記事公開:2024.9.30
ぷにぷに、ツヤツヤとした肉球は、ネコちゃんの大きな魅力のひとつ。そのかわいさに魅了されるオーナーさんも多いことでしょう。でも、肉球はただ愛でられるために存在しているわけではありません。ネコちゃんがネコちゃんらしく活動するための、とても重要な役割を担う部位なのです。
この記事では、ネコちゃんの肉球の構造と役割のほか、毛色と肉球の色の関係、肉球で健康状態をチェックするポイントや、お手入れ方法などについてご紹介します。
ネコちゃんの足裏にあるぷにぷにとした肉球は、正式名称を「蹠球(しょきゅう)」といいます。さらに、部位によって、次のようにそれぞれ名称が異なっています。
<前足>
・掌球(しょうきゅう):中央にある、てのひらのような大きな肉球。
・指球(しきゅう):指の根元にある肉球。掌球の近くに4つ、離れた所に1つある。
・手根球(しゅこんきゅう):掌球から離れた手首に当たる位置にある肉球。前足だけにある。
<後ろ足>
・足底球(そくていきゅう):中央にある、てのひらのような大きな肉球。
・趾球(しきゅう):指の根元にある肉球。前足と違って親指がないため、全部で4つある。
肉球は、ネコちゃんが生きる上で大切な役割を担っています。ここでは、ネコちゃんの肉球が持つ7つの役割を紹介します。
ネコちゃんの肉球は弾力性に優れており、衝撃を吸収する機能があります。ネコちゃんが走ったり、高い所から飛び降りたりする際には、肉球がクッションとなって着地したときの衝撃を吸収し、体にかかる負担を軽減してくれるのです。
さらに、肉球は足音を消すのにも役立ちます。ネコちゃんが狩りをする際に、獲物に気づかれないよう近くまで忍び寄ることができるのも、肉球がクッションとなって足音を消してくれるおかげです。
ネコちゃんが狭い場所へジャンプしたり、高い所から着地したりする際には、肉球が滑り止めになります。ネコちゃんの肉球には汗腺があり、汗で適度に湿っていることで接地面との摩擦が生まれ、吸い付くように止まることができるのです。
肉球は、ネコちゃんが発汗できる数少ない部位です。暑いときや緊張したときに汗をかくことから、ネコちゃんの肉球は体温調節を助けているといわれています。
ただし、体の大きさに対して肉球の面積はわずかであるため、体温調節にどこまで役立っているかは明らかにはなっていません。そのため、ネコちゃんは基本的に体温調節が苦手です。
ネコちゃんは裸足で生活するため、肉球には地面の熱さや冷たさから身を守る役割もあります。とはいえ、肉球にも血は通っているため、やけどをしたり凍傷になったりする可能性があります。ネコちゃんが極端に高温の物や冷たい物に触れないよう、注意しましょう。
ネコちゃんの肉球には毛がなく、多くの神経や血管が通っているため、触感がとても発達しています。ネコちゃんの肉球はセンサーのように、地面の温度や質感などの情報をキャッチし、脳に伝えているのです。
ネコちゃんは肉球を上手に使うことで、何かを器用につかんだり、物にしがみついたりすることができます。遊んでいるときにおもちゃを前足でキャッチしたり、フェンスや柱をスルスルと登ったりできるのも、やわらかくて湿り気を帯びた肉球があるおかげです。
ネコちゃんの肉球は、グルーミングにも役立ちます。キレイ好きなネコちゃんはよく毛繕いをしますが、顔のまわりや耳の後ろなどを自分でなめることはできません。そこで、肉球をなめて湿らせた後にブラシのように使うことで、舌が届かない場所まできれいに毛繕いをしているのです。
ネコちゃんの肉球は、ピンクや黒、ミックスなど、個体によってさまざまな色があります。 肉球の色は被毛の色と関係しているといわれており、一般的に被毛の色が濃ければ肉球も濃い色に、薄ければ肉球も薄い色になる傾向があります。主な肉球の色と被毛の色の関係は、下記のとおりです。
<主な肉球の色と被毛の色の関係>
・ピンク色の肉球:白い毛の多いネコちゃん(白、白黒、茶トラ、茶シロ、サバシロ、三毛など)
・黒色の肉球:黒い毛の多いネコちゃん(黒、黒白、キジトラ、サバトラなど)
・あずき色の肉球:グレー、シルバー、ブルー、黒などの毛色のネコちゃん
・色がミックスした肉球:複数の毛色が混ざったネコちゃん(バイカラー、三毛など)
※肉球の色と被毛の色の関係には例外もあります。
多くの役割を担う肉球は、ネコちゃんが元気に生活するために欠かせない部位です。ネコちゃんの健康管理のために、日常的なスキンシップの機会を利用して、異変や不調が起きていないかチェックすることをおすすめします。
ただ、足をさわられるのが苦手なネコちゃんも多いので、まずは足をさわられることに慣れさせることが大切です。また、肉球をチェックする際は、ネコちゃんにできるだけストレスを感じさせないよう、さりげなく行うことを心掛けましょう。主な肉球のチェックポイントは、下記の4つです。
ネコちゃんが肉球にケガをしていたり、炎症を起こして腫れていたりする場合、時間が経つほど治りが悪くなる可能性があります。自己判断せず、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
室内で暮らしているネコちゃんの場合、肉球がガサガサに荒れることはあまりないかもしれません。ただし、冬場の暖房などが原因で、乾燥やカサつきが見られる場合もあります。また、シニアのネコちゃんは、冬場以外でもカサついている場合があります。乾燥が進んでしまうと、ひび割れやケガの原因にもなるため、早めのケアが必要です。なお、屋外で過ごすことがある子の肉球は、一般的に硬く、乾燥する傾向があります。
ネコちゃんの足の裏の毛が伸びすぎて、肉球に覆い被さるような状態になると、肉球の滑り止め機能が働かなくなり、足を滑らせやすくなります。思わぬ事故につながる可能性もあるので、早めの対策が必要です。
肉球の色もチェックしたいポイントのひとつ。子猫から成猫への成長過程で色が変化するケースもありますが、成猫になってから、普段はピンク色の肉球が白くなっていたり、紫色になっていたりする場合は、不調のサインかもしれません。肉球の色が普段と違う場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
肉球チェックで気になることがあったら、適切なお手入れをしてあげましょう。チェックの際と同様、お手入れの際も、ネコちゃんの負担にならないよう注意しながら行ってください。
ネコちゃんはいろいろな場所を歩き回るので、足裏が汚れやすくなります。足裏が汚れていたら、ネコちゃんの肌に負担の少ないウエットティシューなどで、やさしくふき取って清潔にしてあげましょう。
肉球の乾燥対策には、定期的にネコちゃん用の肉球ケアクリームやジェルを塗って、保湿してあげることがおすすめです。ただし、ネコちゃんの好みや肌に合わない製品はストレスになるため、最初は薄めに塗って、ネコちゃんが気にしていないか、塗った所が赤くなっていないかなどを確認しましょう。
肉球まわりの毛は、伸びすぎる前に定期的にカットしてあげましょう。安全性の高いペット専用のバリカンやシェーバーを使用すると、誤って肉球を傷つける心配がありません。ネコちゃんが怖がらないよう、事前に道具の音を聞かせて慣れさせ、ネコちゃんがリラックスしているタイミングで毛をカットしてあげてください。自宅でお手入れするのが難しい場合は、動物病院やトリミングサロンに相談するのがおすすめです。
なお、肉球まわりの毛をカットすることは、肉球のあいだに猫砂が挟まりやすくなるというデメリットもあります。毛のカット方法を動物病院やトリミングサロンで相談する、猫砂の粒の大きさを調整するなど、状況に応じて検討することが必要です。
監修者のご紹介
松田 唯さん
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)を開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬についてわかりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解してオーナーさんが選択できる診療を心掛けるようにしている。
ガイア動物病院
ネコちゃんの肉球のお手入れをする際には、ネコちゃんの肌に負担がかからないアイテムを使用しましょう。
「キミおもい 肌にやさしいウエットティシュー」は、水分をたっぷり含んだ、ネコちゃんの肌にやさしい、シルキータッチシートのウエットティシュー。足裏の汚れをふき取る際はもちろん、顔まわりなど日頃のケアに役立ちます。純水99%タイプと、ノンアルコール除菌タイプがあり、用途やお好みに合わせて選ぶことができます。
「キミおもい 肌にやさしいウエットティシュー」については、下記をご覧ください。
キミおもい 肌にやさしいウエットティシュー
ネコちゃんの肉球は愛らしく癒やされるだけでなく、さまざまな機能と役割でネコちゃんの生活を支える大切な部位です。ネコちゃんがいつも元気な姿を見せてくれるよう、定期的に肉球のコンディションをチェックし、適切なお手入れを心掛けましょう。
やわらかい肉球は、ネコちゃんが走ったり飛び降りたりするときの衝撃をクッションのように吸収するとともに、地面との摩擦を生じさせる滑り止めとして機能しています。
また、表面に汗をかいて体温を調節するほか、地面の温度や触感などの情報を脳に伝えるセンサーの役割もあります。ネコちゃんが器用に物をつかめたり、顔や頭のグルーミングが上手にできたりするのも、肉球があるおかげです。
ネコちゃんの肉球の色は、「ピンク」「黒」「あずき色」「ミックス」などさまざまです。肉球の色は被毛の色と関係しているといわれており、一般的に被毛の色が濃ければ肉球も濃い色に、被毛の色が薄ければ肉球も薄い色になる傾向があります。
ネコちゃんの肉球を見ることで健康状態をチェックできます。肉球に異変や不調が起きていないか、下記のようなポイントに注意しながら見てください。
ネコちゃんの肉球が乾燥してカサついていたり、肉球のまわりの毛が伸びすぎていたりしていたら、状態に応じて適切なケアをしてあげましょう。もしも肉球にケガや炎症がある場合や、普段と色が違うといった異変に気づいた場合は、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
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