記事公開:2025.1.29
生理中は、下腹部痛や腰痛などとともに、下痢に悩まされる人も少なくありません。ただでさえ心身の不調に悩まされる生理期間に、下痢の症状で何度もトイレに行かなければいけないのは、日常生活にも大きな支障をきたすでしょう。
生理中の下痢について原因を正しく知り、適切な予防法や対処法を知ることは、生理中の生活の質を上げることにもつながります。
この記事では、生理中に下痢になる原因や日常生活で実践できる予防法のほか、症状が現れたときの対処法について解説します。
生理中の下痢は、生理中に子宮を収縮させ、不要になった子宮内膜を体外に排出する働きを持つ「プロスタグランジン」というホルモンが原因といわれています。
プロスタグランジンは、排卵後に体が受精の準備を始めると子宮内膜で作られ、生理が始まると分泌量が増加します。このプロスタグランジンが血液中に入ると腸管が収縮し、下痢を引き起こします。
こうした生理に関係して起こる下痢は、月経困難症のひとつとして考えられ、一般的には生理が終わる頃に落ち着きます。ただし、プロスタグランジンの分泌が多い場合、子宮や腸の収縮が長引き、生理が終わっても下痢や腹痛が続くこともあります。
生理中の下痢に悩まされる女性は、どのくらいいるのでしょうか。クラブエリエール会員の女性を対象に、生理中の下痢に関するアンケートを実施しました。
【調査概要】
調査対象:クラブエリエール会員の10代以上の女性
調査期間:2024年11月5日~11月12日
調査手法:インターネットを利用したアンケート調査
有効回答数:4,123件
■生理中に下痢になることはありますか?
クラブエリエール会員の女性に生理中に下痢になることはあるか伺ったところ、「よく下痢になる」または「たまになる」と答えた人は、全体の56.7%に上り、半数以上の女性が生理中に下痢の症状になる傾向があることがわかりました。
生理中の下痢に伴う不快な症状を少しでも減らすために、自分でできる予防法を知っておくことは大切です。ここでは、生理中の下痢を予防する具体的な方法を紹介します。
生理中の下痢を予防するには、体を冷やさないように気をつけ、特におなかを温めることを意識するといいでしょう。
生理中は体温が下がり、冷えを感じやすくなります。おなかが冷えると腸が活発に活動し、下痢になりやすくなるため、生理中は肌の露出を避け、いつもより厚着をしたり、腹巻きやカイロでおなかを温めたりすることをおすすめします。
生理中の下痢予防のためには、胃腸に負担をかける食べ物や飲み物を控えることがポイントです。脂っこいものや辛いもの、冷たい食品・飲み物は、腸の働きを刺激して下痢を引き起こす原因となります。
また、アルコールやカフェインを含む飲料なども下痢になりやすくなるため、生理中は控えることをおすすめします。
食べすぎや早食いは消化不良につながり、生理中の下痢の原因のひとつとなります。消化不良になると腸内にガスが発生し、腸が刺激されて過剰に収縮することで下痢を引き起こします。生理中の食事はよく噛んで、ゆっくり食べるように心掛けてください。
疲労やストレスも下痢を引き起こす原因となるため、生理中はできるだけ予定を調整し、自宅でリラックスして過ごすことをおすすめします。
また、普段よりも睡眠時間を長く取るなど、体と心を十分に休める工夫をすると良いでしょう。
生理中に下痢にならないように予防しても、完全に防ぐことは難しいでしょう。下痢になってしまった場合は、症状が少しでもやわらぐよう、下記の対処法を試してみてください。
生理中に下痢になったら、消化のいいものを意識的に食べるようにしましょう。煮物やスープなど、食材を加熱してやわらかくしてから食べると、腸の負担も軽減される上、体も温まります。
下痢になるとカリウムが不足しやすく、疲労感や筋肉痛などの症状が出ることがあります。生理中に下痢になった場合は、意識してカリウムをとるようにしましょう。
カリウムは、果物や野菜、芋類、肉、魚など、さまざまな食材に含まれています。しかし、水に溶け出しやすいので、「生で食べる」「スープで茹で汁をいっしょに飲む」といった方法がおすすめです。
下痢が続くと脱水になりやすいため、水分をこまめにとることを心掛けてください。水分をとるときは、白湯や温かい飲み物にするのがおすすめです。
冷たい水やスポーツ飲料、カフェインを含む飲み物は、おなかを冷やしたり、刺激したりするので控えたほうがいいでしょう。
生理中の下痢でつらい場合は、下痢止め薬で症状を抑える方法もあります。外出時などは、水なしで飲める下痢止め薬を携帯すると安心です。
また、プロスタグランジンによって引き起こされている下痢であれば、過剰分泌を抑制する鎮痛剤の服用で、生理痛とともに対処できます。
毎月のように生理中の下痢に悩まされている場合は、婦人科で相談するのもおすすめです。症状に応じて、体質を改善する漢方薬や、プロスタグランジンの過剰分泌を抑制する非ステロイド系抗炎症薬など、自分に合った薬を処方してくれます。
また、低用量ピルの服用も、プロスタグランジンの分泌の抑制につながるため、生理痛や下痢をやわらげる効果が期待できます。
監修者のご紹介
佐藤杏月先生
八丁堀さとうクリニック副院長 医学博士 日本産婦人科学会専門医
日本医科大学卒。日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。3人の子供の子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医のご主人とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。
八丁堀さとうクリニック
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生理中の下痢は、生理のための子宮収縮を促すプロスタグランジンというホルモンが関係しているといわれており、完全に防ぐのは難しいものです。下痢症状を緩和するためにも、食事のとり方や体を冷やさない工夫など、生理中の生活習慣の見直しをしてみるといいでしょう。
生理中の下痢が続く、おなかの痛みが強いといった場合は、一度、婦人科で相談してみることをおすすめします。
生理中の下痢は、プロスタグランジンというホルモンが原因といわれています。プロスタグランジンが分泌されると、子宮の収縮が強まるほか、血液中に入ると腸管が収縮し、下痢を引き起こしやすくなります。
生理中の下痢を予防するには、胃腸への負担を減らし、体を冷やさないことが効果的です。「辛味や脂肪分の多いもの」「カフェインなどの刺激の強いもの」「冷たいもの」などを食べたり飲んだりすると、胃腸に負担がかかり、下痢を引き起こす原因になります。
生理中は、おなかを温めて、胃腸にやさしく消化のいいものを食べるように心掛けましょう。
生理中に下痢になった際の対処法は、「水分とカリウムを意識的にとる」「消化のいいものを食べる」ことが有効です。
また、下痢による痛みが強い場合は、下痢止め薬や生理痛用の鎮痛剤を服用したり、一度、婦人科を受診してみたりするのもいいでしょう。
画像提供/PIXTA