記事公開:2024.2.26
「ネコちゃんを抱っこしようとすると逃げられる…」と悩むオーナーさんは、実は多いのではないでしょうか。元々、ネコちゃんは警戒心が強くあまり抱っこ好きではないといわれています。しかし、上手に抱っこができればお互い幸せな気持ちになれるだけでなく、大事なネコちゃんの病気やケガを早く発見することにもつながります。
この記事では、ネコちゃんに嫌がられない抱っこの仕方や嫌がりやすい抱っこの例のほか、ネコちゃんを抱っこ好きにするためのコツなどについて詳しくご紹介します。
ネコちゃんは警戒心が強く、危険を察知したらすぐに身を隠す習性があります。そのため、体が拘束される抱っこを嫌がることが多いのです。
元々、ネコちゃんは単独で狩りをしてきた生き物であるため、群れを作ったり、仲間といっしょに行動したりすることが苦手な傾向があります。これも抱っこを嫌がる理由のひとつといえるでしょう。ネコちゃんが集団でいるところを見かけたがある人もいると思いますが、仲間と共にいたいからではなく、お互いに隣にいることを許しているだけといわれています。そのため、オーナーさんがそばにいることは問題なくても、抱っこをしてほしいとはあまり思わない子がいると考えられるのです。
もちろん、抱っこが好きなネコちゃんもいます。抱っこが好きな子と嫌いな子の違いは、性格や育った環境によるものが大きいでしょう。
例えば、人なつっこくて甘えん坊なところのあるネコちゃんは、オーナーさんをより身近に感じられる抱っこが好きな子が多いようです。一方で、オーナーさんといっしょにのんびりするよりも、自由に動き回ることのほうが好きな子や、神経質で怖がりな性格の子は、どちらかというと抱っこが苦手なことが多いと考えられます。
抱っこが苦手なネコちゃんでも、嫌がられにくい方法で抱っこをしてあげれば、徐々に慣れてくれることがあります。ここでは、ネコちゃんが嫌がりにくい抱っこの仕方を2つご紹介します。オーナーさんがやりやすい方法を試してみてください。
抱っこの練習をするときは、いきなり抱き上げたりせず、おもちゃで遊ぶ、ブラッシングをする、声をかけながらやさしくなでるなどをした後、ネコちゃんがリラックスしているときに行うのがポイントです。
<抱っこの仕方 その1>
Step1. ネコちゃんの後ろに両ひざをついて座り、胸の下に片ほうの手を入れて両脇を支えるようにし、ネコちゃんの上半身をゆっくりと持ち上げる
Step2. 同時に、反対の手でネコちゃんのおしりをしっかり支えながら抱き上げて、ひざの上に乗せる
Step3.そのままネコちゃんを自分の体にそっと引き寄せて、体を密着させる。両手と体の両方でネコちゃんを支えるようにして安定させる
<抱っこの仕方 その2>
Step1. 胸を圧迫しないように気をつけながら、両手でネコちゃんの肩甲骨と前足の付け根あたりを持ち、そっと持ち上げてひざの上に横向きに乗せる
Step2. ネコちゃんの頭側のほうの腕を、前足の下からおしりの下へと回す。二の腕あたりにネコちゃんをもたれさせ、反対側の手をネコちゃんの胸のあたりに添える
Step3. ネコちゃんのおしりを手のひらで包むようにしっかり抱え、体を自分のほうに引き寄せて安定させる
抱っこの仕方はいずれの場合も、おしりをしっかりと支えること、オーナーさんの体にネコちゃんが触れる部分を多くする(体に密着させる)のがポイントです。ネコちゃんに限らず、どの動物でも体が宙に浮いている部分が多いと不安を感じます。加えて、オーナーさんの体に密着させないと体を動かせるスペースが生まれてしまうため、暴れてしまい上手に抱っこができません。そのため、抱っこをしたら早めにオーナーさんの体にネコちゃんを密着させるのが重要です。
ネコちゃんに抱っこを好きになってもらうには、無理をせず、少しずつ慣れてもらうようにすることが大切です。
次のような抱っこの仕方は、ネコちゃんとの信頼関係を損ねるだけでなく、お互いがケガをすることにもなりかねません。抱っこが嫌なものにならないよう、常にネコちゃんの気持ちを尊重して接するようにしましょう。
ネコちゃんが嫌がったときは、無理矢理抱っこをしようとせず、すぐに降ろしてあげてください。「自分が好きなタイミングで降ろしてもらえる」ということを理解すれば、ネコちゃんも抱っこに対して不安を感じることが少なくなっていくでしょう。
抵抗しているように見えなくても、「体をくねらせる」「前足を突っ張る」「しっぽの先をせわしなく動かす」「不機嫌な声で鳴く」といった行動があるときも、抱っこを嫌がっている可能性があります。無理強いをせずに、すぐに降ろしてあげてください。
体の支え方が不十分で、ずり落ちそうな状態になっていたり、後ろ足がブラブラしていたりすると、ネコちゃんは嫌がって逃げてしまいます。
ネコちゃんを抱っこするときは、おしりと後ろ足をしっかりとサポートし、自分の体に密着させて安定させてあげることが大切です。ただし、おなかや胸を圧迫されるような抱っこの仕方は苦手なので、注意してあげましょう。
人間の赤ちゃんにするような仰向け抱っこは、嫌がらないネコちゃんもいますが、苦手な子が多いものです。動物にとって急所であり弱みであるおなかを見せる行動は、「服従」を意味するともいわれています。そのため、仰向けでの抱っこを嫌がることが多いのです。不安定な体勢になることや、何かあったときに逃げにくいため不安に感じやすいことも、仰向けでの抱っこを嫌がる理由と考えられます。抱っこをするときも、普段の立位や伏せに近い体勢をキープするようにしましょう。
くつろいでいたり、ほかのことに気を取られていたりするネコちゃんを、いきなり抱っこするのもやめましょう。驚いたネコちゃんに噛まれたり引っかかれたりする危険があるだけでなく、これまで築いた信頼関係が崩れてしまうかもしれません。
ネコちゃんは元々抱っこが苦手なことが多いというのは、前述のとおりですが、抱っこをしようとすると一目散に逃げたり、暴れたりする場合は、ほかにも抱っこを嫌がる原因があるかもしれません。考えられる主な原因を見ていきましょう。
ネコちゃんが抱っこを嫌がる場合、過去に抱っこをされたときに嫌なことがあり、トラウマになっている可能性があります。
例えば、無理に抱っこをされたときに怖い思いや痛い思いをしたり、動物病院で抱っこされた後に注射をされたりした思い出などです。その可能性がある場合は、ネコちゃんと根気良くコミュニケーションをとりながら、「抱っこは楽しい」「嫌なことではない」と理解させていくことが大切です。
オーナーさんの抱っこの仕方に原因があり、ネコちゃんが嫌がる場合もあります。前述したような、ネコちゃんの体が安定しない抱っこや無防備な体勢になる抱っこなどは避けてください。ネコちゃんが安心してリラックスできるような、上手な抱き方を練習しましょう。
人間にとってはいいニオイでも、人間とは異なる嗅覚を持つネコちゃんにとっては苦手なニオイはいろいろあります。抱っこをする人から、柑橘系のコロンやアロマ、柔軟剤、ボディソープ、たばこなどのニオイがすると、それが抱っこを嫌がる原因になることも。
このような場合は反対に、ネコちゃんの好むニオイ(猫フェイシャルフェロモンのスプレーなど)を衣服につけて、抱っこをしてみるとうまくいくかもしれません。ネコちゃんが好きなマタタビを使う場合は、好きすぎて逆に咬みつかれるおそれもあるため注意が必要です。なお、マタタビは子猫に与えるとパニックを起こす可能性があるので、使用しないほうが良いでしょう。
「嫌がりにくい抱っこの仕方を試しても、うちの子の抱っこ嫌いは変わらない」というケースもあるでしょう。その場合は、焦って抱っこをしようとせず、少しずつ抱っこのシチュエーションに慣れる準備から始めていくことをおすすめします。
まず、オーナーさんとのスキンシップを大好きになってもらうのがポイントです。ネコちゃんが自分から近づいてきたときに、頭やしっぽの付け根など、ネコちゃんが気持ち良さそうな部分を探して、やさしく触れてあげましょう。「触られるのは気持ちがいい」と覚えてもらうことが大切です。
ネコちゃんがリラックスしたら、ひざの上に好きな毛布を広げたり、少量のおやつをあげたりして、ひざの上に誘導してみましょう。ネコちゃんにオーナーさんのひざの上を「居心地の良い安心できる場所」だと思ってもらうことで、スムーズに抱っこの練習ができる機会が生まれます。
ネコちゃんとスキンシップを試みるときも、信頼関係が大切です。気が乗らないときに無理に誘ったり、ひざに乗せたりして、嫌な思いをさせては逆効果。ネコちゃんが自分から行動するのを根気良く待ちましょう。
いずれにしても、抱っこ嫌いなネコちゃんに対しては、抱っこに慣れてもらう、抱っこされると楽しいことがあるとわかってもらうことが大切です。時間や手間がかかったとしても、きちんとステップを踏めばネコちゃんも段々と慣れてくれます。
ネコちゃんを抱っこできるメリットは、スキンシップやコミュニケーションが楽しめることだけではありません。ネコちゃんをリラックスさせる抱っこは、日頃の健康チェックにも大いに役立つのです。
ネコちゃんを抱っこすることで、オーナーさんは愛猫の体格や体重の変化を感じることができます。抱っこをしたままヘルスメーターに乗れば、正確な体重の把握も可能です。また、ネコちゃんが腕や衣服に爪を立てたりすることがあれば、爪の伸び具合もチェックできます。
さらに、ネコちゃんの全身にくまなく触れることで、外傷や皮膚炎、できもの、関節炎といった異変にも気づくことができ、早めの治療につなげることができるでしょう。
本来抱っこされることをあまり好まないネコちゃんですが、オーナーさんが抱っこの仕方を学び、毎日少しずつ触れ合うことを繰り返していけば、きっと抱っこの楽しさを理解してくれるでしょう。
ネコちゃんとのスキンシップや、大切な健康チェックに活かすためにも、その子の個性に合わせて、焦らずゆっくりと抱っこの仕方を練習してみてください。
ネコちゃんを抱っこするときは、まず十分にリラックスさせてから片ほうの手で両脇を支えます。そして、反対の手でおしりをしっかり支え、こちらの体に密着させて安定させるのがコツです。抱っこを嫌がったときは無理をせずに、すぐに解放してあげましょう。
過去に抱っこをされたときに嫌なことがあって、抱っこがトラウマになっている場合や、抱っこの仕方が良くない、抱っこする人から苦手なニオイがするといった理由が考えられます。該当することがあれば、対処するようにしましょう。
まずネコちゃんが嫌がっているときは、無理強いをしないことが大切です。その上で毎日のスキンシップを大切にし、ひざの上を「安心できる居心地のいい場所」と思ってもらえれば、自分で近寄ってくることが増え、抱っこのチャンスも増えてくるでしょう。
画像提供/PIXTA
監修者のご紹介
松田 唯さん
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)を開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬についてわかりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解してオーナーさんが選択できる診療を心掛けるようにしている。
ガイア動物病院
ネコちゃんとのオーナーさんの”より幸せな暮らし”を目指すペット用品ブランド「キミおもい」の商品については、下記のページをご覧ください。
キミおもい Cat - ネコちゃん -