記事公開:2025.2.27
生理前になると、些細なことでイライラしたり、不安を感じたり、時には気分が激しく落ち込むこともあるかもしれません。このような日常生活に支障をきたすほどのうつ症状は、月経前症候群(PMS)や、さらに深刻な月経前不快気分障害(PMDD)の可能性があるでしょう。
この記事では、生理前に起こるひどいうつ症状の原因や、PMSとPMDDの違い、PMDDの対処法などについて解説します。つらいうつ症状に悩んでいる女性は、ぜひ参考にしてください。
生理前になると気分が落ち込みやすくなったり、イライラしやすくなったり、ひどい場合にはうつ症状に悩まされる女性もいます。
このように、生理前に心身が不安定になり、日常生活に支障をきたすような状態を月経前症候群(PMS)といい、中でも精神的な症状が強く出てしまう状態を月経前不快気分障害(PMDD)といいます。
生理前に心が不安定になると感じている女性は多くいますが、その中でもどのくらいの女性が、生理前のひどいうつ症状を抱えているのでしょうか。クラブエリエールの女性会員にアンケートを行いました。
【調査概要】
調査対象:クラブエリエール会員の10代以上の女性
調査期間:2024年12月5日~12月11日
調査手法:インターネットを利用したアンケート調査
有効回答数:3,164件
■生理前にひどいうつ症状になった経験はありますか?
クラブエリエールの女性会員に、生理前にひどいうつ症状になった経験はあるかを伺ったところ、「はい」と回答したのは56.1%でした。約2人に1人の女性が、生理前にひどいうつ症状になった経験があると答えており、多くの女性が、生理前は精神的につらい状況に陥っていることがわかります。
PMSやPMDDの正確な原因はまだ解明されていませんが、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が深く関わっていると考えられています。
生理周期に伴ってエストロゲンとプロゲステロンの分泌量は変化しますが、特に排卵後から生理前にあたる黄体期は、これらのホルモンの分泌量が大きく変化する時期です。このホルモンバランスの変動が、PMSやPMDDの症状を引き起こす主な要因とされています。
■エストロゲンとプロゲステロンの分泌量の変化
PMSとPMDDの違いは、PMDDのほうがより精神的な症状が重く、日常生活に支障をきたすほどの影響を与える点です。PMSは、主に疲労感や腰痛、頭痛、むくみ、乳房の張りなどの身体的症状に加え、気分の変動や抑うつ、いらだちなどの精神症状が現れます。
一方のPMDDは、身体的な症状を伴うこともありますが、特に精神症状が目立つことが特徴です。PMDDは、生理の数日~10日程前から下記のような症状が現れ、生理が始まると徐々に改善していきます。
下記の表にある症状のうち、心の状態、体の状態の変化がそれぞれ1つ以上、合わせて5つ以上現れる場合は、PMDDである可能性が高いです。
<PMDDでよく見られる心の状態>
・情緒が不安定で、泣くことがある
・イライラして怒りっぽくなる
・気持ちが落ち込み、絶望的な気分になる
・自分を責めて自己嫌悪になる
・強い不安感や緊張感を感じる
・気持ちが高ぶって集中できない
<PMDDでよく見られる体の状態>
・倦怠感があり、疲れやすい
・過食傾向や、特定のものばかり食べたくなる
・体重が増える
・寝すぎたり、眠りが浅かったりする
・乳房の張りや痛みを感じる
・おなかの張りを感じる
・関節痛や筋肉痛がある
・頭痛がある
・むくみがある
生理前に上記のような症状がいくつかあり、日常生活や人間関係に影響が出る場合は、PMDDの可能性があります。いくつか自分にあてはまる症状があれば、婦人科や精神科を受診しましょう。
PMDDによるうつ症状をやわらげるには、薬剤を使用しないセルフケアと、薬剤を用いて治療する方法があります。下記で紹介する対処法から、自分に合ったものを試してみてください。
生理前のひどいうつ症状について記録をつけておくと、月経周期のどのタイミングで、どのような症状が出やすいかを把握しやすくなります。
まず、生理が始まった日を起点として、心や体の変化を日付とともに記録してみましょう。具体的な症状やその強さ、時期を記録していくと、症状が現れやすいタイミングを予測する手助けになります。
症状の予測ができれば、無理のない範囲でスケジュールを調整したり、症状が悪化しやすい時期に備えた対策を準備したりすることが可能です。
PMDDの症状は、ストレスによって悪化すると考えられています。そのため、睡眠を十分にとり、規則正しい生活で自律神経を整えるといいでしょう。また、適度な運動は、ストレスをやわらげる脳内ホルモン「エンドルフィン」の分泌を促します。
息が少し上がる程度の有酸素運動を30分以上行うと、エンドルフィンの分泌が活性化されるだけでなく、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌も促されます。
生理前は、女性ホルモンの影響で体が水分を溜め込みやすく、むくみや体重増加が起こりがちです。この時期に塩分を多くとると、さらに体に水分が溜まり、症状が悪化することもあります。
生理前は、濃い味付けの食品や塩分の多いスナックなどを控えて、薄味の食事を心掛けるといいでしょう。
また、塩分の排出を促す働きがある、カリウムをとるのもおすすめです。カリウムは、バナナやさつまいも、きゅうり、トマト、海藻類などに豊富に含まれています。
生理前のひどいうつ症状をやわらげるには、ビタミンやカルシウム、たんぱく質を積極的にとるのもおすすめです。ビタミンB群は心を落ち着かせる働きがあり、ビタミンCはストレスへの抵抗力を高める効果があります。
また、カルシウムとマグネシウムには、神経の興奮を抑える作用があるため、意識してとるといいでしょう。
さらに、たんぱく質からはセロトニンの生成に必要な必須アミノ酸「トリプトファン」を摂取できます。セロトニンの分泌量が減少しがちな生理前には、肉や魚、乳製品、大豆製品など、高たんぱく質の食材を意識的にとることをおすすめします。
血糖の急激な変動は、PMDDを悪化させる原因のひとつと考えられています。特に、お菓子やジュースなどは血糖値が急上昇しやすいため、控えたほうがいいでしょう。
血糖値の変動をゆるやかに抑えるためには、食物繊維を積極的にとるのが有効です。食物繊維は、豆類や海藻類、芋類、大麦などに豊富に含まれています。
甘い物を食べたくなったら、かぼちゃやさつまいもなど、自然の甘みを楽しめる野菜を選ぶのもおすすめです。
PMDDの悪化を防ぐには、自分に合ったリラックス方法を見つけるのもおすすめです。例えば、寝る前にハーブティを飲んで気持ちを落ち着かせたり、アロマセラピーを活用して心をリフレッシュさせたりするのも効果的です。
PMDDの症状によっては、人間関係に影響が出てしまうこともあります。この場合には、周りの人にPMDDについて理解してもらうことが大切です。
月経前に特有の一時的な症状であることや、自分がどのようなサポートを求めているかを伝えることで、スムーズに協力や理解を得られる場合があります。一人で抱え込まず、周りにサポートをお願いしてみましょう。
生理前のうつ症状がひどい場合には、低用量ピルや抗不安薬、漢方などを服用するのも選択肢のひとつです。
ただし、体質などによって、症状が悪化する場合や副作用が出ることもあるので、処方を希望する場合は婦人科や精神科で相談しましょう。
監修者のご紹介
佐藤杏月先生
八丁堀さとうクリニック副院長 医学博士 日本産婦人科学会専門医
日本医科大学卒。日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。3人の子供の子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医のご主人とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。
八丁堀さとうクリニック
生理前は、イライラしたり、気分が落ち込んだりすることも多いでしょう。生理期間を少しでも快適に過ごせるよう、生理用ナプキンにはこだわりたいものです。
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生理前のひどいうつ症状は、女性ホルモンの変動が大きく関わっていると考えられており、症状が悪化すると、日常生活や人間関係に影響を及ぼす可能性もあります。食事や運動など、生活習慣の見直しで症状をやわらげることも可能ですが、毎月のように生理前にひどいうつ症状に悩まされる場合は、婦人科や精神科を受診することをおすすめします。
生理前のうつ症状に振り回されないためにもPMDDについて理解を深め、自分に合った対処法を見つけるようにしましょう。
生理前のひどいうつ症状は、PMDDの可能性があります。その原因はまだ解明されていませんが、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が深く関わっていると考えられています。生理前は、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が変動しやすく、この変動がPMSやPMDDの症状を引き起こしていると考えられています。
生理前のうつ症状を改善するには、規則正しい生活を心掛け、適度な運動をすることが効果的です。また、ビタミンやカルシウム、マグネシウムなどの栄養素をとると、ストレスの軽減につながります。なお、血糖値が急激に上がりやすいお菓子やジュースは、生理前は控えるようにしてください。症状がひどい場合には婦人科や精神科を受診し、相談することも大切です。
生理前のうつ症状がひどい場合には、一般的に低用量ピルや抗不安薬、漢方などが処方されます。
ただし、体質などによっては症状が悪化する場合や、副作用が出ることもあるので、処方を希望する場合は婦人科や精神科で相談しましょう。
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