記事公開:2024.11.14
口から食べ物を摂取することは、栄養をスムーズに消化・吸収する上で重要な役割があります。また、介護を受ける方の心身の健康を維持していくためにも、食事は大切な時間です。
一方で、介護を受ける方の体の状態や年齢によっては、食べ物を噛む力や飲み込む力が弱くなっている場合があります。そうしたときに役立つのが、介護を受ける方が食べやすいように調整した介護食です。
ここでは、介護食の主な種類や介護食づくりのポイントに加え、介護を受ける方に介護食を楽しんでもらうための工夫をご紹介します。
介護食とは、食べ物を噛んで飲み込むために必要な一連の機能が弱くなった方のために、食材を細かく刻んだり、ペースト状・ゼリー状などに加工したりすることで、形状や硬さを調整した食事です。
歳を重ねるとともに歯の衰えや筋力の低下などにより、これまで食べていた食事をとるのが難しいと感じる場合があります。こうした変化は、高齢者の食欲の低下や誤嚥(ごえん:飲食物が食道ではなく喉頭と気管に入ってしまうこと)などの問題につながりかねません。
そこで介護食は、介護を必要とする高齢者が無理なく食事を摂取でき、消化・吸収しやすいように工夫されているのです。
介護食と一口にいっても形状や硬さはさまざまです。介護を受ける方の食べる機能(噛む力、飲み込む力など)の状態に合わせて食事を作らなければなりません。味や食材の好みのほか、服用している薬との飲み合わせやアレルギー症状などに関しても、十分に配慮することが大切です。
介護食と混同しやすい物として、高齢者食が挙げられます。
高齢者食とは、普通食(成人向けの通常の食事)に「やわらかく煮込む」「薄くスライスする」といった高齢者向けの工夫を凝らし、元の食材の形を損なわないように調理や盛り付けをする食事です。調理の工夫次第で、普通食とほとんど変わらない感覚で食べることができます。加齢により、噛む力や飲み込む力がやや低下していても、一口大サイズに切って口に運ぶことで問題なく食べられるケースも少なくありません。
一方、介護食は、高齢者食よりもさらに噛む力や飲み込む力が弱まった方に向けた食事です。
介護を受ける方によっては、すべての食材を細かく刻んだ介護食よりも、高齢者食のほうが食べやすいと感じることもあります。介護食と高齢者食のどちらが適しているかは、介護を受ける方の体の状態や噛む力・飲み込む力などの状況によって判断する必要があるでしょう。
介護食は、調理法の違いで大きく5種類に分けられます。どれが一番良いというものではなく、介護を必要とする方の状態に合わせて、適切なものを選んでください。
ここでは、それぞれの介護食の種類と特徴について紹介します。
きざみ食とは、普通食よりも食材を細かく刻んで食べやすくした食事のことをいいます。普通食と見た目が近いことから、食事のおいしさを視覚的にも楽しみやすい点が大きな特徴です。
きざみ食では一般的に、各食材が1.2cm程度に収まるよう小さく刻みます。これは、介護を受ける方が十分に噛めなかったとしても、問題なく飲み込めるようにするためです。
また、食材によっては、小さく刻むことによって口の中でばらけやすくなり、かえって飲み込みにくくなったり、誤嚥の原因となったりするリスクがあります。このような場合は、とろみをつけると飲み込みやすくなります。
ソフト食とは、普通食よりも煮込む時間や炒める時間を長くすることにより、歯茎や舌でつぶせるやわらかさに調理した食事のことです。ソフト食は、噛む力が弱くなった方や、飲み込みの機能が衰え始めている方に適した食事です。
きざみ食のように食材を細かく刻む手間はかかりませんが、各食材を十分にやわらかくするには、肉の筋切りや魚の叩きといった工程が必要になるほか、硬い食材を使いたい場合は圧力鍋を使用することになります。献立によっては、きざみ食よりも調理時間がかかる場合もあるでしょう。
ミキサー食とは、調理した食材にだし汁やスープなどを加えてミキサーにかけ、ペースト状にした食事のことです。きざみ食やソフト食では噛み砕いたり、飲み込んだりするのが難しい方には、ミキサー食が適しています。
ミキサー食には、食材によって向き不向きがあります。例えば、繊維の多いごぼうなどの食材や、弾力のあるきのこ類などは口の中に残りやすく誤嚥の原因になりやすいため、ミキサー食には向いていません。一方で、じゃがいもやかぼちゃといった食材は、ミキサー食に適しています。
水分が多いミキサー食は、誤嚥のリスクがあるため、とろみ剤を加えるのが一般的です。なお、ミキサー食は普通食と比べて見た目が大きく変わることから、彩りなど食欲がわく工夫をすることが大切です。
ゼリー食とは、ミキサー食と同様に食材をペースト状にしたのち、寒天やゼラチンを混ぜてやわらかく固めた食事のことです。ミキサー食のようにペースト状ではないことから、介護を受ける方によってはゼリー食のほうが誤嚥を防げる場合があります。噛む力が弱くなっている方にとって、歯茎や舌で押しつぶしながら食べられる点が特徴です。
寒天やゼラチンによって固められた食材は特有の食感になるため、硬さや舌触りを考慮して調理する必要があります。一方、適度な硬さに仕立てることにより、口の中でばらけにくく、喉の滑りも良くなる点がゼリー食のメリットです。
流動食とは、固形物が入っていない汁物やおかゆの上澄み、ヨーグルトといった、とろとろとした液状の食事のことです。ミキサー食が食材をペースト状にして作るのに対して、流動食は固形物をこして液状にする点が異なります。
咀嚼や嚥下機能の低下に加えて、消化機能が低下している方に適した食事です。
介護食は介護を受ける方の咀嚼のしやすさ、飲み込みやすさを意識して作ることが大切です。介護を受ける方の食べる機能に合わせて、食材の選び方や調理方法を工夫することが求められます。
ここでは、介護食を調理する際の主なポイントをご紹介します。
介護食を調理する際には、介護を受ける方が食べやすい食材を選ぶことが大切です。
まずは食材選びに気を配る必要があります。脂ののった魚や薄切り肉、豆腐、納豆、オクラ、バナナなどはやわらかく、栄養も豊富なのでおすすめです。一方で、食べにくい食材は、固ゆでたまごやパンなどの水分の少ないもの、餅や海苔、葉物野菜といった口の中で張りつくもの、麺類やエノキダケなどの長い食材が挙げられます。
これらの食材は、むせたり、喉につまらせたりしやすいので、食べやすくする工夫が必要です。
また、香辛料が効いた辛いものや、みかんやキウイなどの果物、酢の物など酸味の強い食材もむせの原因となります。調理の際には、水分やだし汁などで薄めて使うといいでしょう。
体の健康を維持するために必要な栄養素をとることも、食事の重要な目的のひとつです。高齢者の栄養不足は、体力や免疫力の低下を引き起こすリスクを高めます。また、寝て過ごすことが多い方は、褥瘡(床ずれ)の発生要因にもなります。
そのため、とくに、介護が必要な高齢者の場合には、エネルギー源となる主食と良質なタンパク質を含む主菜、ミネラル源となる海藻や野菜を含む副菜をバランスよくとることを心掛けることが大切です。
また、何日も同じ食材やメニュー、味付けが続くと栄養素が偏るだけでなく、食事を楽しめなくなってしまうおそれもあります。介護を受ける方の好みも考慮しつつ、できるだけバラエティに富んだメニューになるよう意識することが重要です。
介護食を作る際には、普通食とは異なる配慮や工夫が必要です。しかし、食べやすさを考慮するあまり、普通食とはかけ離れた見た目の食事になってしまうと、食欲が減退する原因にもなりかねません。彩りや盛り付けなどを工夫し、視覚的にも楽しみながら食事をとれるよう意識することが求められます。
ほかにも、主食や主菜、副菜など、お皿を分けて用意することで品数が増えたように見えるため、食事の楽しみを増やせる場合もあります。食材の色が引き立つようメニューによって食器を変えたり、型抜きなどで形を整えたりすることも、おいしそうな見た目にする上で重要なポイントです。
介護食を食べる際にも、食事の時間が快適なものになるよう、さまざまな配慮や工夫が求められます。特に、下記の4項目については、介護食を食べる際の注意点として意識しておく必要があるでしょう。
まずは介護食を食べる前に、準備を行うことが大切です。例えば、食事中にトイレに行きたくなると、食事に集中できなくなってしまうおそれがあります。介護食をしっかりと味わって食べてもらうためにも、食前にトイレを済ませておくよう促しましょう。
また、感染症対策のために食前の手洗いや口腔ケアを行うことも大切なポイントです。食前に口腔ケアを行うことによって嚥下の準備ができ、誤嚥を防ぐ効果も期待できます。なお、口腔ケアの詳しいやり方については後述します。
嚥下機能が低下している場合は、食前に嚥下体操を行うこともおすすめです。これにより、唾液が分泌される上、食事で使用する筋肉もリラックスするため、安全に食事をする準備が整います。
誤嚥を防ぐためには、常に前かがみの姿勢で食事をすることが大切です。姿勢が悪いと、食べ物が誤って気管や肺に入ることがあり、これにより肺炎を引き起こす原因となるからです。
ベッドに寝たままや、ギャッジベッドを少し起こした状態での食事では、あごが上向きになり、食べ物が飲み込みにくくなるだけでなく、誤嚥のリスクも高まります。そのため、寝たまま食事をすることは大変危険です。
寝て過ごすことが多い方でも、ベッドに腰掛けて食事をしたり、リクライニング車椅子を使用して前かがみの姿勢で食事したりすることが非常に重要です。
食事の際には、水分補給も併せて行いましょう。とくに高齢者は、食欲不振などで水分摂取ができなかったり、トイレが近くなったりすることを気にして水分を控える傾向があります。また、嚥下障害のある方は、水が飲み込みにくいため、水分を敬遠しがちです。
介護を受ける方の脱水を予防するには、食事やおやつに果物、野菜、汁物、煮物など水分の多い食品を取り入れると、水分補給に役立ちます。また、毎食後やおやつに、お茶や好きな飲み物を飲むことを習慣づけることもおすすめです。
高齢者の脱水は、自覚症状がなく見た目でも気づきにくいため、介護をする方が普段の水分の摂取量を観察しておくことが大切です。
口腔ケアとは、口の中の汚れを取り除いたり、舌や頬をマッサージしたり、口内を保湿したりするケアです。特に高齢者の場合、唾液の分泌減少や舌の動きの弱まりが見られることが多く、食事の後に口腔内に食べかすなどが残りがちです。
口腔内が不衛生になると細菌が繁殖し、口内炎や誤嚥性肺炎(飲食物や唾液などが気管・肺に入ることで起きる肺炎)、さらには心臓病を引き起こすリスクを高めます。食前・食後には適切な口腔ケアを行い、口の中を清潔な状態に保つことが大切です。
口腔ケアの基本はブラッシングとうがいですが、いずれも水を使うため、誤って水が気管に入らないよう上体を起こして座った姿勢で行いましょう。
ブラッシングや座った姿勢での口腔ケアが難しい方は、市販のスポンジブラシや口腔用のウェットティッシュなどを使い、口腔内の汚れを丁寧に拭き取ります。
口腔ケア用品は、ドラッグストアなどの介護用品コーナーで売られているため、介護を受ける方の状態に合わせて使いやすいものを選んでください。
介護を受ける方が楽しみながら食事をするには、介護食の味や食べやすさはもちろん、食事の満足感を高めることが重要です。ここでは、介護を受ける方に食事の時間を楽しんでいただくための、工夫の例を紹介します。
毎食のように同じメニューが続くと、食事に飽きてしまう可能性があります。とはいえ、家族と違うメニューを毎回用意するのは大変なことです。そこで、できるだけ家族と同じメニューを用意し、そのなかで介護を受ける方の分だけを柔らかく煮たり、とろみをつけたりして食べやすくする工夫をするといいでしょう。また、3食のうちの1食を市販品にしたり、献立の1品に市販品を加えたりするのもひとつの方法です。
また、介護を受ける方のリクエストを取り入れて献立を組むのも効果的です。自分のリクエストがメニューに反映されることは、希望をきちんと聞き入れてもらえるという安心感にもつながります。
食事を楽しむための工夫は、メニューだけにとどまりません。会話を楽しみながら食事をとるなど、食事をする際の環境面にも気を配る必要があります。例えば、ご家族といっしょに食事をしたり、食べたい物を尋ねたりする中でコミュニケーションが生まれ、食事をよりおいしく感じられることもあります。
また、落ち着いて食事ができるように、テーブルまわりを整えることも大切なポイントです。介護を受ける方がリラックスしながら、食事に集中できるような環境を作りましょう。
食事の時間を不規則にせず、できるだけ同じ時間帯に食事をすることも重要です。食事は毎日を過ごす中での大きな楽しみのひとつであり、生活リズムを保つための大切な時間でもあります。介護のスケジュールに食事の時間を組み込みましょう。
なお、食事の回数は、必ずしも1日3食でなくても問題ありません。介護を受ける方にとって1日2食が合っていることもあれば、1日4食に分けて食事をするほうが無理なく食べられることもあります。
栄養も大切ですが、あまり神経質にならず、まずは「食べてもらうこと」を優先することも大切です。
食事はできるだけ、自分で食べてもらうのが望ましいでしょう。好きなものを自分で食べるからこそ「おいしい」と感じられるのです。また、自発的に食べているという満足感を得ることもできます。
また、介護を受ける方が自分で食べられるように、食器やスプーン、箸などを工夫することも大切です。介護用品売り場に行くと、裏側に滑り止めが付いた食器や柄の太いスプーン、バネのついた箸などの「自助具」が販売されているので、試してみることをおすすめします。
監修者のご紹介
中谷ミホさん
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士、保育士。福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在は介護業界での経験を活かし、介護に関わる記事を多く執筆。介護・福祉関連書籍の監修も手掛けている。
食事は体の調子に大きく関わる要因のひとつです。毎日決まった時間に消化・吸収の良い食事をとることで、排泄も順調になるといった好循環が期待できるでしょう。
また、身に付けている大人用紙おむつに違和感があると、気になって食事に集中できないことも懸念されます。食事の時間を楽しく快適なものにするためにも、装着感に優れ、適切な機能を備えた大人用紙おむつを選ぶことが大切です。
ここでは、ご使用になる方に合わせて機能性や着け心地を選べる、「アテント」シリーズをご紹介します。
「アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス」は、昼と夜1回ずつの交換でも長時間モレずに安心して着用できる、パンツタイプの大人用紙おむつ。約5回分※の吸収量が確保されているため、日中頻繁に交換する必要がなく、介護をする方と介護を受ける方の双方にとって負担を軽減できる点が大きなメリットです。
※ 1回の排尿量を150mlとして。大王製紙測定方法によるもの。
「アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス」については、下記のページをご覧ください。
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Mサイズ 男女共用
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Lサイズ 男女共用
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Mサイズ 女性用
アテント 昼1枚安心パンツ 長時間快適プラス Lサイズ 女性用
「アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ」は、<背モレ防止ポケット>付きで背中からのモレや脚まわりからの横モレを防ぐ機能を備えた、テープタイプの大人用紙おむつです。肌にやさしくやわらかい素材のテープを使用しているため、介護をする方にとっても扱いやすく、簡単にしっかりととめられます。また、<全面通気性シート>を採用しており、さらっと快適な着け心地が持続する点が特徴です。
「アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ」については、下記のページをご覧ください。
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ S
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ M
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ L
アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ LL
「アテント ふきとりぬれタオル」は、体ふきやおしりふきのほか、手や足の汚れ落としなど幅広い用途で使用できるぬれタオルです。パラベン(保存剤)無配合、ノンアルコールタイプであることに加え、アロエエキスとヒアルロン酸を配合。肌に負担をかけることなく、体を清潔に保つことができます。
「アテント ふきとりぬれタオル」については、下記のページをご覧ください。
アテント ふきとりぬれタオル
介護を受ける方にとって、食事は毎日の大きな楽しみのひとつです。食事を楽しく快適にとれるように工夫することで、心身の健康を維持できるでしょう。
なお、排泄に問題を抱えている状態では、食事に集中できず、介護を受ける方も気分が優れません。大人用紙おむつを見直すことで、食事から排泄までを含めた、介護を受ける方にとってより快適で過ごしやすい環境づくりを心掛けてください。
介護食とは、食材を細かく刻んだりペースト状・ゼリー状などに加工したりすることにより、咀嚼や嚥下をしやすくした食事のことです。介護を必要とする高齢者が無理なく食事を摂取し、消化・吸収しやすいように、食材の形状や硬さを工夫しています。
高齢者食とは、高齢者の体の状態に配慮した工夫を凝らしながら、元の食材の形を損なわないように調理や盛り付けをした食事のことです。普通食よりも食材をやわらかく煮込んだり、薄くスライスしたりすることで、噛む力や飲み込む力がやや低下している方でも、普通食とあまり変わらない感覚で食べられます。
介護食づくりのポイントとして、高齢者が食べやすい食材を選ぶこと、栄養バランスを意識すること、おいしそうな見た目を意識することが挙げられます。
また、食材を細かく刻んだりペースト状に加工したりすることによって、普通食とは見た目が大きく変わるケースも少なくありません。彩りを工夫したり、食材が引き立つようメニューによって食器を変えたりするなど、介護を受ける方が楽しんで食事をとれるようにすることが大切です。
介護食を楽しんでもらうには、リクエストを取り入れて献立を組んだり、家族と会話をしながら食事をとる機会を設けたりするといいでしょう。
また、食事を一定の時間にとれるよう介護の予定を調整したり、できるだけ自分で食べられるよう、扱いやすい食器や箸・スプーンなどを選んだりすることも大切なポイントです。
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