック
尿モレ対策と並んで重要なのが、生活に支障をきたさないよう、現在起きている尿モレにしっかり対処することです。「アテント」シリーズは、吸水パッドから夜用の紙おむつまで、豊富な吸水ケア用品をラインナップしています。女性の方には「ナチュラ」シリーズもおすすめ。吸収量や使用シーンで選べる、さまざまな形状・サイズをラインナップし、尿モレの不安のない快適な毎日をサポートします。
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※1 体に密着する下着(パンツ)との使用がおすすめ。
※2 1回の吸収量150mlとして。数値は大王製紙測定法によるもの。
「アテント ふだんの下着に使えるパッド」については、下記のページをご覧ください。
アテント ふだんの下着に使えるパッド
「アテント 超うすパンツ 下着爽快 シンプルホワイト」は、下着と同じようにはいて使う紙パンツです。洋服の上からでも目立たない<ウエストすっきりカット>で、動いてもズレにくいので、軽い運動や長時間の移動・着席などの際にぴったりです。
「アテント 超うすパンツ 下着爽快 シンプルホワイト」については、下記のページをご覧ください。
アテント 超うすパンツ 下着爽快 シンプルホワイト M
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「ナチュラ さら肌さらり おまもり吸水ライナー」は、腹圧性尿失禁にお悩みの方にぴったりの吸水パッド。厚さ2mmと生理用ナプキンより薄くて軽く※、さらっとした肌ざわりのパッドが、ふとした瞬間のモレをしっかり吸収してくれるので安心です。3cc、5cc、10cc、15ccと、4つの吸収量からお選びいただけます。
※ エリエール昼用ナプキンとの比較。
「ナチュラ さら肌さらり おまもり吸水ライナー」については、下記のページをご覧ください。
ナチュラ さら肌さらり おまもり吸水ライナー
「ナチュラ さら肌さらり ちょこっと吸水ナプキン」は、突然起こる切迫性尿失禁にも備えられる頼もしい吸水パッド。<ズレ防止テープ>でしっかり下着に固定できるので、横モレの心配もありません。吸収量は30cc、50cc、65ccの3種類あり、安心感をプラスできるロングタイプもラインナップ。
「ナチュラ さら肌さらり ちょこっと吸水ナプキン」については、下記のページをご覧ください。
ナチュラ さら肌さらり ちょこっと吸水ナプキン
尿モレは、多くの人が経験するものであり、珍しいものではありません。尿モレに気づいたときは、医療機関を受診して原因を明らかにした上で、骨盤底筋トレーニングなどの行動療法を行ってください。また、吸水パッドや紙パンツを活用することで、急な尿モレの不安がなくなります。
「アテント」シリーズや「ナチュラ」シリーズの吸水ケア用品は、ラインナップが豊富なので、尿モレの症状や量に合わせて適切なアイテムをお選びください。
咳をすると尿モレしてしまう原因の多くは、膀胱や尿道などを支える骨盤底筋が衰えるためです。骨盤底筋が衰えると尿道を締める力が弱まります。すると、咳やくしゃみといった、おなかに強い力が入るときに、尿道を締め切れず尿モレが起きてしまうのです。
出産経験がある人、肥満体形の人、便秘の症状がある人、喫煙している人は、腹圧性尿失禁になりやすいとされます。肥満体形については、「減量したら尿モレが減った」という数多くの論文があります。
腹圧性尿失禁の改善と治療には、骨盤底筋トレーニングを基本とし、必要に応じて薬物療法や手術療法を行います。骨盤底筋トレーニングは毎日続ける必要がありますが、目安として3ヵ月継続すれば腹圧性尿失禁の改善効果が得られるとされています。
また、尿モレに対する不安や日常生活での問題には、吸水パッドや紙パンツが役立つでしょう。
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