記事公開:2025.1.29
左下腹部に、チクチクとした痛みを感じたことはありますか?痛みの原因はさまざまですが、「病院に行くほどではないから」と我慢していると、痛みの原因である大きな病気を見逃してしまうかもしれません。
本記事では、「生理痛以外の下腹部痛」に関するアンケートを実施。おなかの痛みで病院に行ったことがある人の割合や、受診する理由・受診しない理由について伺いました。また、女性の下腹部痛の主な原因や受診目安のほか、受診すべき診療科についても解説します。
※コメントは一部抜粋しています
【調査概要】
調査対象:クラブエリエール会員の10代以上の女性
調査期間:2024年11月5日~11月12日
調査手法:インターネットを利用したアンケート調査
有効回答数:4,123件
クラブエリエール会員の女性に、「生理痛以外で我慢できないほどではない下腹部の痛みを感じることはありますか?」と聞いたところ、40.5%の人が「ある」と回答しました。
■我慢できないほどではない下腹部痛(生理痛を除く)の有無
ところが、「痛みがある」と答えた方に「我慢できないほどではない下腹部の痛みで、病院を受診したことはありますか?」と尋ねると、実際に病院へ行ったことがある方はわずか25.2%という結果に。
生理痛以外の痛みがあっても、4人中3人は診察を受けていないことがわかりました。
■我慢できないほどではない下腹部痛での病院受診経験の有無
「我慢できないほどではない下腹部痛で病院を受診した人」にその理由を聞くと、「痛みの原因を知りたかったから」が半数以上を占め、以下、「心配・不安だったから」「受診することで、ほかの病気が見つかるかもしれないから」と続きました。
なお、受診をしたその他の理由としては「定期健診など、ほかの健診のついでに受診した」「痛みが強く、生活に支障が出たから」「市販の痛み止めが効かなかったから」などがありました。
■我慢できないほどではない下腹部痛で病院を受診した理由(複数回答)
一方で、「我慢できないほどではない下腹部痛で病院を受診しなかった人」にその理由を聞くと、「たいしたことはないと思ったから」が圧倒的に多く、次いで「受診する時間的余裕がなかったから」となっています。
なお、受診しなかったその他の理由としては「タイミング的に多分、排卵痛だから」「我慢できる痛みだったから」「市販の鎮痛薬で治まる」「病院に行くのが面倒」「金銭的余裕がない」といった意見が多く寄せられました。
また、「どの程度の痛みで受診すべきかわからない」「たいしたことはないのに医療機関をわずらわせるのは心苦しい」「専門医とわかっていても、男性医師に視診、触診されたくない」といった理由で受診していないという意見もありました。
■我慢できないほどではない下腹部痛で病院を受診しなかった理由(複数回答)
多くの女性が下腹部の痛みを経験していますが、痛む場所や痛みの程度などから、その原因を特定することは難しいもの。だからこそ、「これくらいなら大丈夫」などと自己診断せず、病院で診察を受けることが大切です。ここでは、女性の下腹部痛を引き起こす主な原因について解説します。
女性の下腹部痛の原因として代表的なのが、生理痛や排卵痛といった生理にまつわる痛みです。なお、日常生活に支障をきたすほど生理痛が激しい場合は、月経困難症という症状かもしれません。
生理痛は、不要になった子宮内膜を経血として排出するために、子宮が収縮する際に生じる痛みです。痛みの程度や発生のタイミングには個人差がありますが、生理の始まる前日から、生理3日目くらいまでに起こりやすいとされています。
排卵痛は、卵巣を覆う膜を破って卵子が外に出る際、モレ出した卵胞液や血液が腹膜を刺激することで生じる痛みです。生理と次の生理のあいだ、排卵日の前後に起こり、出血を伴うこともあります。
月経困難症とは、生理痛が通常よりも重く、日常生活に支障をきたすほど激しい痛みがある症状です。子宮の病気といった婦人科系疾患が原因で起こる「器質性月経困難症」と、明らかな原因となる疾患がないのに生じる「機能性月経困難症」の大きく2つに分けられます。
なお、機能性月経困難症の主な要因としては、子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)の過剰分泌や、子宮の出口が狭いことなどが挙げられます。
女性の下腹部痛は、妊娠・出産に関する女性特有の臓器が原因というケースもあります。「たいしたことはない」と放置すると、症状が悪化する場合もあるため、適切な診断と治療が重要です。主な女性特有の臓器による痛みについて見ていきましょう。
妊娠初期に、チクチク・ビリビリとした痛みや、生理痛のような鈍痛などを感じる人もいます。これは、「着床痛」と呼ばれるもので、医学的なメカニズムは判明していません。また、少量の出血(着床出血)をするケースもあります。
そのほか、妊娠に伴って子宮が拡大するにつれて、下腹部にチクチク・ズキズキとした痛みや圧迫感を覚えることもあります。これらは、自然な体の変化によるもので、多くの場合は心配いりませんが、痛みが強いときや長く続くときは、婦人科医に相談しましょう。
子宮頸管炎(しきゅうけいかんえん)は、細菌感染などにより子宮頸部(子宮下部の細い部分)に炎症を起こす疾患です。おりものの異常のほか、下腹部の痛みや不快感などが現れることもあります。
子宮筋腫は、子宮を構成する筋肉組織に発生する良性の腫瘍です。腫瘍の大きさやできる場所によっては、下腹部痛や不正出血を引き起こすことがあります。
子宮内膜症は、子宮の中にあるべき子宮内膜組織が、子宮外で増殖する疾患です。月経周期に合わせて増殖・出血して痛みを引き起こすほか、不妊の原因となることもあります。
卵管炎は、卵巣と子宮をつなぐ卵管が、細菌などに感染することで起こる炎症です。発熱や下腹部の痛みのほか、膿のようなおりものが現れることもあります。
卵巣囊腫(らんそうのうしゅ)は、卵巣に液体の溜まった腫瘍ができる病気です。ほとんどが良性ですが、腫瘍が大きくなるにつれて、腹部膨満感や下腹部痛、便秘などが起こることも。
また、卵巣の根元がねじれて強い痛みや吐き気が起こる、卵巣囊腫茎捻転(らんそうのうしゅけいねんてん)を引き起こすこともあるので、注意が必要です。
子宮体がんは、子宮体部(胎児を育てる袋状の部分)にできる悪性腫瘍です。子宮の内側にある子宮内膜由来で発生することから、子宮内膜がんとも呼ばれます。多くは、不正出血や下腹部の痛みを伴います。
子宮頸がんは、子宮頸部にできる悪性腫瘍で、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が主な原因とされています。初期のうちは自覚症状がほぼなく、進行とともに、おりものの異常や不正出血、下腹部痛などが現れます。
卵巣がんは、子宮の左右にある卵巣に発生する悪性腫瘍です。進行するまで自覚症状の少ないことが多く、腫瘍が大きくなると、腹部の膨満感や下腹部痛が現れることもあります。
ほかにも、便秘、蠕動(ぜんどう)痛といった腸が原因の痛み、尿路結石、尿路感染症といった尿路疾患による痛みなど、さまざまな理由で下腹部にチクチクとした痛みを感じることがあります。痛みの現れ方は人によって異なるため、自己判断は禁物。異常を感じたときは、早めに医師に相談しましょう。
左下腹部の痛みはさまざまな原因で起こる上、痛みの感じ方には個人差があります。自己判断で「これくらいなら大丈夫」と我慢してしまうと、大きな病気に気づかず放置してしまうことにもなりかねません。
我慢できる痛みでも、痛みのほかに発熱や下痢、吐き気があったり、痛みが長く続いたりするようであれば、病院に行くことをおすすめします。
また、痛みがだんだん強くなってきたり、血便や下血、めまい、嘔吐、不正出血などが起きたり、痛みで眠れない・歩けないといった症状が現れたりしたときには、できるだけ早く医師の診察を受けてください。
左下腹部の痛みで受診するのは、内科や消化器科、泌尿器科、婦人科です。具体的にどの診療科を受診すべきか迷った場合は、まずかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらいましょう。
監修者のご紹介
佐藤杏月先生(八丁堀さとうクリニック副院長 医学博士 日本産婦人科学会専門医)
日本医科大学卒。日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。3人の子どもの子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医のご主人とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。
八丁堀さとうクリニック
女性にとって、毎月の生理痛は最も身近な下腹部の痛みといえるでしょう。また、痛みだけでなく、生理中はわずらわしいことがたくさんあります。
「エリス」シリーズは、ひとりひとり違う生理の悩みに寄り添い、つらい生理中も自分らしくいられるように支える、生理用ナプキンブランドです。やさしい肌触りと快適な使用感、持ち運びやすいコンパクトさとデザイン性など、生理期間を少しでも快適に過ごせるような工夫を凝らしています。
毎月のつらい生理期間を少しでも快適に過ごすため、「エリス」シリーズをご活用ください。
「エリス」シリーズについては、こちらもチェックしてみてください
エリス
今回、アンケートをとったことで、生理痛以外の下腹部の痛みを感じている女性は多いものの、実際に病院を受診している人は少ないことがわかりました。
ですが、痛みの感じ方には個人差がある上、痛む場所や痛みの程度などから原因を特定することは困難です。下腹部の痛みを感じたときは、「我慢できるから」と放置せず、病院を受診することをおすすめします。
左下腹部がチクチク痛むときの主な原因としては、生理痛や排卵痛などの「生理前・生理中の痛み」、子宮や卵巣といった「女性特有の臓器の痛み」、便秘や腸炎などの「腸の痛み」、尿路結石や尿路感染症などの「尿路疾患による痛み」、内臓が原因ではない「腹壁由来の痛み」などがあります。
左下腹部の痛みが我慢できる程度でも、痛みのほかに発熱や下痢、吐き気があったり、痛みが長く続いたりするようであれば、病院に行くことをおすすめします。
また、痛みがだんだん強くなってきたり、血便や下血、めまい、嘔吐、不正出血などが起こったりするほか、痛みで眠れない・歩けないといったときは、できるだけ早く医師の診察を受けてください。
左下腹部の痛みで診察を受ける場合は、内科や消化器科、泌尿器科、婦人科を受診してください。また、具体的にどの診療科を受診すべきか迷った場合は、まずかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのがおすすめです。
画像提供/PIXTA