REPORT vol.2
アフリカ・ザンビアの女の子の現実
世界中の女の子の自立を実現するために、今困っていることを解決・支援する「ハートサポートプロジェクト」。『ハートサポート2021』では、特定非営利活動法人AMDA社会開発機構(AMDA-MINDS、アムダマインズ)と共に、ザンビアを舞台に活動をしていきます。アムダマインズは、貧困問題の解決や健康増進、教育推進など、SDGsの目標に貢献する活動を行っている団体。その中の重要なキーワードの一つが「リプロダクティブヘルス/ライツ」です。
リプロダクティブヘルス/ライツとは?
性行為や妊娠・出産など、性に関わる全てにおいて、身体的にも、精神的にも、そして社会的にも、自分の意思が尊重され、自分らしく生きられる状態を指します。日本語では「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。リプロダクティブヘルス/ライツの実現は、ハートサポートが目指す方向と共通していることから、今回一緒に活動することとなりました。アムダマインズは、発展途上国で普段どのような支援をしているのでしょう? ザンビアの現状や課題と共に、職員の大谷さんに詳しく伺いました。
大谷 聡 Satoshi Otani
民間企業(総合電気メーカー)を経て、イギリスの大学院で公衆衛生学修士号を取得。約6年を過ごしたザンビアでは妻と男女一児ずつを連れて家族で駐在した経験も。2016年よりシエラレオネに長期赴任。現在は日本を拠点にザンビア、シエラレオネ事業を主に担当。千葉県出身。
保健・医療・衛生の活動をメインに、開発途上国8カ国で活動
ーアムダマインズさんは、発展途上国でこれまでどのような活動をしてきたのでしょうか?
世界の貧困地域において暮らしの改善に取り組んでおり、リプロダクティブヘルスに関するところですと、現在、4カ国で5事業を実施しています。
その一つとして、中米のホンジュラスの例をご紹介させていただくと、エル・パライソ県という地域で「思春期リプロダクティブヘルスプロジェクト」を行いました。
ー思春期リプロダクティブヘルスプロジェクトとは?
その地域では若年層の妊娠が多く、特に山間部では妊婦数の約半数が19歳以下という状況だったんです。若年妊娠に関しては、死亡リスクが高いだけではなく、性感染症や就学への影響が深刻な問題となっています。
そこで10代の若い人たちがリプロダクティブヘルスに関するケアや情報を得られるように、保護者や学校の教師、保健所のスタッフへの研修を実施。そのほかに専用のカウンセリングルームを設置するなど、若年妊娠の減少に取り組みました。
三姉妹が15歳、14歳、13歳で妊娠・出産
ー今回の活動の舞台はアフリカのザンビアです。ザンビアの女の子たちが抱えている問題について教えてください。
これまでも状況はある程度把握していたのですが、私たちもザンビアにおいてリプロダクティブヘルスの分野で活動をするのは今回が初めて。実際に現地(首都のルサカ)に足を運んでみると、思っていたよりも使い捨てナプキンは普及していました。
ただ、使い捨てナプキンは10枚入りで150〜200円。これは現地のローカル食での1日分の食費と同じくらいの価格ですから、決して安いものではありません。
つまり、使い捨てナプキンが普及しつつあるとはいえ、その対象は一定の収入がある層に限られる。あくまで私の肌感覚ですが、常時使い捨てナプキンを使える人は数%程度だと思います。
ー格差が生じているのですね。
その通りです。貧しい層の中には使い捨てナプキンも、再利用可能なナプキンも、全く使うことができない女の子たちもいます。代わりに布や脱脂綿を使用しているんですけど、歩きづらかったりかゆみが出たりと、問題は多い。
一つ、現地で聞いた印象的なストーリーがあります。ある女の子と妹2人が、それぞれ15歳、14歳、13歳で妊娠・出産をしたのだそうです。
ーそんな若い年齢で……。
長女はメイドとして働いていて、中学を卒業するまでは学校に通っていたんですけど、高校に入る時に学費を払うことができずに進学を断念し、15歳で妊娠してしまった。
次女も小学校には通えていたものの、生理の時にナプキンがなく、毎月学校を休むことになってしまって退学。生理用ナプキン欲しさに男性と体の関係をもった結果、14歳で妊娠してしまったのだそうです。三女にいたっては、小学校にも通うことができず、13歳で妊娠しています。
首都のルサカでもこういう状況があるんです。ザンビア国内ではルサカと地方の格差がひどく、政府が地方に再利用可能なナプキンを普及させようと取り組みを行っていますが、ルサカという一つの都市内での格差も大きく広がっている。そう強く感じました。
ザンビアの女の子たちに必要な2つの支援
ーザンビアの女の子たちの生活を良くするために、どんな支援が必要だと思いますか?
2つあります。一つは生理用品を手に取りやすい環境をつくること。例えば再利用可能なナプキンを浸透させるなど、使い捨てナプキンを購入できない貧しい家庭の女の子でも、気軽かつ快適に生理用品が利用できる状況が必要です。
もう一つは、教育です。10代で妊娠することによるリスク、性感染症やHIVの問題、中絶、ジェンダーにもとづく暴力など、思春期の子どもたちを取り巻く課題はさまざま。衛生知識や自分の体や生理、妊娠などの性の知識はもちろん、周辺の課題について学んだり、悩みを相談したりできる状況をつくれるといいと思っています。
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