記事公開:2024.8.6
妊娠すると、うれしさと同時に、これからいくらお金がかかるのかと心配になる人は多いのではないでしょうか。妊娠・出産にかかる費用は、出産時の入院費だけではありません。
ただし、申請することでもらえる助成金などもありますので、知らずに損をすることがないようにしたいものです。
この記事では、妊娠・出産にかかる費用の目安と、自治体から支給されるお金や、申請することで補助金がもらえる制度について解説します。
出産にかかる費用には、妊娠中から必要な妊婦健診費、ママのマタニティグッズのほか、赤ちゃんの肌着や服の購入費、出産時の入院・分娩費などがあります。総額ではいくらくらいかかるのかを見ていきましょう。
・妊婦健診費
妊娠すると、病院や医院で妊婦健診(妊婦健康診査)を受けることが推奨されています。妊婦健診の回数は体調や週数などによっても変わりますが、厚生労働省が推奨している受診回数は、出産までのあいだに14回程度です。
妊婦健診には1回あたり4,000~5,000円の費用がかかり、特別な検査の場合は負担額が1万円を超えることもあります。ただし、妊婦健診費は自治体によって助成されています。自治体によって助成額は異なりますが、本人の負担額は全部で5万円くらいが一般的です。
・マタニティ、ベビー用品購入費
妊娠すると、マタニティ用品やベビー用品を購入するお金もかかります。妊娠中のおなかのふくらみには個人差があるため、マタニティウェアをどれくらい買い替えるかというのは人それぞれですが、おなかを包む専用の下着や、かかとの低い靴、妊婦帯などは準備しておくと安心です。ベビー用品は、肌着やおくるみといった衣類のほかに、ベビー布団、ベビーバス、授乳グッズ、おむつなどを用意します。
人によって違いはありますが、10万~15万円程を考えておくといいでしょう。
・入院・分娩費
入院・分娩費は地域によって差がありますが、厚生労働省の資料によると、2022年度の入院分娩費用などの出産費用は、全国平均で48万2,294円でした(正常分娩のみ・室料差額等を除く)。
施設別の平均額は、公的病院で46万3,450円、私的病院で50万6,264円、診療所・助産所で47万8,509円となります。
妊婦健診費、用品購入費、入院・分娩費の総額は、仮に用品購入費を10万円としても、65万円程ということになります。ただし、出産する施設や出産方法、用品購入費によっては、さらにそれ以上かかることも。特に入院・分娩費は、なかなかの大金です。妊娠出産にかかる診療は基本的には自由診療となるため、施設によって料金に差があります。事前に調べた上で施設を選ぶことをおすすめします。また、自分で直接病院に支払う場合には、出産前にあらかじめ現金を用意しておくか、クレジットカードが使えるかどうかといった支払方法の確認をしておきましょう。
通常の出産は病気とはみなされないため、出産にかかる費用には健康保険が適用されません。
一方、帝王切開による分娩の場合は、医療行為にあたる帝王切開手術費や麻酔費、投薬費、注射費、検査費、入院費に保険が適用され、自己負担額はかかった費用の3割となります。ただし、入院中の食事代や差額ベッド代、赤ちゃんが健康だった場合に赤ちゃんにかかる検査費用などには、保険は適用されません。
帝王切開の場合は入院期間が長くなり、入院費に加えて食事代や差額ベッド代が余分にかかります。そのため、保険が適用されても総額は40万~50万円程が一般的で、自然分娩の場合とそれほど変わりないといえそうです。
妊娠・出産費用の平均額を見ると、自己負担でまかなうのは難しいと感じる人は多いのではないでしょうか。国や自治体にはさまざまな助成制度がありますので、公的な制度を把握してきちんと活用しましょう。
妊婦健診受診票は、自治体が配布している妊婦健診の費用を助成するためのものです。妊娠をした本人または委任状を持つ代理人が自治体に妊娠届を提出することで、母子健康手帳とともに妊婦健診受診票が交付されます。妊婦健診受診票に記載されている検査項目については、費用がかからない仕組みになっています。
助成額は自治体によって異なりますが、検査項目に応じて1回あたり4,000~1万円程度が一般的です。
出産育児一時金は、加入している健康保険から出産費用の一部(1児につき50万円)が給付される制度です。勤務先の健康保険や組合(国民健康保険の場合は自治体)によっては、給付金が上乗せされる場合もあります。
支給方法には、健康保険から出産した病院や産院に直接支払われる「直接支払制度」と「受取代理制度」、出産した本人が出産費用を自分で支払った後に受け取る「事後申請」があります。
・直接支払制度
直接支払制度は、出産育児一時金を健康保険から病院などに直接支払う制度のことです。直接支払制度を利用するには、出産を予定している病院などへ健康保険証を提示し、退院するまでのあいだに「直接支払制度の利用に合意する文書」の内容に同意しておく必要があります。
手続きは入院してから行うことが多いですが、詳しくは出産を予定している病院などに確認してください。
・受取代理制度
受取代理制度は、出産育児一時金を病院などが本人に代わって受け取る制度のことです。申請ができるのは、出産予定日の2ヵ月前からになります。
受取代理制度は、出産する本人または扶養者が、加入している健康保険に下記の書類を提出することで利用できます。
<出産育児一時金の受取代理制度の申請に必要な書類>
・出産育児一時金等支給申請書(受取代理用)
・出産予定日を証明できる書類(母子健康手帳の写しなど)
<出産育児一時金の事後申請に必要な書類>
・出産育児一時金支給申請書
・出産費用の領収書・明細書
・出生を証明する書類
・直接支払制度・受取代理制度を利用していないことを証明する書類(医療機関との合意文書)の写し
出産費貸付制度は、出産育児一時金が支給されるまでのあいだ無利子でお金を借りられる、全国健康保険協会が実施している貸付制度です。貸付金額は1万円単位で、出産育児一時金支給見込額の8割相当額が限度額となります。返済には出産育児一時金の給付金をあてます。
貸付の対象となるのは、出産予定日まで1ヵ月以内の人や、妊娠4ヵ月以上で病院・産院等に一時的な支払いが必要な人です。必要書類を全国健康保険協会各支部に提出することで貸付を受けられます。
<出産費貸付制度の申請に必要な書類>
・出産費貸付金借用書
・被保険者証または受給資格者票等
・出産育児一時金支給申請書
・出産予定日あるいは妊娠4ヵ月(85日)以上であることが確認できる書類(母子健康手帳の写しなど)
・医療機関等が発行した出産費用の請求書など(出産予定日まで1ヵ月以内の場合は不要)
妊娠、出産で高額の医療費を支払った人は、手続きをすれば医療費が支給されたり控除されたりします。個人で加入している保険なども事前にチェックして、期限内に申請しましょう。
高額療養費制度は、健康保険が適用される治療で、1ヵ月間に自己負担限度額を超える医療費がかかった場合、その超過分が支給される制度です。
申請期限は診察日の翌月から2年以内で、勤務先の担当窓口(国民健康保険の場合は住民票のある市区町村役所・役場)に申請します。医療費がかかった本人(専業主婦などで被扶養者の場合は夫)による申請が必要です。
<高額療養費制度の申請に必要な書類>
・健康保険高額療養費支給申請書
・医療費の領収証
・健康保険証
自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。また、妊娠中の合併症やトラブルでも、保険が適用された治療であれば免除の対象です。
帝王切開など、事前に多額の医療費がかかるとわかっている場合は、加入している健康保険から「限度額適用認定証」をもらっておくと、医療機関や薬局窓口での支払時に、自己負担限度額を超える支払いが免除されます。なお、医療機関によっては、「マイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)」があれば「限度額適用認定証」の準備は不要です。
医療費控除とは、確定申告をすることで年間10万円以上の医療費に適用される所得控除です。出産費用の中でも、通院や入院にかかった費用、医薬品費、歯科費用、出産費用などは対象となるため、出産した年の確定申告で申請するといいでしょう。
<医療費控除の申請に必要な書類>
・確定申告書
・医療費控除の明細書
・医療費の領収書
なお、確定申告後も、医療費の領収書は自宅で5年間保管する必要があるので注意が必要です。
未熟児養育医療給付金は、産まれた赤ちゃんが未熟児の場合や医師から入院養育が必要と認められた場合に、その入院・治療費を自治体が援助してくれる制度です。出生から14日以内に、居住地の保健所窓口へ両親のどちらかが申請する必要があります。
<未熟児養育医療給付金の申請に必要な書類>
・養育医療給付申請書
・養育医療意見書(診断書など)
・世帯調書
・母子健康手帳
・所得証明書(源泉徴収票など)
・乳幼児医療費助成制度の医療証
・健康保険証
※自治体によって異なるため、詳細は各自治体の窓口にお問い合わせください。
なお、世帯所得に応じて一部自己負担になることがあります。また、居住地ごとに指定医療機関があり、申請期限を入院中に限る自治体もあるので、申請前によく確認しましょう。
産休を取っているママや、出産のために退職したママの場合、勤め先の健康保険によっては助成が受けられる場合があります。
出産手当金は、産休中の手当てとして健康保険から給与の3分の2が支給される制度です。国民健康保険の場合は支給されません。出産手当金の支給対象となる期間は、出産日の42日前(多胎児の場合は98日)から出産日の翌日以降56日間です。出産した本人が勤務先の担当窓口に申請する必要があります。
<出産手当金の申請に必要な書類>
・出産手当金申請書
・出生を証明する書類
・健康保険証
・振込先口座
ただし、出産前の申請はできず、出産後56日経過後、給料の締日を過ぎてから申請することができます。出産手当金の申請期限は、産休を取得した日ごとに、その翌日から2年間です。
例えば、支給対象の期間が6月1日~9月6日の場合、6月1日分の申請期限は2年後の6月1日、9月6日の申請期限は2年後の9月6日となります。申請期間を1日過ぎるごとに支給額が減ってしまうため注意しましょう。
失業給付金の受給期間延長は、妊娠・出産で会社を退職した場合、特別措置として失業給付金の受給期間を離職日の翌日から4年以内まで延長できる制度です。失業給付金は通常、退職後も仕事をする意思がある人に対して、新たな仕事が見つかるまで原則1年以内の期間に一定の日数分支給されます。
しかし、妊娠・出産などで会社を退職した場合、働く意思はあっても働くことができないため、その期間の雇用保険を受給できません。そのための特別措置として、申請をすることで受給期間を離職日の翌日から4年以内まで延長することができます。
なお、退職前の2年間に、雇用保険に通算12ヵ月以上加入している人が対象です。離職日の翌日から31日目以降、延長後の受給期間最終日までに、各自治体のハローワークへ、働いていた本人または代理人が申請する必要があります。
<失業給付金の延長の申請に必要な書類>
・離職票
・雇用保険被保険者証
・本人確認証
・母子健康手帳
出産後に必要な手続きはたくさんありますが、中でも次の4つは誰でも申請・届け出が必要です。期限が設けられているものは、期限内に手続きをしないと受理されないこともあるので、事前に漏れがないようにチェックしましょう。詳細は、お住まいの自治体や勤務先などにご確認ください。
出生届は、赤ちゃんの戸籍を作るために提出する書類です。出生日から14日以内(国外で生まれた場合は3ヵ月以内)に、両親がお住まいの自治体か赤ちゃんの出生地、両親の本籍地のいずれかの市区町村役所・役場に提出します。同居している祖父母が提出することもできます。
期限内に手続きをしないと罰金を科せられる場合があるため、赤ちゃんの名前を決めたら早めに申請しましょう。
<出生届の提出に必要な書類など>
・出生届書用紙(市区町村役場で入手。右半分が医師等の記入した出生証明書になっているもの)
・母子健康手帳
赤ちゃんが産まれたら、両親どちらかの扶養として健康保険に加入させます。1ヵ月健診までには加入を済ませましょう。両親のいずれも働いている場合は、所得が多いほうの扶養に入れることが一般的です。提出先は勤務先の担当窓口になります。国民健康保険の場合は、住民票のある市区町役所・役場に提出します。
加入している健康保険によって規定が異なるので、事前に問い合わせをしておくと安心です。
なお、赤ちゃんの健康保険加入の申請には、出生届出済証明欄に記載のある母子健康手帳が必要です。通常は出生届の提出時に戸籍事務担当者が記入してくれますが、休日や夜間など役所の閉庁時間に出生届を提出した場合、届出済の証明が記載されないことがあります。その場合は、後日、出生届を提出した役所で証明を記入してもらってから申請してください。
<赤ちゃんの健康保険加入に必要な書類など>
・母子健康手帳
・健康保険証
・本人確認書類(運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど)
児童手当は、産まれてから中学校を卒業するまでの子どもを養育している人に対して、国から支給される手当です。住民票がある自治体の役所・役場に申請します。申請者は原則、養育者の中で所得が高いほうとなります。
1ヵ月あたりの支給額は0~3歳未満までは1万5,000円、3歳から小学校卒業までは1万円(第3子は1万5,000円)、中学生は1万円です。出生月内の申請が必要で、申請が遅れるとさかのぼって支給されることはないので気をつけましょう。
<児童手当の申請に必要な書類など>
・個人番号(マイナンバー)
・申請者の健康保険証
・申請者名義の普通預金通帳
・所得証明書(その年に転居した場合は課税証明書)
なお、児童手当の内容は見直しが行われており、今後は高校生まで支給の対象となるほか、第3子以降の増額、所得制限の撤廃などが検討されています。
乳幼児医療費助成は、健康保険に加入している0歳~中学3年生までの子どもが、病気やケガで医療機関を受診したときに、年齢に応じて一部の医療費を市区町村に助成してもらえる制度です。住民票がある自治体に両親のどちらかが申請します。
<乳幼児医療費助成の申請に必要な書類など>
・医療費助成申請書
・赤ちゃんの健康保険証
・出生届出済証明が記入された母子健康手帳
・個人番号(マイナンバー)※自治体による
・所得証明書(所得確認ができない場合)
自治体によっては乳幼児医療費助成の医療証を提示すると医療費が無料になる、あるいは後日補助金で還付される場合があります。手続きは自治体によって違いがありますので、事前に確認をしておきましょう。
監修者のご紹介
橋本絵美さん(ファイナンシャル・プランナー)
はしもとFPコンサルティングオフィス代表。福岡県出身。慶應義塾大学商学部卒。2男4女を育てるママファイナンシャル・プランナー。子ども=お金がかかるという考え方ではなく、子どもは宝であり、安心してもう一人子どもを産めるようにサポートしたいという思いからFPとなる。モノとお金を片づける、お片づけプランナーとしても活動中。実践に基づく「貯まる家計の仕組みづくり」と「子どもがいてもすっきり片付く部屋づくり」が好評。金融メディアなどでの連載多数。
はしもとFPコンサルティングオフィス
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出産後は育児に追われて、細かいお金の記録や計算ができないことも多くなります。時間に余裕がある出産前に、入院・分娩費の確認や、用品の購入などはできるだけ済ませておきましょう。
また、手続きの中には、赤ちゃんが産まれて間もなく申請が必要なものもあります。申請し忘れのないように、事前に書類を取り寄せたり記入を済ませたりして、準備万端で出産にのぞんでください。
妊婦健診受診票は各自治体が発行しており、指定の医療機関でしか使用できません。そのため、里帰り先の病院で妊婦健診を受ける場合、受診票が使用できないことがあります。そんなときは、一度全額を自己負担で支払い、後でお住まいの自治体に申請することで精算できます。病院の領収書が必要になるため、しっかり保管しておきましょう。
なお、精算手続きの期限は出産日から1年以内なので、申請期限を忘れないようにしてください。
双子の場合は、出産一時金も2人分支給されるため、50万円×2人分で100万円が受け取れます。出産一時金は出産された赤ちゃんの人数分が支給されるので、双子以上の多胎児だった場合にも、1人分を50万円として人数分の金額を受け取ることができます。
ママ・パパのどちらもが育休を取得した場合、育児休業給付金はママ・パパの両方に支給されます。給付金額は、育休開始日から180日間は月額給与の67%、181日目から支給終了日までは50%です。ただし、支給率67%の場合の上限額は31万143円、支給率50%の場合の上限額は23万1,450円となります。
また、両親がともに育児休業を取得する場合、子どもが1歳2ヵ月になるまで育児休業期間を延長できる「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。こちらは制度の適用に必要な要件があるため、勤務先などに確認することをおすすめします。
画像提供/PIXTA
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