記事公開:2025.2.20
生理期間ではないのに性器からの出血が見られると、多くの人は不安を抱えるでしょう。こうした不正出血は、鮮血のように明るい色の場合もあれば、茶色い血やおりものを伴うこともあります。
特に、茶色の不正出血は、場合によっては病気が潜んでいる可能性もあるので注意が必要です。
ここでは、茶色の不正出血が起こる原因や対処法のほか、出血の色別に考えられる病気について詳しく解説します。
不正出血とは、正式には「不正性器出血」と呼ばれ、通常の生理以外のタイミングで性器から出血することを指します。
女性の性器には、子宮や卵巣、卵管、腟などの「内性器」と、外陰部や腟の一部を含む「外性器」があります。不正出血は、これらの内性器や外性器のどこかで出血が起きていることが原因です。
症状には、鮮やかな赤い血が大量に出る場合もあれば、茶色っぽい血がおりものに少し混じる程度のケースも含まれます。ただし、不正出血の量や色だけでは、出血している部位や重症度を判断できません。そのため、不正出血があったときには、婦人科で診察を受けるようにしてください。
不正出血は、大きく「機能性出血」「器質性出血」「中間期出血」の3種類に分類されますが、これらに該当しない不正出血もいくつかあります。それぞれの出血の原因は、下記のとおりです。
<不正出血の種類と原因>
・機能性出血:思春期や更年期に多く見られる、ホルモンバランスの乱れが原因で起こる出血
・器質性出血:腟や子宮、卵巣などの病気や異常で起こる出血
・中間期出血:生理と生理のあいだに起こる排卵に伴う出血
・そのほかの出血:妊娠時の出血や性交後の出血のほか、甲状腺ホルモンの異常などによる出血
不正出血の色は茶色だけでなく、赤やピンクのほか、出血量が少ない場合には黄色っぽくなることもあります。それぞれの出血の特徴は、下記のとおりです。
<不正出血の色と特徴>
・鮮やかな赤色:出血してからすぐに体外に排出されたもの
・茶色:出血して時間が経過し、酸化したもの
・ピンク色:少量の鮮血がおりものなどと混ざって、色が薄くなったもの
・黄色:出血量が非常に少ないもの
不正出血は、婦人科を受診する理由の中でも上位を占める症状とされています。では、実際にどのくらいの女性が不正出血を経験したことがあるのでしょうか。クラブエリエールの女性会員を対象にアンケートを実施しました。
【調査概要】
調査対象:クラブエリエール会員の10代以上の女性
調査期間:2024年12月5日~12月11日
調査手法:インターネットを利用したアンケート調査
有効回答数:3,164件
■不正出血を経験したことはありますか?
クラブエリエール会員の女性に不正出血を経験したことはあるか伺ったところ、「はい」と答えた人は、39.5%でした。全体の約4割の女性は、不正出血の経験があることがわかります。
また、不正出血を経験した女性に、その色についても調査したところ、下記のような結果になりました。
■不正出血はどのような色でしたか?(複数回答可)
不正出血の色について、「茶色」の回答が最も多く、全体の49%にあたる795人でした。その次に多かったのが「赤色」で、全体の36%にあたる590人となっています(複数回答可)。
この調査結果から、不正出血の色として多いのは、茶色や赤色であることがわかります。ただし、不正出血の色や量には個人差があり、どのようなケースでも早めに婦人科を受診することが重要です。
生理前後に見られる茶色い出血は、生理に伴ってはがれた子宮内膜の一部である可能性が高く、基本的には心配ありません。しかし、生理以外で茶色の出血がダラダラと続く不正出血の場合は、「性器内の腫瘍から出血している」「性器のどこかが炎症を起こして出血している」といった可能性も考えられるため、注意が必要です。
ここからは、茶色の不正出血が見られる場合に考えられる、主な病気を紹介します。
子宮筋腫とは、子宮平滑筋に良性の腫瘍ができる病気です。筋腫の部位や大きさによって無症状の場合もありますが、「粘膜下筋腫」という子宮内膜内にできる筋腫は、不正出血が起こりやすくなります。
粘膜下筋腫は、子宮内膜のすぐ内側に発生し、その表面の子宮内膜から、持続的に出血を引き起こす場合があります。
子宮筋腫は不正出血のほか、経血量が多くなったり、生理期間が長引いたりすることもあり、それに伴って貧血を引き起こすことも少なくありません。
また、子宮筋腫は女性ホルモンの影響を受けて徐々に大きくなる傾向があり、生理があるあいだは症状が進行しやすい点にも注意が必要です。
子宮腺筋症とは、子宮内膜に似た組織が子宮の筋層内に発生する病気です。特に、30代後半から50代の女性に現れやすい傾向があり、主な症状として不正出血や下腹部痛、月経過多、貧血などがあります。
子宮腺筋症は、女性ホルモンの影響を受けて悪化するため、生理があるあいだは症状が徐々に強くなっていきます。
子宮頸管ポリープとは、腟の奥にある子宮頸管部にポリープ(イボのような腫瘍)ができる病気です。ポリープは、少しの刺激でも出血しやすいため、激しい運動や性交などによって不正出血を起こすこともあります。
子宮頸管ポリープは、ほとんどが良性ですが、まれにがんがポリープ状になるケースもあるため、切除して検査してもらうと安心です。
クラミジアや淋病などの性感染症も、不正出血の原因になることがあります。これらの性感染症にかかると、子宮頸部や腟内に炎症が起こり、出血することもあります。
無症状の場合もありますが、不正出血のほかにも、「生理痛のような下腹部痛」「おりものの量の増加や色の変化」「悪臭」「かゆみ」といった症状が出ることもあるので注意しましょう。
子宮がんには、子宮頸部にできる「子宮頸がん」と、子宮の内膜にできる「子宮体がん」があり、どちらも不正出血を起こす可能性があります。
子宮頸がんは、近年は20代後半から増え始め、30~40代の女性にも多く見られるがんです。進行すると、一般的に「不正出血がダラダラと続く」「茶褐色もしくは黒褐色のおりものが出る」「ひどい月経痛が起こる」といった症状が見られます。
子宮体がんは、初期から不正出血が見られるのが特徴です。40代後半から増え、50~60代に多く発症します。特に、閉経したにもかかわらず不正出血がある場合は、すぐに婦人科を受診してください。
不正出血は、病気以外が原因で起こる場合もあります。ここからは、病気以外に不正出血を起こす可能性がある原因を紹介します。
妊娠中に、不正出血が起こることは珍しくありません。例えば、受精卵が子宮内膜に着床するときや、胎盤が形成される過程で出血することがあります。その中でも、特に不正出血として認識されやすいのが、受精卵の着床時に起こる「着床出血」です。
着床出血は、生理予定日の少し前に起こることが多く、通常、1~3日程度で治まります。「少量の出血があったのに生理が来ない」「生理だと思ったら、出血がすぐに終わった」という場合は、着床出血の可能性を考えて妊娠検査を行いましょう。
また、妊娠に関連した不正出血では、異所性妊娠(子宮外妊娠)や、切迫早産・流産の兆候といったケースもあるため、注意が必要です。これらは、大量出血や下腹部痛を伴うこともあるので、妊娠中に不正出血がある場合は、すぐに産婦人科に連絡をしてください。
10代(思春期)は、ホルモンバランスがまだ不安定なため、生理周期が一定にならないことがあります。その結果、不正出血なのか生理なのか、判断がつかない場合も少なくありません。
生理か不正出血か判断が難しい場合には、婦人科でホルモンバランスや排卵の状況を調べてもらうこともできます。早めに相談することで、不安を軽減できるでしょう。
排卵に伴うホルモンバランスの変化が原因で、出血することもあります。排卵出血は、生理と生理の中間の時期に起こることが多く、出血量はごく少量であることがほとんどです。また、ネバネバしたおりものと一緒に血が出ることもあります。
ただし、出血量が多かったり、毎月のように不正出血があったりする場合には、排卵出血ではない可能性があるので、婦人科を受診して原因を調べてもらうようにしましょう。
40歳前後から始まる更年期には、閉経に向けて女性ホルモンの分泌量が大きく変動するため、不正出血も起こりやすくなります。
こうした不正出血は、自然な経過によるものが多いですが、更年期は子宮がんのリスクも高まる時期でもあります。そのため、1年に1度は子宮がん検診を受けるようにしましょう。
また、閉経後は通常、腟から出血することはないので、閉経後に一度でも不正出血があった場合は、婦人科を受診してください。
ストレスや生活習慣の乱れは、月経周期を不規則にしたり、不正出血を起こしたりする原因となります。また、極端な食事制限によるダイエットで栄養バランスが崩れると、女性ホルモンの分泌が乱れて、不正出血を引き起こす場合もあるでしょう。
さらに、無理なダイエットを続けることで無排卵となり、生理そのものが止まってしまう可能性もあるので、注意が必要です。適度な食事と規則正しい生活を心掛け、ストレスを溜めないようにしてください。
タンポンの抜き忘れが原因で、不正出血が起こるケースも少なくありません。タンポンを腟内に入れたままにしていると、細菌が繁殖して炎症を起こし、出血や悪臭が生じることもあります。
ひどい場合には、高熱やショック症状などを起こす可能性もあるので、タンポンを使用する場合は抜き忘れに注意し、必ず使用時間を守ってください。
低用量ピルなど、ホルモンに作用する薬を服用し始めた場合、最初の2~3ヵ月は体内のホルモン量が安定せず、不正出血を起こすことがあります。服薬を始めたばかりの不正出血であれば、少し様子を見ても問題ない場合がほとんどです。
低用量ピルを服用し続けることで、体内のホルモンバランスが整い、不正出血は自然に治まることがほとんどです。ただし、服用し始めてからしばらく経っても、飲み忘れや服用時間のズレが原因で不正出血を起こすことがあるため、服用方法には注意しましょう。
監修者のご紹介
佐藤杏月先生
八丁堀さとうクリニック副院長 医学博士 日本産婦人科学会専門医
日本医科大学卒。日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。3人の子供の子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医のご主人とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。
八丁堀さとうクリニック
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生理前後に見られる茶色の不正出血は、一般的には心配する必要はありません。しかし、生理前後以外で茶色や赤色、ピンクなどの不正出血が続くようであれば、何らかの病気が隠れている可能性もあります。
不正出血は、量や色だけで、病気の重症度を判断できるものではありません。茶色でも赤色でも、不正出血がある場合には、できるだけ早く婦人科を受診しましょう。
不正出血とは、正式には「不正性器出血」と呼ばれ、通常の生理以外のタイミングで性器から出血することを指します。女性の性器には、子宮や卵巣、卵管、腟などの「内性器」と、外陰部や腟の一部を含む「外性器」があります。不正出血は、これらの内性器や外性器のどこかで出血が起きていることが原因です。
茶色の不正出血は、主に子宮筋腫や子宮がんなどの病気のほか、妊娠や排卵、更年期が原因のケースがあります。また、「タンポンの抜き忘れ」「ストレスや生活習慣の乱れ」「ダイエット」「ピルなどの飲み始めに起こるホルモンの乱れ」などで引き起こされることもあります。
10代の場合は、ホルモンバランスがまだ不安定なため生理周期が一定にならず、不正出血なのか生理なのか、判断がつかないことも少なくありません。
茶色の不正出血がダラダラと続く場合は、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮頸管ポリープなど、性器内の腫瘍から出血している可能性があります。また、子宮頸がんや子宮体がんでも不正出血が起こるので、注意しましょう。
さらに、性感染症によって、性器のどこかが炎症を起こして出血している場合もあります。
画像提供/PIXTA