女性の先生がいないと起きる問題って?
ファッションショーの影響はどんなもの?
生徒と同じくスラム街で暮らす、私たち女性教諭たちが、毎日身なりを整えて懸命に働くことで、女子生徒の見本となり、ロールモデルとなることができます。
ここは貧困児童のための学校なので、孤児や元ストリートチルドレンといった保護者のいない生徒もいます。子どもは身近にいる大人を見て成長しますが、そういった生徒たちには、まわりに頼れる大人・見本となれる大人がいない場合もあります。
もし、子ども時代に懸命に働く大人を見たことがなければ、自分もそのような大人になることはできません。ですから、私たち先生がまずお手本となるべきだと考えています。
ケニアでは、古くから「女性が男性に意見を言えない」文化があります。貧困層のなかには、このような古いメンタリティを持った者が多く、彼らは「女性は男性と対等に話してはいけない」と考えているのです。
そのため、男性教師に話しかけられない女子生徒がたくさんいます。なにか問題や悩みがあったときに、相談できる相手は女性教師だけなのです。
ですから、シングルファーザー家庭や、保護者不在の家庭といった「母親のいない生徒」にとっては、特に女性教師は重要な役割を果たしています。この環境で生徒を守るには、女性教師はなくてはならない存在なのです。
そして、女性の先生だからこそ教えられることがたくさんあります。 月経教育をはじめ、女性の身体の仕組みも教えています。
ファッションショーは学校主催で行なっています。スタッフが衣装をデザインし、布選びから裁断、縫製、演出までを手がけています。貧困家庭の生徒たちは、新品の服を着る機会がほとんどありません。きれいな格好をする初体験が、このファッションショーなのです。
これは思春期の生徒にとって、人格形成に大きな影響を与えていると感じています。びっくりするくらい、別人のように変わる子もいるんですよ! いつも消極的で喋れないような子も、このショーで自信に満ちあふれた姿を見せてくれるようになるんです。「自分を誇れるようになる」そんな特別な体験が生まれています。
女子生徒を集めて自身の問題について話し合う授業だけでなく、自主的にクラブ活動をする場にもなっています。編み物、パッチワーク、アート、マッサージなどのクラブがあり、どのクラブに入るかは自分で選ぶことができます。同じものが好きな仲間たちと活動することで、自分の抱えている悩みを共有しやすくなるのが特長です。 性的な問題を抱えていたり、虐待をされていて保護者や先生に話せなかったりした子も、クラブの仲間を通じて自身の問題を訴えたり、解決できるようになっていきます。心をオープンにするための活動でもあります。
プライマリースクール(日本の小学校~中学校)を卒業後、高校に進学できない子が多くいます。そのような子たちが自分の力で収入を得ることができるよう、職業訓練プログラムを考えています。
たとえば髪結いの仕事や、料理の仕事。すてにプロとして活躍されている方に来てもらい、実際に指導してもらうこともあります。これからさらに設備を整え、子どもたちの将来の助けになるようなプログラムを目指しています。